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D29.美容皮膚科学 シワ・たるみ・くすみ(非外科的治療) V1.0


D29.美容皮膚科学-シワ・たるみ・くすみ(非外科的治療-V1.0

美容皮膚科における皮膚老化: シワ・たるみ・くすみ

シワ(皺)

病態生理(原因とメカニズム)

シワは、医学的には「後天的に生じた皮膚のゆがみ、あるいは表皮から真皮の変形」と定義されますwakaba-keisei.jp。皮膚の老化現象には大きく内因性(生理的)老化外因性(光老化)があり、シワの形成にはその両方が関与します。内因性老化では加齢に伴い皮膚が萎縮し、水分や油分が減少してハリや滑らかさが失われ、小ジワが増加しますwakaba-keisei.jp。特に表皮が薄く脆くなり(有棘細胞層が2~3層程度にまで減少)、皮膚表面に微細なシワ(ちりめんジワ)が寄りやすくなりますwakaba-keisei.jp。また皮膚の弾力を保つ真皮の膠原線維(コラーゲン)や弾性線維(エラスチン)の産生が年齢とともに低下し、真皮の構造的支持力が弱まることもシワの一因ですmy.clevelandclinic.orgwakaba-keisei.jp。こうしたコラーゲン線維網の緩みや配列の乱れは、皮膚のくぼみとしてシワを生じさせますmy.clevelandclinic.org。加齢に伴い皮脂腺・汗腺の機能も衰えるため皮膚表面が乾燥しやすくなり、この乾燥もシワ(特に表皮ジワ)を誘発しますwakaba-keisei.jpwakaba-keisei.jp。乾燥による浅いシワは「乾燥ジワ」とも呼ばれ、保湿により改善しうる一時的なものですwakaba-keisei.jp

一方、光老化は長年にわたる紫外線曝露によって生じる皮膚老化現象で、顔面や手の甲など露光部に深いシワや色素斑を形成しますwakaba-keisei.jp。紫外線、とくにUVA波は真皮にまで到達してコラーゲン線維を破壊し、異常な弾性線維の蓄積(日光弾性変性)を引き起こしますmy.clevelandclinic.org。紫外線による真皮損傷時にはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)と総称される酵素群(コラゲナーゼ、ゼラチナーゼなど)が誘導され、これが健常なコラーゲン線維を分解してしまうことが判明していますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。実験では、単回のUV照射でも真皮でコラゲナーゼや92kDaゼラチナーゼ、ストロメリシンが増加し、Ⅰ型コラーゲン線維の分解が対照と比べ58%も増大しましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。繰り返しUV照射を行うとMMP活性は持続的に高まり、コラーゲンの損傷蓄積によってシワ形成が促進されると考えられますpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。紫外線で誘導されるMMP活性はレチノイン酸(トレチノイン)外用により70~80%抑制できることも報告されておりpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov、光老化によるシワの病態においてレチノイドが有効である科学的根拠となっています(後述)。紫外線以外の酸化ストレス要因もシワの加速要因です。例えば喫煙は皮膚のコラーゲン新生を抑制し、コラーゲン量の減少と弾力低下をもたらすため喫煙者はシワが増えやすいことが知られていますmy.clevelandclinic.org。大気汚染中の微粒子や煤煙、NO₂なども皮膚に付着・浸透して慢性的な炎症とコラーゲン分解を招き、シワ・老化の一因となりえますmy.clevelandclinic.org。さらに近年注目される糖化(過剰な糖とコラーゲンなど蛋白質が結合して生成される終末糖化産物: AGE)の影響では、皮膚のコラーゲンが“焦げ付き”硬化することで弾力低下や深いシワの形成、皮膚の黄褐色調への変化(いわゆる黄ぐすみ)を引き起こしますdermastart.com。糖化により線維芽細胞の機能も損なわれるため、皮膚の自己修復力が低下し老化がさらに進行する悪循環が生じますdermastart.comdermastart.com

また表情筋の反復収縮もシワの重要な要因です。眉間や額、目尻などのシワ(表情ジワ)は、表情筋の動きによって皮膚が反復して折りたたまれることで次第に定着しますmy.clevelandclinic.org。若年時は表情を緩めれば皮膚も元に戻りますが、加齢により皮膚の弾力が失われると表情を解除してもシワが残存するようになり、静止ジワ(刻み込まれたシワ)となります。さらに加齢による顔貌変化(皮下脂肪の萎縮や重力による下垂=たるみ)も深いシワ・溝の形成につながりますwakaba-keisei.jp。例えば頬の脂肪や皮膚がたるむことで法令線(鼻唇溝)が深く刻まれることがあり、これも広義のシワとして捉えられますwakaba-keisei.jp

要約すると、シワの原因の多くは表皮の乾燥と**紫外線による真皮構造の劣化(コラーゲン・エラスチン線維の減少・変性)**でありwakaba-keisei.jp、そこに喫煙などの酸化ストレスや糖化、筋肉・脂肪の変化など複合的要因が加わって発生します。

診断(視診・分類・評価法)

シワは肉眼で容易に確認できるため、診断自体は視診によって行われますmy.clevelandclinic.org。皮膚科専門医はシワの分布や深さ、表情との関係を評価し、患者の訴えや美容上の要望と照らし合わせて治療方針を決定します。シワには浅い表皮ジワ深い真皮ジワがあり、前者は乾燥などで一時的に生じる細かいシワ(目尻・目周りの細かいちりめんジワ等)で保湿により改善しうるのに対し、後者は皮膚の真皮層まで及ぶ永続的なシワですwakaba-keisei.jp。真皮ジワはさらに、表情筋の走行と直交する方向にできる比較的細い“小ジワ”と、目や口の周囲・顔の輪郭線上にできる深い“大ジワ”に分類されますwakaba-keisei.jp。小ジワ(表情性の真皮ジワ)は加齢とともに増加し保湿だけでは改善しません。一方、大ジワは老化による皮膚のたるみやボリュームロスも背景にある深いひだであり、外科的治療(フェイスリフトなど)も検討される領域ですが、本稿では非外科的アプローチについて後述します。

シワの重症度評価にはいくつかのスケールが用いられます。国際的によく用いられるグロガウ分類(Glogau’s Photoaging Classification)では、光老化の程度をI(ほぼシワなし)~IV(深いシワのみが目立つ)まで4段階で評価しますsfderm.com。例えばType Iは20~30代でほぼシワが無い状態、Type IIは30代以降で表情時にのみ浅いシワが現れる状態(いわゆる表情ジワ)、Type IIIは50代前後で静止時にもシワが認められる状態、Type IVは60代以上で深いシワが全顔に刻まれた状態といった目安ですsfderm.com。シワの種類ごとの評価尺度としては、例えば鼻唇溝の深さを評価するワーセル・シワ評価スケール(WSRS)や、額・目尻など部位別の5段階評価スケール、また美容施術の効果判定にはGlobal Aesthetic Improvement Scale (GAIS)などが用いられることもあります。日本においては日本香粧品学会が「抗シワ製品評価ガイドライン」を策定しており、目尻のシワを3段階(または細分化して5~8段階)のグレードに分類した標準写真による評価法が提案されていますshinryo-to-shinyaku.com。このガイドラインでは、専門家による目視評価に加え、シワ部位のレプリカ(シリコン印象)を作製して光を斜めから当てた時の影の面積や深さを画像解析する手法など、客観機器評価も組み合わせてシワ改善効果を検証することが推奨されていますshinryo-to-shinyaku.com。美容皮膚科領域では、高解像度の写真撮影による画像比較や3D光学解析装置(PRIMOS®, Visiometer®など)によるシワの深さ・面積の定量計測も研究・施術効果判定に用いられます。例えばVisiaなどの顔分析システムではシワの本数や長さをスコア化して経時的変化を見ることができます。総じて、シワ診断では視覚的な所見と、必要に応じてこうした標準化スケール機器測定を組み合わせることで、治療前後の変化を定量的に評価することが可能です。

非外科的治療法

シワに対する非外科的アプローチには、外用療法注入療法エネルギーデバイス治療、そして生活習慣の改善が含まれます。患者のシワの種類(表皮ジワか真皮ジワか、動的シワか静的シワか)、部位、重症度に応じて、これらを組み合わせた治療戦略を立てます。

