美容医療における高周波(RF)治療の総論
1. 高周波治療の原理
高周波(Radiofrequency, RF)は非常に高い周波数帯の電磁波(おおむね10kHz~30GHz)であり、美容医療では皮膚のリフトアップやコラーゲン生成促進を目的に利用されますdermatol.or.jpskinrefine.jp。RFエネルギーが生体組織に吸収されると、組織内の水分子やイオンが高速振動し、分子同士の摩擦によって熱エネルギー(ジュール熱)が発生しますs-b-c.netskinrefine.jp。この誘電加熱により皮膚の深部組織を局所的に加温し、コラーゲン線維などのタンパク質の熱変性を引き起こしますdermatol.or.jp。真皮の線維構造が約60~70℃で収縮することで即時的なコラーゲン収縮(タイトニング効果)が生じ、さらに熱刺激で線維芽細胞が活性化され新たなコラーゲン産生が誘導されますdermatol.or.jpskinrefine.jp。このためRF治療後には即時効果(浮腫によるハリ感向上)と、数ヶ月かけた遅発効果(コラーゲンリモデリングによる引き締め)が現れますdermatol.or.jp。
RFはレーザーのように特定の色素に吸収されるわけではなく、皮膚の水分含有量(電気抵抗の低さ)に応じて熱が発生するため、肌色を問わず表皮にダメージを与えず真皮深層まで加熱できる点が特徴ですskinrefine.jpskinrefine.jp。例えば表皮水分量は約10~20%ですが真皮は約70%と高く、RF照射により水分の多い真皮で最大の発熱が起こり、表皮への影響を抑えつつ深部加熱が可能となりますskinrefine.jp。発生した熱はジュール熱と呼ばれ、組織抵抗による発熱エネルギーですskinrefine.jp。この深部加熱が肌の代謝促進やコラーゲン再構築を促し、結果的にシワやたるみの改善、皮膚の引き締め効果をもたらしますs-b-c.netdermatol.or.jp。
2. 高周波治療の種類
RF治療デバイスには電極配置や照射方式の違いにより様々な種類がありますskinrefine.jp。基本的な作用原理は同じですが、電極の構成により加熱深度や治療特性が異なるため、治療目的に応じた方式の選択が重要ですskinrefine.jp。主な方式として以下が挙げられます:
- モノポーラ(単極式) – 一つのアクティブ電極と身体に貼る対極板を用いる方式ですs-b-c.net。高周波電流はアクティブ電極から体内を通り対極板へ流れ、再び戻る閉回路を形成しますskinrefine.jp。電流が身体全体を通過するため深部まで広範囲の加熱が可能で、真皮から皮下脂肪層にかけて強力な熱変性を起こし得ますskinrefine.jp。単極RFは約65℃(機種によっては75℃)まで真皮を加熱でき、強力なスキンタイトニング効果を発揮するため、リフティング目的の高周波治療の多くはモノポーラ式ですskinrefine.jp。例としてThermage(サーマクール)が代表で、6.78MHzのRFエネルギーを採用し真皮深層や脂肪層まで熱を届けますskinrefine.jp。単極式は効果が高い反面、痛みや熱感が強く出やすいため、近年は冷却機能や振動刺激で疼痛を軽減する工夫がなされていますshibuya-hifuka.comskinrefine.jp。
- バイポーラ(双極式) – ハンドピース上に二つの電極を備え、それら電極間にRF電流を流す方式ですs-b-c.net。電流経路が電極間の局所に限られるため、加熱深度は一般に電極間の距離の約半分程度に制限されますskinrefine.jp。例えば電極間が2cmなら皮下約1cmまでが加熱層となるイメージですskinrefine.jp。表在性の加熱に適しており、表皮直下~浅い真皮でコラーゲン産生を促すことで肌表面のハリ改善や小ジワの軽減に効果を発揮しますskinrefine.jp。単極式に比べエネルギーが局所に留まる分、痛みが少なく安全性が高い反面、効果は穏やかで作用範囲が浅いという特徴がありますskinrefine.jpskinrefine.jp。代表例に**高周波治療器「ペレヴェ(Pellevé)」**などがあり、主に目元の小ジワ改善などに用いられます。
- マルチポーラ(多極式) – 3つ以上の電極を用いた方式ですs-b-c.net。複数電極間でRFが多方向に流れることでエネルギーが分散し、広範囲を均一に浅く加熱することができますs-b-c.net。マルチポーラRFは高密度なエネルギー照射により線維芽細胞を活性化し、コラーゲン・エラスチン生成を促すのに適していますskinrefine.jp。痛みが少なく比較的安全なため、高出力RF治療後の維持療法や、痛みに弱い患者へのタイトニング施術として用いられますskinrefine.jp。例としてVenus Legacy(ヴィーナスレガシー)やEndyMed 3DEEPなどがあり、皮膚の浅いタイトニングやボディのセルライト改善に利用されています(EndyMedは1MHzのRFを多極配置で出力)skinrefine.jp。
- フラクショナルRF – 極小の電極で点状にRFを照射し、皮膚の一部に微小な熱損傷柱を作る部分的加熱の方式ですdermatol.or.jp。レーザーのフラクショナル照射と同様の概念で、皮膚のごく一部に高密度の熱損傷を与え、損傷されなかった周囲組織の修復過程でコラーゲンリモデリングを促しますdermatol.or.jpdermatol.or.jp。フラクショナルRFにはニードル(針)を用いるタイプと、針を使わず電極マトリックスを押し当てるタイプ(非侵襲的フラクショナルRF、例:eMatrix)が存在します。前者はマイクロニードルRFとも呼ばれ、皮膚に極細針を刺入して真皮内から直接RF照射を行うことで、より深部の瘢痕や肌質改善に効果を発揮しますs-b-c.netdermatol.or.jp。近年は微小電極や絶縁針を用いて点状に高周波エネルギーを真皮に届ける技術が進歩しており、ニキビ瘢痕や毛穴治療に有用なフラクショナルRF機器が開発されていますdermatol.or.jp。フラクショナルRFはダウンタイム(赤みやかさぶた)が比較的短く、肌色に関係なく瘢痕治療やリジュビネーションが行える点でメリットがあります。