  • 外用薬(スキンケア)による治療: シワ改善効果が科学的に証明されている外用成分として最も重要なのがトレチノイン(レチノイン酸)とレチノールなどのビタミンA誘導体ですpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。レチノイドは表皮のターンオーバーを促進しコラーゲン産生を高めることで、浅いシワの改善や真皮の菲薄化防止に有効です。実際に光老化皮膚にトレチノインを外用すると、新規コラーゲン合成が増加しシワの深さが浅くなることがヒト試験で確認されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。このためトレチノイン外用療法はエビデンスA(強く勧められる治療)として多くのガイドラインで推奨されています。またビタミンC(アスコルビン酸)やその誘導体は抗酸化作用により光老化の進行を抑制し、コラーゲン合成を促す作用から小ジワの改善に用いられます。ナイアシンアミド(ビタミンB₃)もコラーゲン産生やセラミド合成を促進し、細かいシワや肌の質感を改善する成分として配合化粧品が市販されていますja.wikipedia.org。近年はペプチド成分にも注目が集まっており、例えばボツリヌストキシン様作用を持つとされるアセチルヘキサペプチド-8(アルジルリン)は4週間の外用でシワの深さを30%程度減少させたとの報告がありますmdpi.com。このように、日々のスキンケアでレチノイド抗酸化成分ペプチドを取り入れることは、シワ治療と予防の基本となります。加えて保湿は乾燥ジワの改善に即効性がありますwakaba-keisei.jp。ヒアルロン酸やセラミドを含む保湿剤で肌の水分保持力を高めることは、それ自体が小ジワを目立たなくする効能として認可されており(「乾燥による小ジワを目立たなくする」効能表示)、エイジングケアの第一歩ですwakaba-keisei.jp
  • 注入療法(注射・注入剤による治療): ボツリヌス毒素注射(ボトックス®等)は表情筋の過度な収縮を一時的に抑制することで表情ジワを劇的に改善する治療です。額や眉間、目尻などのシワに対して少量を皮内・筋内注射すると、3~7日以内にシワの寄りが軽減し効果が3~4か月持続します(定期的な追加で維持可能)mdpi.com。ボトックスは適切に用いれば安全かつダウンタイムもほぼ無いため、動的シワの第一選択治療となっています。一方、深い静的なシワ(ほうれい線やマリオネットライン、深い額シワなど)には真皮充填剤(フィラー)の注入が有効です。ヒアルロン酸フィラーはシワの溝を下から持ち上げるように注入して即時的にシワを浅くできます。近年のメタ解析でも、ヒアルロン酸注射により皮膚の水分量と輝き(radiance)の有意な改善が見られたことが報告されておりresearchgate.net、フィラーは単にシワを物理的に埋めるだけでなく皮膚品質の向上にも寄与します。ただし浅い表皮ジワには過度な注入はできないため、ボトックスや外用で対応し、フィラーは中等度以上の深いシワや溝に使い分けます。またコラーゲンブースターと呼ばれる注入剤(自己コラーゲン産生を刺激する製剤)もあり、例えばポリ-L-乳酸製剤(スカルプトラ®)やCaハイドロキシアパタイト製剤(ラディエッセ®)は真皮・皮下に注入すると数ヶ月かけてコラーゲン新生を促し、肌のハリを高めてシワやたるみを改善しますja.wikipedia.org。さらに自己血液由来の再生療法として多血小板血漿療法(PRP療法)も行われています。PRPをシワ部位に真皮注入すると、血小板中の成長因子が線維芽細胞を活性化しコラーゲン生成を促して皮膚を若返らせますbeautymed-brezza.jpbeautymed-brezza.jp。実際、鼻唇溝から口角にかけて深いシワのあった40代女性に自己PRP+成長因子を注入した例では、2か月後にはくっきりしたシワが目立たなくなるまで改善していますbeautymed-brezza.jpbeautymed-brezza.jp。このようにフィラーやPRP、各種注入療法はシワの種類に応じて使い分け・併用され、外科手術に頼らないアンチエイジング治療の主軸となっています。
  • エネルギーデバイス(医療機器)による治療: レーザーや高周波(RF)、超音波などのエネルギーデバイスは、皮膚に物理的刺激を与えてコラーゲン産生を促したり、表皮の再構築を行うことでシワを改善します。代表的なのはレーザー治療で、浅いシワや肌質改善にはフラクショナルレーザー(炭酸ガスフラクショナルやエルビウムヤグレーザー等)が用いられます。フラクショナルレーザーは極小の点状の熱損傷を皮膚に与え、その治癒過程で表皮の入れ替わりと真皮コラーゲン増生を促します。治療後数ヶ月かけて小ジワや肌の質感(きめ)の改善が得られますja.wikipedia.org。一方、深いシワにはアブレージョン系レーザー(従来型の炭酸ガスレーザーなどで皮膚の表層を剥脱する治療)や強力なピーリング(フェノールピーリングなど)が効果的ですが、ダウンタイムや副作用リスクが大きいため現在ではフラクショナルレーザーに取って代わられています。高周波(RF)治療は皮膚を加熱しコラーゲン線維を収縮・再生させるもので、例えばサーマクール®はRFにより真皮を約65℃まで加熱して即時的にコラーゲン収縮を起こし、さらに数ヶ月かけて新生コラーゲンに置換させることでタイトニング効果(ハリの向上)を得ますja.wikipedia.org。RF治療は顔全体のたるみ改善目的で行われることが多いですが、細かいシワにも寄与します。また超音波(HIFU: 高密度焦点式超音波)治療も真皮深層~皮下組織に超音波エネルギーを集中的に与えてコラーゲン再生を促すもので、こちらも主にはリフトアップ目的ですが目周りの細かいシワ改善効果も報告されていますja.wikipedia.org。さらに近年登場したRFマイクロニードリング(微細針+高周波)も有望です。極細針を刺入して真皮内でRF加熱を行うことでフラクショナルレーザーと同様のコラーゲン新生効果を得る仕組みで、肌表面のダメージを抑えつつシワ・毛穴を改善できます。例えばMorpheus8(RFマイクロニードル)を下眼瞼のシワ・たるみに月1回×2回施行した症例では、1か月後に目下の脂肪膨隆が減少しシワ・クマの大幅な改善が認められていますginzabiyou.com。このように様々なエネルギーデバイスがシワの程度や部位に合わせて選択され、必要に応じて組み合わせて用いられます。レーザーとボトックス、フラクショナルレーザーとPRP、HIFUとフィラーなど、コンビネーション治療により相乗効果を狙うのが近年のトレンドです。
  • 生活習慣の改善(予防的アプローチ): シワ治療と平行して、あるいは治療効果を維持するために、患者の日常生活上のケアも重要です。紫外線対策は最も重要で、日焼け止めや日傘・帽子の使用で光老化を防ぐことができます。長期的にはUV曝露を避けることがシワ予防の基本ですwakaba-keisei.jp禁煙も非常に大切で、喫煙者はコラーゲン産生能力の低下や活性酸素増加によりシワ・たるみが非喫煙者より顕著であるためmy.clevelandclinic.org、禁煙指導も美容目的であっても推奨されます。食生活では糖化を防ぐため高糖質食の過剰摂取を控えることや、抗酸化作用の高いビタミンC・E、ポリフェノール類を含む食品(野菜・果物)を積極的に摂ることが望ましいとされています。また適度な睡眠・運動も全身の血行やホルモンバランスを整え皮膚の代謝を促すため、健やかな肌維持に役立ちます。美容皮膚科医はしばしばこれら生活面の指導も行い、「美しい肌は毎日の保湿と日焼け予防で作られるwakaba-keisei.jp」との啓発メッセージを患者に伝えています。総合的なケアによりシワ治療の効果と持続性は大きく向上します。

最新技術・研究動向

シワ・皮膚老化の分野では近年、再生医療新規デバイス技術の発展が目覚ましいです。まず再生医療では、患者本人から採取した組織を利用して老化肌を若返らせる試みが行われています。代表例が自家培養真皮線維芽細胞移植(Fibroblast Therapy)ですginzabiyou.com。これは耳の後ろなどから少量の皮膚を採取し、そこから線維芽細胞を分離・培養増殖して数千万個にまで増やした後、顔のシワやくぼみ、たるみ部位に再注入する治療ですginzabiyou.com。線維芽細胞は真皮のコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを産生する細胞であり、加齢で減少・老化した線維芽細胞を若い元気な自己細胞で補充することで、シワの改善や肌のハリ回復を図りますginzabiyou.com。日本でも厚労省の認可のもと一部クリニックで施行されており、法令線や目元のシワに対して数年間効果が持続したとの報告がありますginzabiyou.comyanaga-cl.com。また、ヒト幹細胞由来の培養上清やエクソソーム(細胞外小胞)を皮膚に投与して若返りを図る研究も進んでいますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。幹細胞培養上清中には成長因子やサイトカインが豊富に含まれ、真皮の線維芽細胞を刺激してコラーゲン産生を高めたり、老化細胞の機能を改善する可能性が示唆されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govonlinelibrary.wiley.com。実際、臍帯血幹細胞由来エクソソームを配合したクリームを12週間使用した試験では、シワや毛穴、皮膚の均一性の改善がプラセボより優れたとの報告もありますonlinelibrary.wiley.com。エクソソームは極めて小さいため経皮吸収や注射での導入もしやすく、将来的な非細胞ベースの抗老化治療として期待が高まっていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov

デバイス面では、レーザーやエネルギー機器の進化が続いています。近年はピコ秒レーザーが登場し、主に色素疾患治療に使われますが真皮コラーゲン増生効果も報告され、フラクショナルモードと組み合わせてシワ・ニキビ痕治療への応用も検討されています。RFやHIFUも技術改良が進み、痛みやダウンタイムを軽減しつつより高い効果を出す第2世代HIFU機器や、RFと強力な吸引・冷却を組み合わせて安全性を向上させた機器などが登場しています。また家庭用の美容機器にもレーザーやRFの技術が応用され、弱出力ながらシワ改善効果が確認されたデバイスもあります(米国FDA承認の家庭用RFでのシワ改善報告などja.wikipedia.org)。これらは医療用には及ばないもののセルフケアの幅を広げるものです。

薬剤の分野では、新規の抗老化分子経皮送達システムの研究が進んでいます。例として、上記ペプチドでは海洋性由来の合成ペプチド(シグナペプチドなど)がボトックスに似た作用でシワを減らすとして製品化されていますmdpi.com。また近年レチノール誘導体の安定化製剤や、副作用の少ない選択的レチノイド(例: 第四世代レチノイドのトリファロテン)も開発され、シワ治療への応用が模索されています。さらに、老化細胞の蓄積を除去する“セノリytics”(抗老化剤)を皮膚に適用する研究も始まっています。将来的には、遺伝子治療mRNA医薬によってコラーゲン産生を高めたりMMP産生を抑制するようなアプローチも考えられます。

このようにシワ治療の世界は、再生医療による細胞からのアプローチと、デバイス・薬剤によるテクノロジーからのアプローチの両輪で発展しています。ただし新技術は安全性・有効性の確立が必要であり、費用も高額になりがちです。現時点ではエビデンスの確立したレチノイドやボトックス、レーザー等が治療の主軸ですが、今後これら最新研究の成果が臨床応用されれば、より根本的で持続的なシワ対策が可能になると期待されますja.wikipedia.orgpmc.ncbi.nlm.nih.gov

臨床例・症例紹介

〔症例1〕 50代女性。目尻の表情ジワと額の横ジワを主訴に来院。視診では笑ったときに目尻に放射状の小ジワが多数出現し、額にも薄い横ジワが認められた。まずボツリヌス毒素注射を額と両目尻に少量ずつ施行したところ、1週後には額のシワはほぼ消失し、目尻のシワも笑った際に目立たない程度に改善したmdpi.com。表情ジワ改善後、残存する浅いちりめんジワに対してレチノール配合クリームの夜間外用とビタミンC誘導体ローションの朝晩外用を開始した。2か月後、目元のちりめんジワは保湿も相まってほとんど目立たなくなり、患者は「化粧ノリが良くなった」と実感したという。さらに予防目的で日中のUVケア指導を行い、現在も維持治療中である。

〔症例2〕 60代女性。深く刻まれた法令線(鼻唇溝)とマリオネットラインを改善したいと希望。皮膚診察では、両側鼻唇溝が口角まで延長する形で深く折れ込んでいた。まずヒアルロン酸フィラー(高濃度型)を左右の鼻唇溝~口角ラインにそれぞれ1本ずつ皮下に注入しシワを下から持ち上げた。施術直後よりシワの溝は浅くなり、顔の印象が若返った。その1か月後、フィラーで持ち上げきれない口角横の細かいシワと肌質改善を目的に、患者自身の血液から調製したPRP(多血小板血漿)に成長因子を添加した製剤をシワ周囲の真皮に細かく注入したbeautymed-brezza.jp。2か月後の再診時には、法令線~口角のシワは施術前と比べて格段に目立たなくなり、口横の「くっきりしたシワ」がほとんど消失したことを確認したbeautymed-brezza.jp(下写真参照)beautymed-brezza.jpbeautymed-brezza.jp。患者も鏡を見て「口元の陰りが無くなり驚いた」と満足している。フィラーとPRPを組み合わせた症例で、副作用は軽度の注射部位の内出血がみられたのみで良好に経過している。このようにコンビネーション治療により、深いシワにも外科手術に頼らず大きな改善が得られるケースが増えている。

〔症例3〕 40代男性。目の下のたるみとクマが目立ち疲れて見えることを主訴に美容皮膚科を受診。診察すると、下まぶたに膨らんだ脂肪(眼窩脂肪の突出)と、その下にやや青黒い影(クマ)が確認された。まず外科的な下眼瞼脱脂術も提案したが、非手術治療を希望されたため、RF高周波を用いたMorpheus8(モーフィウス8)による治療を計画。下眼瞼に極細針を約3mmの深さまで刺入しRFエネルギーを照射する治療を2か月間隔で2回施行したginzabiyou.com。1回目施術後に軽度の腫れが数日出たのみで経過し、1か月後には下まぶたの膨らみが幾分改善した。2回目施術から1か月後に再評価すると、下眼瞼の突出脂肪が明らかに減少して平坦化し、クマも軽減していたginzabiyou.com。患者も「目の下がスッキリして表情が明るくなった」と喜ばれた。この症例ではメスを使わず高周波治療のみで眼下のたるみ改善に成功した。下眼瞼の皮膚が引き締まったことで細かいシワも目立ちにくくなる副次効果が得られている。RFマイクロニードリングはダウンタイムが少なく脂肪減少効果も期待できるため、外科手術に抵抗のある目元のエイジングケアに有用な選択肢といえる。

たるみ

病態生理(原因とメカニズム)

**「たるみ」**とは、一般に顔の皮膚・軟部組織が重力により下垂した状態を指しますja.wikipedia.org。特に頬や顎のライン、目の下などで顕著に現れ、輪郭がぼやけたりほうれい線が深く見える原因となりますja.wikipedia.org。顔のたるみの主な要因は、皮膚の粘弾性低下(ハリの低下)皮下脂肪の増減表情筋・支持組織の衰えの3つに大別できますja.wikipedia.orgja.wikipedia.org

まず真皮の構造変化ですが、加齢や紫外線の影響でコラーゲン・エラスチン線維が劣化・減少すると皮膚の弾力が低下しますomotesando-skin.jpomotesando-skin.jp。弾力の失われた皮膚は重力に抵抗できず下方向へ引き伸ばされやすくなるため、フェイスラインが緩み全体に下垂した印象を与えます。実際、頬のたるみが顕著な人では皮膚弾性(ヤング率)の低下が認められたとの研究報告がありますja.wikipedia.org皮膚そのものの菲薄化(特に更年期以降のエストロゲン低下などで真皮が萎縮する現象)もハリ低下を招き、たるみの一因ですomotesando-skin.jpomotesando-skin.jp