3. 高周波治療の主な適応
RF治療は非侵襲的または最小侵襲的に皮膚や皮下組織を加熱できる特性を生かし、様々な美容上の適応症に利用されています。
- スキンタイトニング(皮膚の引き締め)・シワ・たるみ改善: 高周波治療の代表的適応です。加齢による顔のたるみ(フェイスラインの緩み、ほうれい線、マリオネットラインなど)や目周囲の小ジワの改善を目的に、RFによる皮膚の引き締め効果が利用されますs-b-c.net。単極性RF治療(例:サーマクール)は2002年に眼周囲のシワ、2004年に顔全体のシワ改善目的で米国FDA承認を取得し、切らないリフトアップ治療として広く普及しましたdermatol.or.jp。エビデンス面では、単回照射でも皮膚表面積の縮小すなわち引き締め効果が認められたとの報告がありますdermatol.or.jp。例えばあるランダム化試験では、腕の皮膚にRFを照射した側で皮膚面積の有意な縮小が確認され、RF照射によるタイトニングを実証していますdermatol.or.jp。また、6回のRF治療を半年かけて行ったコホート研究では、治療直後に約50%の皮膚緩みの改善が客観指標で認められ、最終治療6ヶ月後にも30~50%の改善が維持されたと報告されていますdermatol.or.jp。RFによる引き締め効果は外科的フェイスリフトやフィラー注入には及ばないものの、瘢痕リスクが低く体内に異物を残さないメリットがあり、手術を望まない患者への選択肢として有用ですdermatol.or.jp。顔以外にも、首のたるみ、二の腕や腹部の皮膚のたるみに対して施術されることもあります。特に妊娠後の腹部皮膚の軽度のたるみ改善などにRFが応用される例があります。
- 部分的な脂肪融解・ボディ輪郭形成: RFによる加熱は皮下脂肪にも作用し、脂肪細胞のアポトーシス(自然死)や壊死を誘導することで非侵襲的な部分痩身を行うことも可能ですskinrefine.jp。例えば腹部や太ももの余分な脂肪に対し、RFを複数回照射して数cm程度のサイズダウンを図る痩身機器(例:BTL社のVanquishやキュテラ社のtruSculpt)が用いられています。高周波エネルギーで脂肪組織の温度を約45℃前後まで数分間維持すると脂肪細胞が不可逆的なダメージを受けるため、週1回程度のRF照射を4~6回行うことでウエスト径が数センチ減少したとの報告もありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。RFは皮膚の引き締め効果も併せ持つため、脂肪減少と同時に皮膚のタイトニングも得られる点で、従来の脂肪溶解注射やクライオリポライシス(脂肪冷却)とは異なるアプローチです。非侵襲的でダウンタイムもほぼ無いことから、小~中程度の部分肥満の改善に適しています。ただし劇的な減量は困難であり、数cm程度の部分的サイズダウンに留まります。
- ニキビ治療: 高周波エネルギーは皮脂腺にも作用し得ます。RFニードルを用いて皮脂腺を直接破壊する治療(例:AGNES)では、絶縁針を毛包に挿入してRFを照射することで過剰な皮脂腺を選択的に熱変性させ、ニキビの根本原因である皮脂分泌を抑制しますthemedermatology.com。韓国発のAGNES治療では、1年内に3回程度の施術で炎症性・非炎症性双方のニキビを80~90%以上改善できたとの報告もありthemedermatology.comcliffordclinic.com、従来の内服薬や光線療法で難治性のニキビに対して有効な新しい治療法となっています。また、RFマイクロニードリング自体にも皮脂腺の縮小や抗炎症効果があり、面皰の減少や皮脂分泌低下が認められるとの研究がありますdovepress.comdovepress.com。さらにRF治療は皮膚の治癒機転を活性化するため、炎症後色素沈着の改善や軽度の瘢痕平滑化も期待できます。つまりRFはニキビの活動性を抑えつつ肌質を整える一石二鳥の治療となり得ます。
- ニキビ瘢痕・毛穴の治療: フラクショナルRF(特にマイクロニードルRF)は、凹凸状のニキビ瘢痕の改善に有効な治療として確立されつつあります。複数の研究のメタ解析によれば、RFマイクロニードリング治療は中等度から重度のニキビ瘢痕に対し有意な瘢痕スコアの改善をもたらし、その効果はフラクショナルレーザーにも匹敵しうるとされていますdovepress.comdovepress.com。FRM(Fractional RF Microneedling)は肌質や色調を問わず安全に行えるため、色素沈着リスクの高いアジア人肌にも適しておりdovepress.com、欧米のみならず日本でも瘢痕治療への活用が広がっています。瘢痕組織への照射で真皮のリモデリングが促され、治療後数ヶ月かけてクレーター状瘢痕の浅堀化や毛穴径の縮小が得られます。またFRMは皮脂腺やアクネ桿菌にも効果を示すため、瘢痕だけでなく炎症性ニキビ自体の減少も報告されていますdovepress.com。治療後のダウンタイムは軽度の発赤・浮腫が数日程度で、点状出血や痂皮形成も最小限で済むことが多く、患者満足度の高い治療です。
- 肌質改善(リジュビネーション): RF治療は上記適応の延長として、皮膚の質感改善や小じわの軽減、くすみの改善にも利用されます。例えばフラクショナルRFやRFニードリングは、毛穴の開大や皮膚のざらつきを改善し、コラーゲン新生によってキメの整った滑らかな肌へと導きますdovepress.com。また真皮の血行促進により肌の明るさやハリ感が増すため、軽度の光老化症状(肌のごわつき、細かいしわ)の改善も期待できますs-b-c.net。さらに、一部のRF機器(Sylfirm Xなど)は異常血管への作用を利用し、赤ら顔や難治性の肝斑の改善にも効果を発揮する可能性が報告されていますs-b-c.nets-b-c.net。このようにRF治療はスキンケア的な目的(美肌治療)にも応用され、レーザーやIPLではリスクの高い肌質・肌色の患者にも安全に施術できる利点があります。
4. 代表的な治療プロトコル
RF治療は機器や目的によって施術パラメータや回数が異なりますが、ここでは代表的なプロトコル例を解説します。