次に皮下脂肪組織の影響があります。顔の脂肪量は部位によって増減しますが、加齢に伴い頬の脂肪が下垂・移動したり、逆に萎縮してボリュームロスが起こることがあります。脂肪が多過ぎる場合はその重みで下膨れ(いわゆるブルドッグ顔貌)になりやすく、一方で脂肪萎縮がある場合は頬がこけて皮膚を支えきれずたるんで見えますomotesando-skin.jpomotesando-skin.jp。肥満傾向の人では過剰な脂肪で皮膚が押し出され下垂が目立ちやすく、痩せすぎの人ではクッションとなる脂肪が無いため皮膚にハリがなくたるみやすい、といった両面がありますomotesando-skin.jpomotesando-skin.jp。実際、頬のたるみ程度は皮下脂肪量とも相関するとの研究があり、脂肪層の厚い人はたるみスコアが高い傾向が示されていますja.wikipedia.orgja.wikipedia.org

さらに表情筋・支持組織の役割も大きいです。顔面にはSMAS(表在性筋膜)や靭帯など皮膚を支える構造がありますが、加齢によりそれら支持組織が緩み、また表情筋や咀嚼筋など筋肉自体の張力も低下します。筋肉がたるむと皮膚を引き上げる力が弱まるため、結果として皮膚・脂肪が下方に落ち込みますja.wikipedia.org。特に下まぶたでは眼輪筋の緩みと眼窩脂肪の突出が組み合わさり「目の下のたるみ」として現れますomotesando-skin.jp。首の広頚筋のゆるみは顎下のたるみ(いわゆる二重顎)を助長します。また頭皮(帽状腱膜)のゆるみも額やまぶたの下垂に関与すると言われます。以上のように、たるみは皮膚(真皮)・脂肪・筋肉の全層的変化によって生じる複合的現象です。

要因別にたるみのタイプを分類すると、以下のようになりますomotesando-skin.jpomotesando-skin.jp:

  • 脂肪過多型: 顔の脂肪が多く重いために重力で下がるタイプ(いわゆるブルドッグ顔)。頬や顎下にたぷんとしたたるみが出ますomotesando-skin.jp
  • ハリ減少型: コラーゲン・エラスチンの減少などで肌のハリ・弾力自体が低下して起こるたるみ。皮膚を引っ張ると弾力なく伸びてしまうのが特徴ですomotesando-skin.jp
  • ボリュームロス型: 頬の脂肪や骨の萎縮で顔のボリュームが減り、皮膚が余ってたるむタイプ。頬がこけて老人顔に見えますomotesando-skin.jp
  • 皮膚菲薄化型: 加齢やホルモン低下(更年期など)で皮膚が痩せ薄くなることによるたるみ。肌がハリを失い、筋肉量低下も伴って起こりますomotesando-skin.jp
  • 眼下のたるみ型: 下瞼の筋肉衰えや眼窩脂肪の突出で生じる目の下のたるみ。クマ(青黒く見える影)を伴いますomotesando-skin.jp

多くの場合、実際の患者さんはこれらが複合して存在します。例えば40代以降の女性ではホルモン変化で肌が乾燥・菲薄化しハリが低下するうえ、代謝低下で脂肪の付き方も変わるため、複数のタイプのたるみが同時進行しますbe-story.jp。顔の上部~中部ではボリュームロスによるコケとハリ低下が、下部では脂肪下垂と皮膚余りが、といった具合です。この複雑な病態が顔全体の老けた印象につながるため、治療では原因を的確に見極めて対処する必要があります。

診断(視診・画像診断・評価法)

たるみの診断も基本は視診・触診によります。患者が感じる「顔がたるんだ」「輪郭がぼやけた」といった主観的変化を、医師が客観的に評価し、どの部位にどの程度の下垂があるかを判断します。視診では正面・斜め・側面から顔貌を観察し、頬の位置やフェイスライン、目尻・口角の位置関係、皮膚の弛み具合などを確認します。触診では皮膚を軽くつまんで伸展性(弾力)をみたり、頬の支持靭帯のゆるみ具合を感じ取ります。

定量的な評価法として、専門家によるグレード判定が行われることがあります。熟練した評価者が被験者の写真または直接顔を見て、あらかじめ定義した基準に照らして「たるみ度合い」をスコア付けする方法ですja.wikipedia.org。例えば頬の法令線下垂の程度をI度~IV度に分類したり、マリオネットライン(口角横の溝)の長さ・深さで評価する等のスケールがあります。評価者間の差を減らすため、複数の評価者で判定し平均をとる、評価基準を明確にして訓練する、といった工夫も推奨されていますja.wikipedia.org

また画像解析計測装置を用いた客観評価も開発されています。例えば三次元表面計測装置で顔をスキャンし、頬の隆起や法令線の深さ、顎下のたるみ角度などを数値化する方法がありますja.wikipedia.org。モアレ写真法や3Dステレオフォトグラメトリでは、顔の形状変化を可視化して微細な下垂も検出できますpubmed.ncbi.nlm.nih.govcanfieldsci.com。ある研究では、立位と仰臥位での顔の3Dスキャンを比較し、姿勢で生じる頬部の微妙な位置変化からたるみを定量化する試みも報告されていますonlinelibrary.wiley.com。さらに皮膚の物理的特性(弾性や重力に対する変形量)を測定することでたるみを評価する手法も検討されていますja.wikipedia.org。例えば皮膚弾性計(カットオメーター)で頬のたるみ指標を測ったり、エコーで皮下組織の厚み変化を見るなどの研究もあります。ただし機器評価は個人差(脂肪量や骨格)による影響が大きく、たるみの実態を反映する指標を見出すには更なる検証が必要とされていますja.wikipedia.org

診療現場では、患者の写真を治療前後で比較して改善度を視覚的に説明することが多いです。例えば「頬の位置が○mm上がった」「フェイスラインの影の面積が減った」などを写真上で示します。また患者自身に鏡を見てもらい触れてもらうことで実感してもらうこともあります。以上より、たるみ評価はまだ統一された国際基準はないものの、臨床的観察補助的な計測を組み合わせて包括的に判断するのが現状です。

非外科的治療法

外科的なたるみ治療(フェイスリフト手術等)を除いた美容皮膚科的アプローチとして、エネルギーデバイスによる皮膚タイトニング, 注入療法によるボリューム調整・コラーゲン刺激, スレッドリフト(糸によるリフト), 外用薬・生活習慣改善などがありますomotesando-skin.jp。患者のたるみのタイプや程度に合わせ、これらを適切に組み合わせて治療計画を立てますomotesando-skin.jp