- 高出力単極RFによるタイトニング(例:サーマクール): 通常1回の施術で効果を出すプロトコルです。一度の照射で即時的な引き締め効果が得られ、施術後2~6ヶ月かけてコラーゲン再生によるリフトアップ効果が高まりますmy.clevelandclinic.org。効果の持続は個人差がありますが約1年程度とされ、半年~1年に1回の照射が適切な治療間隔と推奨されていますdahlia-gsc.comnagoya.ace-clinic.com。短期間に何度も施術すると効果が飽和するだけでなく、コラーゲン組織が硬くなりすぎる可能性があるため(いわゆるオーバートリートメント)、推奨間隔より短いスパンでの照射は避けますdahlia-gsc.com。施術当日はマーキングシートで照射部位を規則的に区画し、専用チップを用いて規定のパルス数を照射します。照射エネルギー(出力)は患者の皮膚厚や耐痛性に応じて調整します。痛みへの対策として表面麻酔クリームの塗布や冷却エアー、最新機種ではバイブレーション機能による疼痛緩和(ゲートコントロール理論の応用)も併用されますshibuya-hifuka.com。高出力RFは照射時の不快感が強いため、場合によっては静脈麻酔や神経ブロックを併用することもあります(特にサーマクールの眼瞼照射時など)。施術後は軽度の赤みや熱感が生じますが通常数時間~1日で治まり、メイクや洗顔も当日から可能です。
- RFマイクロニードリングによる瘢痕・肌質治療: ニキビ跡や毛穴治療目的では低~中出力のRFマイクロニードリングを複数回行うプロトコルが一般的です。例えば4週間おきに3~5回の施術を1クールとし、必要に応じて半年~1年後にメンテナンス治療を行いますsoftmedi.net。1回の施術では真皮に微小な熱損傷を与えコラーゲン産生を促しますが、瘢痕改善には複数回の積み重ねが有効なためですdovepress.com。治療設定としては針の深さ(0.5~3.5mm程度)や出力エネルギー、パルス幅を症状に合わせて調節します。瘢痕には深め(2~3mm)の針で高出力を、毛穴・小じわには浅め(1mm前後)で中出力など、部位と目的に応じて細かくパラメータを変えることも可能です。施術時は局所麻酔クリームを塗布し30分ほど待ってから行い、照射時間は顔全体で20~30分程度です。施術後1日程度は点状の赤み・腫れが出ますがdovepress.com、フラクショナルレーザーに比べ皮剥けや出血は軽微で、ダウンタイムは短いです。患者には施術後の保湿と紫外線対策を指導し、まれに生じる痂皮は自然脱落に任せるよう説明します。ニードルRFは回数を重ねるごとに瘢痕が浅く滑らかになり、毛穴も引き締まっていきます。効果判定は通常3回施術後あたりから行い、患者の満足度や瘢痕スコアの改善度に応じて5~6回まで追加することもありますakihabara-skin.com。
- 非侵襲的RF痩身治療: 皮下脂肪へのRF照射は一回で効果を出すより複数回の蓄積が重要です。一般的なプロトコルは週1回または隔週で腹部や大腿にRFを照射し、計4~8回行います(機器・設定によって回数は異なる)pmc.ncbi.nlm.nih.gov。各回の施術時間は照射面積によりますが腹部全体で30~45分程度です。連続照射型のRF装置(例:Vanquish)は施術中にゆっくりと加熱し、皮下温度が42~45℃付近に達してから数分間維持されるよう調整します。一方パルス照射型(例:truSculpt)は高出力を短時間照射し、部位を区画ごとに順次当てていく方法がとられます。いずれも無麻酔で施術可能な程度の熱感で、患者には「ホットストーンマッサージくらいの温かさ」と説明されることが多いです。治療期間中は食事・運動指導など生活習慣の改善も併行すると効果的です。全セッション終了後、1~2ヶ月かけて徐々にサイズ減少が起こり、ウエスト周囲径で2~3cm程度の縮小が維持されたとの報告がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。痩身RFはあくまで部分的サイズダウンを目的としており、体重減少は軽微ですが、身体のラインを整える補助的治療として安全に行えるのが利点です。
- エネルギー設定と併用療法: RF治療では適切な出力設定と照射テクニックが重要です。出力エネルギーが低すぎると効果が得られず、高すぎると痛みや副作用のリスクが増します。目安として真皮温度を43℃以上に維持すると線維芽細胞が活性化しますが、目に見える引き締め効果には60℃以上が必要とされますskinrefine.jp。ただし過度なエネルギーは疼痛や火傷リスクを伴うため、患者の耐容範囲内で可能な限り高い設定を狙うバランスが重要ですskinrefine.jp。近年の高性能機器では皮膚温をモニターしながら照射できるものもあり、適切な温度維持による安全かつ効果的な治療が可能となっていますmy.clevelandclinic.org。 RF治療は他の美容治療との併用も検討されます。例えばHIFU(高密度焦点式超音波)との組み合わせはそれぞれ異なる深さに作用するため相乗効果が期待されます。実際、当日または時期をずらしてHIFUでSMAS(表在性筋膜)や脂肪を収縮させ、RFで真皮を引き締めるという「ウルセラ+RF」の二段階施術が行われることがありますskinrefine.jp。クリニック独自のプラン名(例:「ウルニューマ」= ウルセラ+ボルニューマーRF)で提供され、深部から浅部まで総合的にたるみを改善するアプローチですskinrefine.jp。また、ヒアルロン酸注入やボトックスとRFを組み合わせるケースもありますmy.clevelandclinic.org。例えばRFで肌全体の引き締めを行った後、気になる深いシワにヒアルロン酸を注入して補完する、といった具合です。これらは同日に行うことも可能ですが、施術順序やタイミングは熟慮する必要があります(RF照射直後のフィラー注入は炎症リスクやフィラー代謝促進の可能性があるため、多くの場合RF→数日~数週空けてフィラー施注とします)。RFマイクロニードリングと**自己多血小板血漿(PRP)**を併用する例もあります。ニードルRF直後にPRPを塗布浸透させることで創傷治癒を促進し、瘢痕改善効果を高める可能性が報告されています(いわゆる「RF+ダーマペン+PRP」療法)。 術前術後ケアも治療効果と安全性に影響します。RF治療前には十分な洗顔と皮膚消毒を行い、金属アクセサリー類は外させます。単極RFでは対極板装着部位の皮膚も清潔にしておきます。口唇周囲の施術を行う際は、単純ヘルペス既往のある患者に予防的に抗ヘルペス薬(アシクロビル等)内服を検討しますshibuya-hifuka.com。術後はコールドパックなどで火照りを冷まし、必要に応じて保湿剤や低濃度ステロイド外用で炎症を鎮静します。患者には翌日から洗顔・化粧可能であること、赤みが残る場合はグリーン系のコントロールカラーで隠せることなど伝え安心させます。また強い日焼けは避けるよう指導し、日焼け止めをしっかり塗布してもらいます。
5. 主な副作用と対策
RF治療は適切に行えば比較的安全な施術ですが、それでも以下のような副作用リスクがありますdermatol.or.jpmy.clevelandclinic.org。主な副作用と対策について整理します。
- 疼痛: 高周波による加熱時の熱痛は避けられません。特に高出力の単極RFでは施術中に強い痛みを感じる患者もいますskinrefine.jp。対策として事前の表面麻酔や冷却、振動刺激の付加(痛覚のゲートコントロール)shibuya-hifuka.com、必要に応じて鎮静・鎮痛剤の投与を行います。患者には「痛みが全く無いわけではないが我慢できる範囲であること」「痛みが強すぎる時は遠慮なく知らせて出力調整する」旨を説明し不安を和らげます。近年の機器は冷却ガススプレーや冷却チップで表皮を保護しつつ痛覚を軽減する設計になっており、従来より痛みは大幅に軽減されていますshibuya-hifuka.com。
- 発赤・浮腫: 施術後の皮膚の発赤(赤み)や軽度の腫れはほぼ全例で生じますmy.clevelandclinic.org。これは熱による一過性の炎症反応であり、通常数時間から遅くとも1–2日以内に消退しますmy.clevelandclinic.org。対策として施術直後にクーリングを行い、必要であれば短期間のクーリングパックを患者に指示します。浮腫が強い場合は就寝時に頭を高くしてもらうよう指導します。赤みが長引く場合、低濃度ステロイド外用や抗炎症剤の内服で鎮静を図ることもあります。発赤や浮腫が数日経っても引かない場合は稀な遷延反応や感染の可能性もあるため、患者にはその際は必ずクリニックに連絡するよう伝えておきますmy.clevelandclinic.org。
- 熱傷(やけど): RF治療で最も注意すべき副作用は熱傷です。高エネルギーを局所に与えすぎたり、照射時間・間隔を誤ったり、接触不良でエネルギーが一点集中した場合に表皮の水疱形成や痂皮を伴う熱傷が起こりえますmy.clevelandclinic.orgshibuya-hifuka.com。熱傷リスクは機器の安全機構と術者の技量でほぼ回避できますが、発生頻度は0ではありませんmy.clevelandclinic.org。実際、米国FDAへの報告では2002年~2018年のサーマクールシリーズ約200万症例中、熱傷・凹凸・一過性麻痺感などの副作用報告は34件(0.0017%)とされていますshibuya-hifuka.com。対策として適切な出力設定と動的なプロービング(止め打ちしないで動かしながら当てるなど)を心がけます。また照射中の患者の訴えをよく聞き、「熱すぎる」「痛みが強すぎる」と感じたら直ちに出力を下げます。対極板を用いる機器では板の密着不良に注意し、ジェル塗布量にも気を配ります。万一熱傷が生じてしまった場合は、早期に軟膏処置(抗生剤やステロイド軟膏)を行い二次感染を防ぎます。水疱形成した場合は無理に破らず保護し、瘢痕化を抑えるためステロイド外用を継続します。色素沈着が残った場合には美白剤やレーザー治療でのフォローを検討します。
- 色素沈着: 炎症後色素沈着(PIH)は、特に肌タイプⅣ以上の色黒の患者や熱傷様の反応が起きた場合に発生することがありますshibuya-hifuka.com。RF自体は色素に依存しない治療ですが、皮膚炎症に続発するメラニン沈着は避けられないことがあります。通常は数週間~数ヶ月で自然消退しますが、患者には日焼け厳禁と美白剤の外用を指示します。予防的に高リスク患者にはハイドロキノン外用やトラネキサム酸内服を事前・事後に行うこともあります。もし濃い色素沈着が残存する場合、Qスイッチレーザーやピコ秒レーザーによる治療を検討します。ただし強い炎症を起こさなければPIHリスクは非常に低いため、適切なエネルギー設定で行えば色素沈着はまれな副作用ですmy.clevelandclinic.org。
- 表面の凹凸・瘢痕形成: 過剰治療や重度の熱傷後には、皮膚表面に浅い陥凹や凸凹が残ることがありますshibuya-hifuka.com。例えば脂肪組織が過度に減少すると一過性に脂肪萎縮のようなくぼみが出現する可能性があります(特に顔の痩せた患者に高エネルギーRFを反復した場合など)。多くは数ヶ月でコラーゲンリモデリングに伴い改善しますが、目立つ陥凹が残る場合はフィラー注入や脂肪注入で補正することも検討します。予防のために、痩せ型の患者では無理な高出力を避け、一様にエネルギーを分散させる照射テクニックが推奨されますshibuya-hifuka.com。瘢痕については、稀にニードルRFの針孔に沿った線状瘢痕が残るケースがありますが、深い瘢痕になることはほとんどありません。術後の適切な保湿と外用療法で大半は軽快します。
- 知覚鈍麻・一過性神経麻痺: 顔面の施術ではごく稀に一時的な神経麻痺が報告されています。例えば顎ライン付近を高出力で照射した際に、表情筋を支配する下顎縁枝(三叉神経下顎神経枝)が熱影響を受け、一時的に口角が下がるような軽度麻痺が起こるケースがありますbiyouhifuko.com。これは施術数日後~約数週間で自然回復することがほとんどですが、患者にとって大きな不安となるため注意が必要です。対策として神経走行部(頬骨下や下顎骨沿い)は必要以上に重ね照射しない、出力を中程度に抑える、などがあります。麻痺が起こった場合は経過観察と必要に応じたビタミンB12製剤の投与や温罨法で神経回復を促します。なお知覚鈍麻(痺れ感)はときおり報告される副反応で、特にサーマクール施術直後に顔面の一部がしびれるように感じる患者がいますshibuya-hifuka.com。これも数日で消失する一過性の知覚異常で、適切な照射であれば後遺症を残すことはまずありません。