  • エネルギーデバイス治療(皮膚の引き締め): たるみ治療の主軸はレーザー・高周波RF・超音波HIFUといった機器による皮膚のタイトニングです。代表的なのが高密度焦点式超音波(HIFU)治療で、皮下組織の一定深度に高エネルギーの超音波を集中的に照射し、SMASや脂肪層に点状の熱変性を起こします。その結果、部分的に脂肪細胞の壊死とコラーゲン産生刺激が生じ、施術後2~3か月かけて皮膚が引き締まりリフトアップ効果が現れますja.wikipedia.org。FDA承認機器のウルセラが有名で、日本でも広く行われていますja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。HIFUは非侵襲で効果が高い一方、一時的な神経障害や熱傷リスクもあるため熟練した医師による施術が必要ですja.wikipedia.org。次に高周波RF治療では、例えばサーマクールが2000年代から実施されていますja.wikipedia.org。RFは真皮深部を加熱してコラーゲン線維を即時に収縮させ、さらに創傷治癒過程で新生コラーゲンに置き換えることで数か月かけて引き締め効果を発揮しますja.wikipedia.org。サーマクールではクーリングを併用することで表皮を保護しつつ真皮を約65℃に加熱します。効果は施術直後より感じられることもありますが通常は複数回施術で徐々に現れますja.wikipedia.org。HIFUとRFはいずれも切らないリフトアップ法として確立しており、顔全体から顎下、目元専用のプローブまで様々な用途に応用されています。
  • 注入療法(ボリューム補填・コラーゲン増生): たるみは皮膚のゆるみだけでなくボリュームロスも大きく関与するため、ヒアルロン酸フィラー等の注入で凹みを支える治療が有効です。例えば頬がこけてたるんで見えるケースでは、頬骨上部やこめかみにフィラーを注入してボリュームを補うと、皮膚が上向きに持ち上げられてフェイスラインが改善しますosaka-houreisen.jpomotesando-skin.jp。フィラーは即時効果がありダウンタイムも少ないため、軽度~中等度のたるみに広く用いられます。さらに前述のコラーゲンブースター(SculptraやRadiesseの希釈注入)は、皮膚全体のハリを数ヶ月かけて底上げする治療で、顔の広範なたるみに対して肌質から改善を図りますja.wikipedia.org。例えばCaハイドロキシアパタイト製剤を顔面に網状に浅層注入すると、3~4ヶ月後にコラーゲン増生がピークとなり皮膚全体のタイトニング効果が得られるとの報告がありますja.wikipedia.org自己脂肪注入も、萎縮したこめかみや頬に自己の脂肪を注入移植して膨らませることでたるみを軽減する方法ですが、これは外科的手技(脂肪採取が必要)を伴うため本稿では詳述しません。近年はたるみ治療に多角的アプローチが推奨され、例えばHIFUでリフトアップしつつフィラーで溝を埋める、RFでタイトニングしつつPRPで肌質を改善するといった組み合わせが行われていますomotesando-skin.jpomotesando-skin.jp
  • スレッドリフト(糸によるリフトアップ): スレッドリフトは極細の医療用糸を皮下に挿入し、物理的に軟部組織を吊り上げる治療です。溶ける糸(PDOやPLA製など)にトゲ(コグ)がついた糸を頬やフェイスラインに数本挿入し、タルミを引き上げ固定します。施術直後からリフト効果が得られ、糸は半年~1年で吸収されますが、その間に糸周囲でコラーゲンが増生することで効果の持続と肌質改善が期待できますja.wikipedia.org。スレッドリフトはメスを使わないフェイスリフトとも呼ばれ、腫れや内出血は少し出るものの傷跡は針穴程度で済みます。中顔面から下顔面のたるみに対して即効性がありますが、引き上げ量には限界があり重度のたるみには外科手術が必要な場合もあります。近年はコグの形状改良や、引き上げのみならず肌の線維化を促すスムース糸との組み合わせなど進化していますja.wikipedia.org。スレッドの本数や配置は個々の顔に合わせカスタマイズされます。効果維持のため1~2年毎に繰り返すこともあります。スレッド治療は切開に抵抗のある患者に好まれ、日本でも広く行われています。ただ、糸が露出したり触知される、副神経障害のリスクなどもゼロではないため、熟練医による施術が重要です。
  • 外用療法・生活習慣: たるみに対する外用薬の直接的効果はシワほど顕著ではありませんが、トレチノインやレチノールは長期使用で皮膚のハリ改善に有用ですomotesando-skin.jp。また近年注目の成長因子含有美容液(FGFやEGF配合)なども真皮リモデリング効果を謳っています。抗酸化作用のあるビタミンC誘導体やナイアシンアミド外用も、真皮の酸化ストレス軽減や軽度のハリ改善が期待できます。生活習慣面では、紫外線対策禁煙十分な睡眠栄養などシワ予防と共通の心掛けがたるみ予防にも重要ですomotesando-skin.jp。特に紫外線はハリ低下を招きますので日々のUVケアは不可欠ですomotesando-skin.jp表情筋トレーニング顔のマッサージもたるみ予防に有用との意見がありますomotesando-skin.jp。実際、顔ヨガや咀嚼筋エクササイズで筋緊張を高めると軽度のリフトアップ効果を感じる人もいます。ただし過度なマッサージは摩擦でシミやシワを増やす恐れがあるため注意が必要です。適度な有酸素運動は血流を促し、むくみ改善によって顔色や張りを良くしますmediplus-orders.jp。入浴で身体を温めることも老廃物排泄を促し、美肌に繋がるとされていますmediplus-orders.jp。総じて、生活習慣の改善は即効性こそ乏しいものの、治療効果を長持ちさせ再発を遅らせるうえで欠かせない要素です。

最新技術・研究動向

たるみ治療の分野でもシワ同様に再生医療デバイス技術の進歩が著しいです。再生医療として前述の自家培養線維芽細胞注入はシワだけでなくたるみ改善も期待できる治療ですyanaga-cl.com。線維芽細胞注入によりコラーゲンが増えることで皮膚全体の弾力が高まり、頬のこけ改善やフェイスラインの引き締め効果が得られた例も報告されていますyanaga-cl.com。また、脂肪由来幹細胞から抽出したエクソソームを顔面に注射して皮膚密度を改善する研究も進んでいますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。臨床段階では、ある程度の効果が確認されつつありつつも、投与プロトコルや長期安全性の確立が課題ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov

デバイス面では、マルチモーダル治療高精度イメージガイドの開発が注目されています。例えばHIFUとRFを同時に照射できる複合機や、HIFUを照射中に超音波画像でSMASの位置を確認できる機器などが研究中です。またロボットアシスト施術も将来的には考えられ、AIが顔の形状を分析して最適な照射パターンを提案する試みもあります。最近の研究では、肌内部にセンサーを貼付し実際のたるみ具合(皮膚の下垂距離など)をリアルタイム計測するといったスマートスキンテクノロジーの可能性も示唆されています。

さらに、経皮ドラッグデリバリーの新技術としてマイクロニードルやエレクトロポレーションで有効成分を真皮に届け、コラーゲン産生を直接促す方法も模索されています。例えばシリコーンマイクロニードルにレチノールを仕込み、貼るだけで真皮に徐放するパッチなどは現在研究段階です。これらは将来、たるみ治療を在宅で安全に行う一助になるかもしれません。

エネルギーデバイスでは、RFマイクロニードルの改良版や高出力集束超音波(ハイフの進化形)が出現しています。RFマイクロニードルは既にMorpheus8など市販されていますが、更に痛みを抑えつつ深部まで到達できる針設計の工夫や、照射パターンを自動最適化するソフトウェアの開発が進んでいます。HIFUでは現行でも1.5/3.0/4.5mmの深度焦点がありますが、新機種では8~13mmといったボディの脂肪減少向けの深達度や、逆にまぶた用の浅い深度のHIFUなども開発されつつあります。

エビデンスの面では、たるみ治療は客観評価が難しいため効果検証の研究が増えてきています。近年のRCTではHIFUとRFの併用群が単独治療より優れる結果が報告されたり、あるいは中顔面のフィラー注入が皮膚の引張強度をどれだけ改善するか測定したものなど、科学的データが蓄積されてきました。また、安全面の研究ではHIFUによる眼症状(網膜や水晶体への影響)のリスク検証、RFによる脂肪融解の程度なども議論されていますja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。2024年には、日本でもエステサロンでの違法HIFU施術によるトラブル増加を受けて、厚労省が医師以外のHIFU施術禁止を通知する事態になりましたja.wikipedia.org。このように、新技術の普及に伴い安全確保の観点もますます重要となっています。

総じて、たるみ治療は「切らないでどこまでリフトアップできるか」という美容皮膚科の挑戦領域であり、最新の再生医療とデバイス技術の融合によって今後さらに発展していくでしょう。

臨床例・症例紹介

〔症例1〕 40代女性。頬のたるみとフェイスラインのもたつきを主訴に来院。正面から見るとマリオネットライン(口角両側の溝)が目立ち、横からは顎下に軽度のたるみが見られた。まず全顔にHIFU治療(ウルセラ)を施行。頬から顎下にかけて3層(4.5mm/3mm/1.5mm)計500ショット照射した。施術直後からフェイスラインの引き締まりを患者自身も実感し、1か月後の写真ではマリオネットラインが浅くなり口角の位置がわずかに上がっていた。さらに不足する中顔面のボリュームを補うため、両側の頬骨上部にヒアルロン酸フィラー(計2cc)を注入したところ、頬のこけが改善して自然なリフトアップ効果が得られたomotesando-skin.jpomotesando-skin.jp。患者は「疲れ顔が解消した」と満足し、ダウンタイムも内出血が少し出た程度であった。その後、肌質向上目的でRFマイクロニードル治療も追加し、毛穴や肌のハリも改善している。複合治療により中等度のたるみ症例でメスを使わず良好な結果が得られた一例である。