- その他: 稀な合併症としてヘルペス再発があります。口周囲のRF照射をきっかけに単純ヘルペスが再活性化し、小さな水疱が出ることがありますshibuya-hifuka.com。前述の通り予防投薬でリスク低減を図りますが、発症した場合は抗ヘルペス薬の内服で速やかに治療します。また、ニードルRFでは極稀に細菌感染の報告もあります。無菌操作と術後の抗生剤軟膏塗布で防げますが、もし赤みが拡大し膿疱形成など感染兆候が見られた場合は抗生剤投与を行います。RF治療後に毛嚢炎様のブツブツが出ることもありますが、多くは一時的な炎症反応であり保湿と外用抗生剤で改善します。総じて、RF治療の副作用は一過性で軽度なものが大半ですが、患者には起こりうる事象を事前に説明し、何か異常があればすぐ受診するよう周知しておくことが大切ですmy.clevelandclinic.org。
6. 安全性と禁忌
安全性: RF治療は非侵襲~低侵襲の施術であり、適切に施術すれば安全性は高いですmy.clevelandclinic.org。表皮へのダメージを最小限に深部加熱できるため、レーザーでは火傷リスクのある色黒の肌や日焼け肌にも比較的安全に施術できますskinrefine.jp。RFは電磁波の一種ですが、現在のところ発癌性の証拠は認められていませんmy.clevelandclinic.org。WHOは極論的にRF波を「潜在的発癌性あり」と分類していますが、テレビやスマートフォンからも出ている程度のものであり、治療で用いる低出力RFによって癌リスクが上がることは否定的に考えられていますmy.clevelandclinic.org。むろん長期的影響は引き続き観察が必要ですが、少なくとも数十年の美容分野での使用実績においてRF治療が癌を誘発したという報告はありません。
禁忌: RF治療には絶対的禁忌と相対的禁忌があります。以下に主な事項を挙げます。
- 体内植込み型電子機器(ペースメーカー等): 心臓ペースメーカーや除細動器を装着している患者にはRF治療は禁忌ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。RFは体内で電磁干渉を生じる可能性があり、ペースメーカーの誤作動を招く恐れがありますrealself.com。これは単極・双極問わず原則禁忌とされています。人工内耳など他の電子インプラントについても同様の注意が必要です。
- 金属インプラント: 施術部位に金属製の埋入物(プレート、スクリュー、金の糸など)がある場合、その金属がRFで過熱され周囲組織を火傷させるリスクがあります。特に単極RFでは電流が広範囲に流れるため注意が必要です。これらは相対的禁忌であり、部位や状況によっては施術可能な場合もあります(例えば顎骨プレートがあっても顔面への双極RFは許容される場合があります)。判断に迷う場合は施術を避けるのが無難です。
- 妊娠中・授乳中: 美容目的のRF治療は妊娠中および授乳中の患者には控えるのが原則ですcoloradoaestheticsacademy.com。RFが直接胎児や母乳に悪影響を及ぼすという報告はありませんが、妊娠中はホルモンバランスの変化で色素沈着が生じやすくトラブルに繋がる可能性があります。また倫理的観点からも、エビデンス不足のため妊産婦への施術は避けますcoloradoaestheticsacademy.com。
- 施術部位の感染症・皮膚疾患: 施術部位に細菌・ウイルス感染(膿皮症、ヘルペス、疣贅など)や活動期の炎症性皮膚疾患(重度の尋常性ざ瘡、湿疹・乾癬の急性病変など)がある場合は、病変が治癒してからRF治療を行いますwoodlandsdermatology.com。炎症部位にRFを当てると病態を悪化させたり、治癒を遅延させる恐れがあります。軽度の皮疹程度であれば医師の判断で施術することもありますが、基本は病変治療を優先します。
- 重度の内科疾患: コントロール不良の糖尿病や重度の免疫不全を抱える患者は、施術後の創傷治癒が遅れたり感染合併のリスクが高まるため注意が必要ですascpskincare.com。特にニードルRFのような侵襲を伴う施術は避けた方がよいでしょう。てんかん既往のある患者も一部文献で禁忌とされます(強い光刺激ではないものの、疼痛ストレスが発作を誘発する可能性を考慮)が、これは施設ごとの判断によります。
- ケロイド体質: ケロイド・肥厚性瘢痕を生じやすい体質の患者には、フラクショナルRFやニードルRFであっても慎重に適応を判断します。通常のRF治療でケロイドが誘発されることは考えにくいですが、創傷治癒の過程でごく稀に瘢痕が盛り上がる可能性も否定できません。既往の確認と患者説明を十分に行い、疑わしい場合はエネルギーを控えめにするか施術自体を見送ります。
- イソトレチノイン内服中(および中止後間もない場合): 抗ニキビ薬のイソトレチノイン(レチノイン酸)を服用中の患者は、皮膚の創傷治癒能力が低下し瘢痕形成しやすい可能性が指摘されていますjournals.lww.com。そのためレーザー治療同様、内服中および中止後少なくとも6ヶ月程度は侵襲的治療(ニードルRFなど)を控えるのが一般的ですjournals.lww.com。医師の判断でマイルドなRFであれば行う場合もありますが、安全策をとるなら避けます。
- 最近フィラーやスレッドリフトを受けた部位: 厳密には禁忌ではありませんが注意事項です。RFによる加熱でヒアルロン酸フィラーが早期吸収されたり、溶ける糸(PDOなど)が予想以上に早く吸収・変性する可能性があります。特に施術間隔の目安としてRF施術前1~2週間以内にフィラーを入れた部位や金属製糸を入れた直後は避け、適切な間隔を空けることが望ましいです(例:RF後にフィラーを入れるなら数日~1週間後以降、フィラー後にRFするなら少なくとも2週間以上後など)。この点は各施術の特性によるため、担当医がリスクとベネフィットを説明し患者と相談の上で決定します。
以上のような禁忌事項を踏まえ、施術前の問診・診察で患者の既往歴や体内デバイスの有無をしっかり確認することが重要です。また、日本においては美容目的のRF機器の多くが薬機法上の未承認機器(医師個人輸入による使用)となっていますthermacool.biz。その場合、インフォームドコンセント文書で未承認機器の使用である旨とリスクを明記し、患者の理解と同意を得た上で施術を行う必要がありますthermacool.biz。幸い、RF治療は世界的に広く行われ重大な事故も稀な安全性の高い施術ですがshibuya-hifuka.com、日本人に合わせた適正なプロトコルで、安全第一に実施することが求められます。
7. 使用される主な機器
現在、美容皮膚科領域で使用されているRF機器には国内外で非常に多くの種類がありますが、代表的なものを方式別にいくつか紹介します(※は国内承認機)。
- 単極性RF機器:
- サーマクール(Thermage®) – 米国Solta Medical社製。高周波タイトニング治療の先駆けとなった装置で、6.78MHzのRFエネルギーを単極方式で出力しますskinrefine.jp。2002年に眼瞼のシワ、2004年に顔面のシワたるみ治療でFDA承認を取得dermatol.or.jp。皮膚表面を冷却ガスで保護しながらRFを真皮深部~皮下組織に届け、切らずにリフトアップできる治療法として普及しました。最新型はサーマクールFLXで、痛み軽減のためハンドピースに振動機構を搭載し、チップの熱伝導も均一化されていますshibuya-hifuka.com。1回の照射で即時的ハリ感と半年~1年かけての引き締め効果が得られ、効果持続は約1年ですdahlia-gsc.com。日本では薬機法未承認(2023年時点)ですが、FDA承認機器として多くのクリニックで導入されていますthermacool.biz。
- ボルニューマー(VoluNewmer) – 韓国CLASSYS社製の単極RF機器。サーマクールと同じ6.78MHzの周波数を採用し、高出力RFによる強力なタイトニング効果を狙っていますskinrefine.jp。複数種類のカートリッジ(チップ)を備え、目周り・口周り・顎下・首といった細部専用のチップで従来照射が難しかった部位にも対応できるのが特長ですskinrefine.jp。4段階のバイブレーション機能と水冷式クーリングにより、痛みや熱感を大幅に軽減しつつ、安全に高エネルギー照射が可能ですskinrefine.jp。特殊形状の電極チップが肌に密着しエネルギー漏れを防ぐ設計で、熱傷リスクを最小化していますskinrefine.jp。一度の施術で即時的なリフトアップ効果が得られ、6ヶ月~1年程度効果が持続しますskinrefine.jp。韓国MFDSおよび米国FDAの承認を取得しており、安全性・有効性が評価されていますskinrefine.jp。日本でも導入クリニックが増えており、痛みの少ない次世代RFとして注目されています。
- サーマジェン(ThermaGEN) – 日本のKOメディカル社が2019年に開発した国産の単極RF機器ですskinrefine.jp。従来の高出力RF機器(サーマクール等)と同等のパワーを持ちながら、痛みや熱感を抑える工夫がなされていますskinrefine.jp。真皮を確実に加熱しつつ患者の負担を軽減する設計で、価格帯も比較的抑えられているため20~40代前半の若年層や初めてRF施術を受ける患者にも導入しやすい特徴がありますskinrefine.jp。国内メーカー製である利点から、品質管理やメンテナンス面でもクリニックにとって扱いやすい機器となっています(※2025年現在、サーマジェン自体は未承認医療機器であり使用には患者同意が必要)。
- その他、BTL社のエクセリス(Exilis)やプロテジェエリート、アルマ社のAccent XLなど、単極RFまたは単極+他エネルギー複合の装置が存在します。これらは皮膚表面冷却を併用しながら単極RFを比較的低痛みで連続照射できる設計で、顔から体まで幅広く使用されています。
- 複合(モノポーラ+バイポーラ)RF機器:
- デンシティ(Density) – 韓国ジェイシス社(Jeisys)のRF機器。単極RFと双極RFを同時照射できる世界初の装置ですskinrefine.jp。単極の深部加熱による持続的タイトニング効果(脂肪層の繊維組織収縮)と、双極の浅層加熱による即時的ハリ改善効果(真皮浅層のコラーゲン誘導)を一度の施術で得ることができますskinrefine.jpskinrefine.jp。いわば**「モノポーラ+バイポーラ」のハイブリッド治療であり、皮膚と皮下の両方にアプローチできるのが強みですs-b-c.net。特に頬のたるみや二重あごの改善に適しているとされskinrefine.jp、深い脂肪によるたるみ(ブルドッグ頬)にも効果を発揮しますshibuya-hifuka.com。2023年に発売された比較的新しい機器で、日本でも導入例が増えています(※未承認機器)。照射時の痛みも従来の単極RFより軽減されており、施術直後から肌の引き締まり実感と長期的リフトアップ**の双方を患者に提供できる画期的なデバイスです。
- オリジオX(Origio X) – 韓国WONTECH社製の単極RF機器ですが、Gモードと呼ばれる穏やかな浅層加熱モードと、高出力深部加熱モードを組み合わせた3段階照射を行うユニークなプロトコルを持ちますskinrefine.jpskinrefine.jp。具体的には最初に低出力で表皮近くを予熱し(痛覚を慣らしつつ表皮を安全にする)、次に高出力で真皮深層~脂肪層を加熱、最後に再度浅層を温め直すことで皮膚全層にわたり熱をキープしますskinrefine.jp。これにより深部まで立体的に組織を収縮させ、フェイスラインのたるみ改善や小顔効果を高めますskinrefine.jp。オリジオXは痛みが少なく安全性が高い一方で効果がデンシティと同等に得られることから、患者の肌状態によって使い分けられていますs-b-c.net。