〔症例2〕 50代男性。目の下から頬にかけてのたるみ(ゴルゴ線領域)と二重あごが気になるとのことで来院。まず目下~頬上部にかけてスレッドリフト(吸収糸:PDOコグ付き糸)を片側4本挿入した。施術直後に頬の位置がやや上がり、ゴルゴ線が浅くなった。糸によるリフトは即時効果が得られ、翌日から職場復帰可能であった。加えて2週間後、顎下の脂肪によるもたつきに対し脂肪溶解注射を実施。デオキシコール酸製剤を顎下皮下に広範囲に注射し、1ヶ月後にもう1回追加したところ、顎下の厚みが減って首との角度がシャープになった。最終評価では、顔全体がすっきり引き締まって見え、本人も「フェイスラインが明確になった」と満足した。男性は手術への抵抗が強いケースが多いが、本症例では糸と注射のみでリフトアップと部分やせを達成した。なお施術後一過性の違和感(糸の突っ張り)はあったが2週間で消失し、脂肪溶解後の腫れも軽度で済んでいる。

〔症例3〕 70代女性。全体的な顔のたるみが強く、特に頬から顎にかけて皮膚が垂れ下がっている。また目の上のくぼみと上眼瞼の皮膚垂れ下がりも認められる。患者は外科的フェイスリフトには消極的で、まず美容皮膚科的治療を試したいとの希望。まずポリ-L-乳酸(スカルプトラ)を顔全体(額・こめかみ・両頬・フェイスライン)に計4バイアル注入し、自己コラーゲン産生を促す治療を行った。3か月かけて徐々にハリが出て、顔全体のたるみがやや改善。次いで上眼瞼と前額部にボトックスを注射して眉毛の位置を上げ、額のシワも同時に治療した。その結果、上まぶたの被さりが軽減し、目元が開いた印象となった。さらに患者の希望でHIFU治療も追加実施。全顔HIFU後1~3か月でフェイスラインがさらに引き締まり、小じわも減った。劇的な変化とはいかないまでも、ご本人は「手術なしでこれだけ若返れば十分」と満足されている。本症例は重度たるみに対しマルチモーダル治療で改善を図ったケースであり、高齢患者にも比較的安全に施術できた点で示唆に富む。今後は半年毎のHIFUメンテナンスを継続し、必要に応じてフィラー追加なども計画している。

くすみ

病態生理(原因とメカニズム)

「くすみ」とは、肌の明るさや透明感が失われ、顔色がさえない状態を指す美容用語ですmediplus-orders.jp。医学的には明確な定義があるわけではありませんが、皮膚の色調不良や艶の欠如を総称する概念といえますmediplus-orders.jp。くすみ肌は実年齢以上に老けた印象を与え、また肌内部の不調(ターンオーバーの乱れや血行不良)が潜んでいるサインでもありますmediplus-orders.jpmediplus-orders.jp

くすみの原因は一つではなく、主に以下の要因が関与しますmediplus-orders.jpmediplus-orders.jp:

  • 角質肥厚・ターンオーバー不全: 肌の新陳代謝(ターンオーバー)が加齢や紫外線、乾燥などで遅れると、本来剥がれ落ちるべき古い角質が肌表面に積み重なりますmediplus-orders.jp。厚くなった角質層は光を乱反射させるため肌がくすんで見えます。また角質肥厚に伴い肌表面がゴワつき、キメが乱れることで艶が失われますmediplus-orders.jp。**灰色がかったくすみ(灰ぐすみ)**はこの角質肥厚や乾燥による微小炎症の繰り返しで真皮にメラニンが落ち込むことでも生じますbe-story.jpbe-story.jp。実際、ターンオーバー不全の肌ではくすみと同時にザラつき・肌荒れも起きやすいですmediplus-orders.jp
  • 乾燥: 肌の水分・油分バランスが崩れ乾燥すると、肌表面がカサついて光沢が無くなりますmediplus-orders.jp。乾燥によりキメが粗く乱れると皮膚表面での光の反射が均一でなくなり、透明感が低下してどんよりした印象になりますmediplus-orders.jp。乾燥ぐすみの肌は触ると粉っぽく、微細なシワが多発することも特徴ですwakaba-keisei.jp。加齢に伴う皮脂分泌低下や更年期のエストロゲン低下で生じる肌乾燥は、中高年女性のくすみの一因となりますbe-story.jp
  • メラニン蓄積: 紫外線や摩擦などの刺激でメラノサイトが活性化しメラニン色素が過剰に生成されると、肌全体が薄く茶色っぽくくすむことがありますmediplus-orders.jp。シミになるほど局所に濃くはなくとも、肌の広い範囲でメラニンが散在・蓄積すると茶ぐすみと呼ばれる状態になりますbe-story.jp。特に慢性的な微弱炎症(乾燥や摩擦による炎症)があるとメラニンが分解・排出されにくくなり、肌内部に蓄積して茶ぐすみを生じますbe-story.jp。またメラニンが表皮から真皮へ落ち込むと、肌がグレーがかった暗いトーンになることもありますbe-story.jp。茶ぐすみは紫外線対策の不足や不適切なスキンケア(擦りすぎなど)で起こりやすく、中年以降の肌ではシミと一緒に現れることも多いですbe-story.jp
  • 糖化: 黄ぐすみとも呼ばれる、肌が黄ばみを帯びるタイプのくすみですbe-story.jpbe-story.jp。上述の糖化現象によりコラーゲンが褐色化すると肌全体が黄みを帯びて見えます。これは頬だけでなく体全体(腕や脚の皮膚)にも現れることが特徴ですbe-story.jp。糖化により肌のハリ・弾力も低下するため黄ぐすみの肌はたるみも伴いがちですbe-story.jp。甘い物の過剰摂取や喫煙で体内にAGEsが蓄積すると起こりやすく、「肌がなんとなく黄黒い」といった場合は糖化が疑われますbe-story.jp。実際、糖化した肌は弾力低下・深いシワ・黄褐色調が同時に見られdermastart.com、これが自然老化や日焼けと混同され見過ごされやすいと指摘されていますdermastart.com
  • 血行不良: 血液循環が悪いと皮膚の赤み成分が不足し、顔色が青白くくすんで見えますmediplus-orders.jp。貧血や冷え性、運動不足、ストレスなどで末梢血流が低下すると生じる青ぐすみです。血中のヘモグロビンは酸素が十分だと鮮紅色ですが、うっ滞して酸素が乏しくなると暗い色になるため、肌がどんより青黒く見えてしまいますmediplus-orders.jp。特に目の下や頬の毛細血管が青黒く透けて見える場合、血行不良が原因の可能性が高いですmediplus-orders.jp。加齢で毛細血管が減少・拡張していることも一因となります。またリンパの流れ停滞によるむくみも血行不良を助長し、肌の透明感を損ないます。

以上のように、くすみには**「灰(グレー)・茶・黄・青」といった色調の違いがあり、原因も角質・乾燥・メラニン・糖化・血行**と多岐にわたりますbe-story.jpmediplus-orders.jp。40代以降の女性ではホルモンバランスの乱れや代謝低下によりこれら複数の要因が重なり、複合的なくすみが現れやすいことに注意が必要ですbe-story.jp

診断(視診・分析・分類)

くすみは他の疾患とは異なり数値化しにくい概念ですが、診断にあたっては視覚的評価と必要に応じて機器による色素計測を行います。視診では顔全体のトーンが以前より暗く感じられるか、艶が失われていないか、くま(青ぐすみ)や黄ばみ(黄ぐすみ)、くすみのムラ(茶ぐすみ)がないかを観察しますmediplus-orders.jpmediplus-orders.jp。患者本人から「肌がくすんで化粧映えしない」「夕方になると顔色が悪い」といった訴えがあれば、その内容から原因を推測します。例えば「肌が茶色っぽい」と言えばメラニン由来の茶ぐすみ、「顔色が悪い/青白い」なら血行不良、「全体に黄ばんでいる」は糖化の可能性があります。

問診や生活背景の聴取も重要です。紫外線対策状況、スキンケアの習慣(ピーリングの有無、こする癖の有無)、食習慣(甘い物や炭水化物摂取量)、喫煙歴、睡眠や運動の習慣などを尋ね、くすみ原因の手がかりとします。例えば甘党で喫煙者なら黄ぐすみリスクが高く、日焼け止め未使用で夏にゴルフ三昧という方なら茶ぐすみ・シミが疑われます。