- Accent Prime(イスラエルALMA社)もユニポーラ(単極)とバイポーラの両モードを搭載し、部位によって使い分け可能なRF装置です。さらに超音波キャビテーションも組み合わせた複合痩身機でもあり、顔の引き締めから体の部分痩身までオールマイティに活用されています。
- マルチポーラRF機器:
- VENUS Legacy(ヴィーナスレガシー) – カナダVenusConcept社製。4極または8極のRF電極とパルス磁場発生コイルを組み合わせ、皮下に均一な熱を発生させます。心地よい温感の施術でセルライトの改善や皮膚の引き締めに用いられます。痛みやダウンタイムがないため週1回程度の頻度で計6~8回行うプロトコルが多く、ボディのたるみ治療や術後の引き締めケアに適しています。
- エンディメッドプロ(EndyMed PRO) – イスラエルEndyMed社製。六角形に配置された6極電極(3DEEPテクノロジー)から1MHzのRFを位相制御で流し、点ではなく面で真皮深部を加熱しますskinrefine.jp。安全性が高く色素沈着もまず起こさないため、海外ではホームケア用の弱出力版(Newaリフト)も販売されています。日本でも美容皮膚科で導入例があり、特に目元用の小型ハンドピースでは眼瞼の軽度たるみ改善にも効果が報告されています。
- サーミRFシリーズ – 米国Thermi社製の機器群。表面照射型ではありませんが、極細カニューレ電極を皮下に挿入して組織を直接加熱する「RFリフト」が可能です(例:ThermiTight®)。局所麻酔下に行う低侵襲施術で、首のたるみや顎下脂肪などに高い引き締め効果を発揮します。表面照射型RFと併用して、外から内からダブルで引き締める治療も行われています。ただし侵襲的手技のため本稿では詳細割愛します。
- フラクショナルRF機器:
- eMatrix(イーマトリックス) – 米国Candela社(旧Syneron)のサブレイティブRFシステム。64ピン(8×8)の電極マトリックスからフラクショナルにRFを照射し、表皮の一部にマイクロアブレージョン(点状の軽いやけど)を作ります。非光学系のフラクショナル治療として2009年頃に登場し、肌質改善やニキビ跡治療に世界的に用いられましたdermatol.or.jp。エネルギーの大半が真皮に集中するため表皮損傷は軽微で、ダウンタイムは2~3日の発赤と微細な痂皮程度です。日本でも一部クリニックで導入されています(未承認機器)。
- フラクショナルマイクロニードルRF: フラクショナルRFの中でもマイクロニードルタイプは近年の主流ですdermatol.or.jp。代表機種としてINFINI(インフィニ)および後継のGenius(ジーニアス)(韓国Lutronic社)、Secret RF(韓国/米国Cutera社)、Vivace(ビバーチェ)(韓国Shurink社)、POTENZA(ポテンツァ)(米国Cynosure社)などが挙げられます。これらは細い絶縁針または非絶縁針を真皮中層~深層まで刺入し、針先端からRFを照射することで真皮内に直接フラクショナルな熱損傷を与えますs-b-c.net。ニキビ瘢痕、毛穴開大、肌のハリ改善などに極めて有効で、複数回治療により肌表面の凹凸が滑らかになりますdovepress.comdovepress.com。ダウンタイムが短く色素沈着リスクも低いため、肌質を選ばない瘢痕治療として確立されてきました。特にGeniusは吸引機構とインピーダンスフィードバックで安定した照射が可能、Potenzaは極細針で痛みを軽減しつつ連続照射が可能、といった特徴があります。
- Sylfirm X(シルファームX) – 韓国Viol社製のデュアル波RFマイクロニードル。連続波とパルス波の2種類のRF波形を使い分けられる点が特徴で、瘢痕・毛穴治療のみならず赤ら顔や真皮メラノサイト異常(ADM/肝斑など)にも効果を示す報告がありますs-b-c.nets-b-c.net。シルファームXは16本針の極細ニードルからバイポーラRFを照射し、コラーゲン増生と同時に異常血管の選択的破壊を行うことで皮膚の赤みや色ムラも改善するとされていますs-b-c.net。実際、従来治療困難であった肝斑の色調改善に有効との臨床報告もあり、難治性肝斑にも施術可能なRFとして注目を集めていますs-b-c.net。
- AGNES(アグネス) – 韓国Agnes社製。先述のニキビ治療用に開発されたマイクロニードルRF装置で、直径0.3mm程度の極細絶縁針を毛包に刺し込み皮脂腺組織をピンポイントで熱凝固させますthemedermatology.com。これにより再発しない永続的なニキビ治療が可能となりました。例えば脂漏性皮膚(オイリー肌)の成人患者に3回のAGNES治療を行った研究では、以後1年以上ニキビがほとんど再発しなかったとのデータがありますcliffordclinic.com。同様の原理で眼瞼周囲の脂肪(眼窩脂肪)や汗腺腫(エクリン汗嚢腫)、鼻の黒ずみ毛穴治療にも応用されています。AGNESは施術者の高度な技術を要しますが、適切に行えば皮表に傷跡を残さず根本治療ができる画期的デバイスです。
- その他特殊なRF応用:
- 高周波多汗症治療: RFマイクロニードルを腋窩の汗腺に刺入して破壊する試みや、皮下カニューレRFでアポクリン汗腺を焼灼する治療(Miradry®はRFでなくマイクロ波ですが類似概念)があり、ワキガ・多汗症の治療にもRFが利用されています。
- 女性器タイトニング: 膣粘膜にRFを照射しコラーゲン増生を促す**膣タイトニング治療(例:サーミVA)**も海外では行われています。尿失禁改善や性生活の質向上を目的にした施術ですが、日本ではまだ症例が限られます。