皮膚計測器としては、メラニン指数・紅斑指数を測定できるメーラーメーター(Mexameter)や、肌の明度・色調を客観評価できる分光測色計があります。これらで頬などのLab値(明度・赤み・黄み)を測定し、標準値や治療前後を比較することが可能です。たとえばL(明度)の値が低下していれば「暗い肌」、b*値が上昇していれば「黄みが強い」ことを示します。またVISIAなどの顔解析システムでは、肌の均一トーンシミの面積などを算出し、「くすみスコア」として表示する機能もあります。さらにウッド灯検査(長波長紫外線を当てる検査)では、メラニンの分布状態を把握できます。均一な薄茶色ならびに微細な色ムラが全顔に広がる場合はメラニンくすみ(隠れジミ)の存在が示唆されます。

くすみの分類について、明確な国際基準はありませんが、前述のように原因別に「茶ぐすみ・黄ぐすみ・灰ぐすみ・青ぐすみ」といった区別が臨床的には有用ですbe-story.jp。美容皮膚科の文脈では、銀座ケイスキンクリニックの慶田医師らが提唱する3大くすみ(黄ぐすみ=糖化、茶ぐすみ=メラニン、グレーぐすみ=角質肥厚・血行不良)という分類が知られていますbe-story.jp。診察時にはこれにならって、おおよその色味や肌状態から原因の見当をつけることになります。例えば「肌がゴワついてくすんでいるなら角質ケアが必要」「黄みが強いなら生活習慣の聞き取りをする」など、分類に基づいてアプローチを決めます。

総じて、くすみ診断では肌全体の印象評価原因分析がポイントになります。他の皮膚疾患(シミ、貧血、肝斑など)との鑑別も重要です。医師は臨床経験に基づき、くすみタイプを見極めて患者に説明し、治療計画を立案します。

非外科的治療法

くすみ治療の基本方針は、原因に応じたスキンケア・施術で肌の明るさと艶を取り戻すことです。外科的手段は不要で、多くは外用薬・化粧品によるケアエネルギーデバイス治療ライフスタイル改善の組み合わせで対応します。

  • スキンケア・外用療法: くすみ肌への第一の対策は角質ケアと保湿です。角質肥厚が疑われる場合、ピーリング(AHAや乳酸など)石鹸やローションで古い角質を穏やかに除去しターンオーバーを正常化します。定期的な軽度ピーリングは肌のごわつきを改善し、透明感を高めますmediplus-orders.jp。また保湿は全てのタイプのくすみに有効です。十分に潤った肌は光を均一に反射するため、それだけで明るく見えます。セラミドやNMFを補給する保湿剤を使い、さらに血行促進成分(ビタミンEやセンシンレンエキス等)配合の美容液でマッサージを併用すると血色も改善しますmediplus-orders.jp美白有効成分もメラニンくすみには欠かせません。ハイドロキノン、ビタミンC誘導体、アルブチン、コウジ酸、トラネキサム酸などの外用剤を継続使用することで、肌全体のメラニン量を減らしトーンアップが期待できますmediplus-orders.jp。特にトラネキサム酸は近年メラスマ(肝斑)治療で経口内服も行われる成分ですが、外用や導入でも色素沈着抑制効果がありますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。黄ぐすみ対策としては抗糖化コスメ(カルノシンやアルギン酸など糖化抑制成分を含むもの)が市販されていますが、効果はマイルドです。レチノールも緩やかなターンオーバー促進とコラーゲン生成でくすみと小じわを同時に改善するため有用です。ナイアシンアミドは抗炎症・メラニン排出促進作用から、くすみ全般にプラスの効果があります。これらを組み合わせたスキンケアルーティンを指導し、肌質を底上げしていきます。
  • エネルギーデバイス治療: レーザーや光治療は、シミ・色ムラを除去し肌のトーンを均一化するのに効果的です。代表的なのはIPL(Intense Pulsed Light)治療で、フォトフェイシャルとも呼ばれます。IPLは広帯域の光を照射し、シミの原因であるメラニンや赤ら顔の原因であるヘモグロビンに反応してそれらを減少させます。全顔にIPLを数回行うことで、薄いシミ・そばかすが減り、毛細血管拡張も改善して肌全体がワントーン明るくなります。ダウンタイムもほぼなくくすみ治療として人気です。レーザートーニングもメラニンくすみに有効です。低出力のQスイッチヤグレーザーを顔全体に照射するレーザートーニング法は、肝斑治療として知られますが、広い範囲の薄い色素沈着を徐々に減らす目的でも用いられます。数週間おきに複数回照射することで、くすみの元となる隠れジミが減り、透明感が出てきます。ピコ秒レーザーによるトーニングはより肌への負担が少なく、難治性の色素沈着にも効果を示す報告があります。これらの光・レーザー治療はメラニンや血行不良由来のくすみに特に効果的です。RFマイクロニードルフラクショナルレーザーもくすみ改善に貢献します。肌のキメを整え毛穴を縮小させることで光反射が良くなり、艶がでるからですja.wikipedia.org。またRFやレーザーの熱で微小な血流が増えることもプラスになります。LED光治療(赤色LEDなど)も細胞活性化で肌の明るさを増す補助療法として用いられます。さらにケミカルピーリング(グリコール酸等)+イオン導入(高濃度ビタミンCやプラセンタの導入)は、美容皮膚科で行うスタンダードなくすみ治療です。ピーリングで角質を一掃し、その直後にビタミンCなどを浸透させると肌がぱっと明るくなり、多くの患者が即日効果を実感します。これを月1回程度継続すれば、慢性的なくすみ肌も着実に改善します。
  • 生活習慣の改善: ライフスタイルの見直しはくすみ改善・予防に不可欠です。まず十分な睡眠は肌の新陳代謝を正常化し、朝の顔色を良くします。寝不足では血行不良とターンオーバー遅延が起こりやすいので、睡眠は美容の基本です。食事では糖分の過剰摂取を控え、抗糖化・抗酸化を意識した食生活にすることで黄ぐすみを防げますbe-story.jp。野菜や果物、良質なたんぱく質をバランスよく摂ることが美肌につながります。適度な運動も非常に効果的で、全身の血流が良くなると顔のくすみも改善しますmediplus-orders.jp。有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング)を週に数回行うだけでも、肌の血色が上がり老廃物排出が促されますmediplus-orders.jp入浴もシャワーで済まさず湯船に浸かって汗をかく習慣をつけると良いでしょうmediplus-orders.jp。湯上がりは毛細血管の循環が良くなり肌がワントーン明るく見えます。禁煙は言うまでもなく重要で、喫煙は肌の黄ぐすみ・シワ・毛穴拡大などあらゆる老化を促進します。スキンケア習慣も見直します。洗顔時にゴシゴシ擦る癖がある人は摩擦黒ずみ(茶ぐすみ)の原因になるため、優しく洗うよう指導しますjp.rohto.com。強い力でマッサージすることも色素沈着を引き起こすため注意です。紫外線対策もくすみ予防には必須で、日焼け止めや日傘で日々のUVダメージを減らすことで、将来のシミ・くすみ発生を大幅に抑制できますmediplus-orders.jp。さらにストレスケアも重要です。ストレスは血管収縮やホルモンバランス悪化を招き、肌荒れやくすみの一因となります。適度なリラックス法を持つことが肌の透明感維持につながります。

以上のように、くすみ治療は総合的な美容ケアと言えます。スキンケア・施術・生活習慣の三位一体でアプローチすることで、肌は徐々に明るさと透明感を取り戻します。くすみは放置するとシミやシワ、たるみなど他のトラブルにも連鎖しかねないためmediplus-orders.jp、「最近肌がくすむ」と感じたら早めのケアが肝要です。

最新技術・研究動向

くすみに関する研究・技術開発も近年進んでいます。特に美白領域では新成分・新製剤の開発が活発です。例えば近年注目された新規美白成分にシステアミンがあります。これは強力なメラニン生成抑制作用を持ち、難治性の肝斑や色素沈着にも効果を示すクリーム(Cyspera®など)として欧米で登場し、日本でも話題となりました。またトラネキサム酸は従来内服が主流でしたが、高濃度の外用ジェルや導入用製剤も開発され、肝斑・くすみ治療に使いやすい形で提供されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.govRNA干渉技術を応用しチロシナーゼ産生を抑えるようなリポソーム製剤の研究もあります。

ドラッグデリバリーシステムの進歩も見逃せません。美白剤や抗酸化剤を肌深部に届けるため、リポソーム化やナノカプセル化が進み、従来届きにくかった真皮上層にも浸透する処方が登場しています。例えばビタミンCを安定化したナノカプセルに封入した美容液は、より高い透皮吸収と持続放出でくすみ改善効果を高めています。さらにマイクロニードルパッチによる有効成分導入も研究されています。例えばプラセンタエキスやナイアシンを含む極小ニードルの貼付パッチで、夜貼って寝るだけで朝肌が明るくなるといった製品化も検討されています。

エネルギーデバイスの面では、ピコ秒レーザーの普及により低リスクでの全顔トーニングが可能となり、東アジアを中心に広がっています。ピコ秒レーザーはメラニン粒子をさらに微細化して除去できるため、従来難しかった薄い散在性色素にも効果を示します。また大口径スポットIPLなど、一度の照射で顔全体を均一に治療できる機器も登場し、施術時間の短縮と均一効果が期待できます。LED治療では、特定波長組み合わせで色素代謝を促進するプロトコルの開発が進み、家庭用美顔器にも応用されています。

体の内側からのアプローチも注目されています。例えば点滴療法では高濃度ビタミンC点滴グルタチオン点滴が、美白・くすみ抜き目的で利用されています。エビデンスはまだ限定的ですが、抗酸化作用で肌が明るくなると愛好者は増えています。また経口サプリメントでは、シミ予防成分のハスの種由来成分やL-システイン・ビタミンC複合剤などが市販され、皮膚科でも処方されます。さらに「飲む日焼け止め」として知られるポリポディウム由来エキス(ヘリオケア)も肌の明るさ維持に寄与するとされ、美容内科的アプローチとして定着しつつあります。

研究的トピックとしては、肌の明度・色調を決める要因に関するものがあります。最近の研究で、角層の光透過性が肌の透明感に強く影響することが示され、角層細胞間脂質を整えることで肌内部からの乱反射を減らし透明感を高める技術が模索されています。また、顔の微細な血流が色ムラやくすみに関与するとの報告もあり、カプサイシン系成分で毛細血管の血流を増やす試みなどもあります。加えて、糖化測定デバイスの小型化も進み、皮膚のAGEs蓄積度を簡便に測れる機器が開発中です。これが実用化されれば、黄ぐすみの客観評価や抗糖化治療の効果判定が可能になるでしょう。

このように、くすみ対策の分野でも新成分の開発先端技術の応用が着実に進んでいます。ただし肌のくすみは生活習慣とも大きく関わるため、最先端治療を取り入れつつも基本的なスキンケアと健康管理が重要である点は変わりませんmediplus-orders.jp。国内外の最新研究を踏まえつつ、患者一人ひとりの原因に合わせた包括的ケアを提供していくことが美容皮膚科医の腕の見せ所といえるでしょう。

臨床例・症例紹介

〔症例1〕 35歳女性。「最近顔色がさえず、ファンデーションを塗ってもくすみが隠せない」との悩み。診察すると、全体に肌がくすんだ黄色味を帯び、目の下に軽いクマも見られた。生活背景を聞くと仕事のストレスで睡眠不足が続き、甘い物とお酒(カクテル類)を毎晩摂取しているとのこと。これらから糖化と血行不良の関与が疑われた。まず生活習慣改善として睡眠時間の確保と食事指導(糖質・アルコール制限、抗酸化食品摂取)を行ったbe-story.jpmediplus-orders.jp。併せてスキンケアでは朝晩のビタミンC誘導体美容液と夜のレチノールクリームを処方し、ターンオーバー促進と美白を図った。さらにIPL治療を3週間おきに計3回施行。施術後一時的にシミ部分が濃くなる反応(マイクロクラスト)が出たが順調に剥離し、3回終了時点で顔全体の明るさが明らかに増した(肌解析で明度L*値が改善)。本人も「ファンデーションのトーンを一段明るく変えた」と喜んだ。クマに対しては目の下への低出力レーザートーニングも追加し、青みが軽減した。総合的ケアにより黄ぐすみと青ぐすみを同時に改善できたケースである。

〔症例2〕 48歳女性。長年の薄い肝斑と全顔の茶ぐすみを気にして受診。以前ハイドロキノンクリームを使用したが刺激で赤くなり中断した経緯がある。現在も頬に薄茶色の肝斑様の色素沈着と、肌全体にムラが見られる。ダウンタイム少なく治したいとの希望より、ピコ秒レーザーによるトーニングを選択。1064nmピコレーザーを低フルエンスで顔全体に照射すること10回(週1回ペース)。徐々に肝斑が薄まり、施術後の写真では素肌の色ムラが減っているのが確認できた。患者自身も「ファンデーション無しでも顔色が明るくなった」と満足した。また肌質改善目的でRFマイクロニードルも2回併用したところ、毛穴が引き締まり艶が出た。刺激に弱い肌であったが大きな副作用なく治療できている。この症例では最新のピコレーザー技術で肝斑によるくすみを安全に治療できた。再発予防にトラネキサム酸内服と日焼け止め指導も継続している。

〔症例3〕 45歳男性。喫煙歴20年以上。肌の黄ぐすみと額・頬のくすみジミを指摘され来院。診ると顔全体が黄土色がかり、ところどころ薄い茶色いシミ状斑点が散在していた。まず禁煙外来を紹介し禁煙開始。同時に肝機能検査なども行ったが異常なし。美容施術としてヤグレーザー(532nm)による全顔トーニングを5回施行し、散在性の色素沈着を除去した。さらに高濃度ビタミンC点滴を月2回行い、体内から抗酸化ケアを実施。3か月後、かなり顔色が改善した。黄ぐすみは完全には取れないものの、肌がワントーン明るくなりシミも減ったことで別人のように若返った。患者も「禁煙したら肌が変わった」と実感し禁煙継続に意欲的である。男性の場合ケア不足でくすみが進行しているケースが多いが、本症例では医療介入により生活習慣改善と美容施術の相乗効果が得られた。今後も継続的なスキンケア(ビタミンC外用・UVブロック)を指導し、経過を追っている。

〔症例4〕 50代女性。更年期以降、肌のくすみと乾燥が酷く化粧ノリが悪いと相談。血色も悪く、人から「体調悪いの?」と聞かれることが増えたという。皮膚所見では艶がなくグレーがかったくすみと細かいちりめんジワが目立った。年齢的にエストロゲン低下による皮膚菲薄化・血行不良が疑われた。対応としてホルモン補充療法(HRT)を婦人科と連携して開始し、エストロゲンクリームも処方。さらにプラセンタ注射(人胎盤エキス)を週1回、計8週間施行。プラセンタには線維芽細胞増殖や血行促進作用があり、美肌目的で保険適用(更年期症状)範囲内で実施した。併行して赤色LED光を顔面に照射するケアもクリニックで行った。2か月後、肌の乾燥感がかなり改善し、くすみも軽減。患者は「ファンデーションがしっとり乗るようになった」と喜んだ。血色も改善し、くすみのせいで具合悪そうに見られることも無くなったという。この症例では**内科的アプローチ(ホルモン調整・注射)物理的アプローチ(LED)**で難治性のくすみを改善できた。更年期の肌は複合要因でくすむため、多面的な対応が有効であることを示唆する。今後も定期的なプラセンタや美容点滴を取り入れつつ、スキンケアで維持管理していく方針である。

以上、シワ・たるみ・くすみについて病態から最新治療まで詳述しました。美容皮膚科領域では常に新しい知見と技術が登場していますが、基本となる皮膚生理の理解と患者ごとの丁寧な診療が最も重要です。教科書的知識と最先端情報を併せ持ち、適切なエビデンスに基づいた美容治療を提供していきましょう。

引用文献: 国内外の皮膚科学・美容医学文献より抜粋pubmed.ncbi.nlm.nih.govwakaba-keisei.jpmy.clevelandclinic.orgdermastart.comja.wikipedia.orgbe-story.jpmediplus-orders.jpmediplus-orders.jp他。各節中に示した【リンク番号†該当行】を参照してください。

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