なお、日本国内で使用されるRF機器の多くは未承認機器である点に留意が必要ですthermacool.biz。2025年現在、RF治療器として正式に厚労省承認を得ている機種はごくわずか(例:一部家庭用の低出力美顔器など)で、クリニックで使われる医療用RF機器はほとんどが医師個人輸入の形で導入されています。このため各クリニックはFDAやCEマーク取得など海外での実績を重視し、安全性と有効性が確認された機器を選定しています。また未承認機器の使用にあたっては適切なインフォームドコンセント下で行われますthermacool.biz。患者側から見ると不安に思われるかもしれませんが、RF治療は既に全世界で広範囲に使われ確立された技術であり、そのエビデンスは豊富ですshibuya-hifuka.com。各機器の特性を熟知した医師のもとで施術を受ければ、その**恩恵(しわ・たるみの非外科的改善)**を安全に享受できるでしょう。
8. 国内外のガイドライン・主要論文の参考文献リスト:
- 美容医療診療指針(令和三年度改訂版) – 日本皮膚科学会・日本美容外科学会ほか関連5学会による美容医療の総合ガイドライン(2022年)minds.jcqhc.or.jpdermatol.or.jp。シワ・たるみに対するRF治療の有効性はRCTが1件のみでエビデンスレベルは高くないが、非外科的治療の選択肢として弱く推奨できる旨などが記載されているdermatol.or.jpdermatol.or.jp。HIFUやレーザー等も含め、安全性(熱傷や瘢痕に注意)と承認状況(国内承認は現時点1機種のみ)について言及dermatol.or.jpdermatol.or.jp。
- 宮田成章 (2018) 『たるみの機器治療』 – 「BEAUTY」第1巻, pp.63–70dermatol.or.jp。美容皮膚科専門誌に掲載された総説記事で、RF治療を含むエネルギーデバイスによる皮膚たるみ治療の理論と実践を解説。RFの誘電加熱によるコラーゲン収縮メカニズムや、各種治療機器の比較、実際の治療経験が述べられている。特に軽度たるみには非侵襲的RF、高度たるみには外科的治療を組み合わせるアプローチなど、実臨床に即した内容となっている。
- Taub et al. (2012) “Facial tightening with an advanced 4-MHz monopolar radiofrequency device.” J Drugs Dermatol. 11(11):1288–1294dermatol.or.jp – 単極4MHz RF(Accent XL)の顔面タイトニング効果を検証した臨床研究。17名の顔たるみ患者に対し、1ヶ月おき計6回のRF治療を施行した結果、治療直後で約50%の皮膚引き締め効果を認め、最終治療6ヶ月後も30–50%の効果維持が確認されたと報告dermatol.or.jp。非侵襲的RFによる持続的リフトアップ効果を裏付けるエビデンスの一つ。副作用は一過性の紅斑・浮腫のみで、安全に施行できたとしている。
- Hruza et al. (2009) “Skin rejuvenation and wrinkle reduction using a fractional radiofrequency system.” J Drugs Dermatol. 8(3):259–265dermatol.or.jp – 初期のフラクショナルRF治療に関する研究。極細電極を用いたRFフラクショナルデバイス(eMatrix)の有効性を評価し、目尻のシワや肌質が有意に改善したと報告しているdermatol.or.jp。治療後の組織学的解析では真皮コラーゲンの増生が確認され、RFによる皮膚若返り効果を科学的に示した論文。ダウンタイムは数日の発赤程度で、安全性も高かった。
- Niaz et al. (2025) “Fractional Radiofrequency Microneedling as a Monotherapy in Acne Scar Management: A Systematic Review of Current Evidence.” Clin Cosmet Investig Dermatol. 18:19–29dovepress.comdovepress.com – RFマイクロニードリング(FRM)によるニキビ瘢痕治療のエビデンスを網羅的に検証した最新の系統的レビュー。RCT6件を含む16研究・計481例を解析し、FRM単独療法は全ての肌タイプの萎縮性ニキビ瘢痕に有効で安全と結論付けたdovepress.com。80%以上の患者で瘢痕グレードが2段階以上改善し、炎症性/非炎症性ニキビ病変の減少や皮脂分泌の抑制、肌質全体の改善も報告されたdovepress.com。副作用は一過性の紅斑・浮腫・軽度の色素沈着に留まり、フラクショナルレーザーに比べダウンタイムが短く色素沈着リスクも低いことが示唆されたdovepress.com。本レビューはFRMが肌の色を問わずニキビ瘢痕治療の有望な選択肢であることを示しており、今後のガイドライン形成に寄与する重要な文献。
- 櫛方暢晴ほか (2004) 「Radio frequency (RF) によるSkin Tightening治療の経験」『日本美容外科学会会報(JSAPS)』26巻3号, pp.141–151dermatol.or.jp – 日本国内におけるRFスキンタイトニング治療の初期報告。単極RF機器(当時のThermaCool)を用いて日本人患者の顔面たるみ治療を行った経験をまとめている。施術後6ヶ月までの経過で皮膚の引き締まりが認められ、安全性も良好であったと述べている。症例写真ではフェイスラインの改善が示され、海外と同様に日本人においてもRFの有用性を示した先駆的報告である。
- 河野太郎 (2018) 「【美容皮膚科外来の実際~治療技術の進歩~】シワのレーザー・高周波・超音波治療」『BEAUTY』1巻特別号, pp.14–18dermatol.or.jp – 美容皮膚科学の専門医による総説記事で、シワ・たるみ治療に用いられるレーザー、RF、HIFUについて解説。RFについてはその作用機序(誘電加熱)やコラーゲン産生メカニズム、さらに他治療(レーザー、HIFU)との使い分けについて述べられている。特に「皮膚浅層の小ジワにはフラクショナルRFが有効」「たるみには単極RFやHIFUで深部からアプローチする」といった実践的見解が示されており、美容皮膚科医にとって治療選択の指針となる内容である。
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