血管腫および血管異常
定義・分類
血管腫および血管異常(vascular anomalies)とは、体内の血管(脈管)系に生じる先天性あるいは後天性の病変の総称であり、大きく**「血管性腫瘍(血管腫)」と「血管奇形」に分類されますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。血管性腫瘍は血管内皮細胞の増殖性変化を伴う腫瘍性病変で、代表的なものに乳児血管腫(いちご状血管腫)や先天性血管腫**、房状血管腫(tufted angioma)などの良性腫瘍がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方、血管奇形は内皮細胞の増殖を伴わず、血管の構造的異常による奇形(形成異常)ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。血管奇形は流れの遅い毛細血管奇形・静脈奇形・リンパ管奇形(以上は低流速病変)、および流れの速い動静脈奇形(高流速病変)に分類されますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。さらに二つ以上の奇形が混在する混合型奇形、大血管の起始や走行の異常(例:先天性大静脈の奇形)、他の過誤腫や症候群に伴うもの(例:Klippel–Trenaunay症候群、Sturge–Weber症候群)なども分類上考慮されますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
命名の注意: かつて日常的に使われていた「単純性血管腫」や「海綿状血管腫」といった用語は、現行の国際分類(ISSVA分類)では推奨されませんpmc.ncbi.nlm.nih.gov。例えば単純性血管腫は現在毛細血管奇形と呼ばれ、海綿状血管腫は実態としては静脈奇形(深部静脈の拡張病変)に相当しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。したがって、診断や治療の場では最新の分類に基づく正確な用語の使用が重要ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。なお2024年にはISSVA分類の最新改訂版(2025年版)が公開されており、従来の用語の見直しや新たな疾患項目の追加、遺伝学的知見の反映が行われていますcure-vas.jp。これは医療者間の共通理解を促進し、患者への適切な対応に資する国際標準となっていますcure-vas.jp。
各疾患の病態生理・原因・発症メカニズム・遺伝的要因
血管性腫瘍(血管腫)
【血管性腫瘍】は血管内皮の増殖性変化による腫瘍です。出生後に発生・増殖する乳児血管腫と、出生時にすでに存在する先天性血管腫が代表的です。この他にも稀な血管内皮腫瘍(Kaposiform血管内皮腫や房状血管腫など)がありますが、以下では代表的な乳児血管腫と先天性血管腫について解説します。
- 乳児血管腫(いちご状血管腫): 乳児期に最も頻繁にみられる良性血管腫瘍で、新生児の約1%前後に発生しますcure-vas.jp。出生時は病変が認められないかごくわずかですが、生後2〜6週頃から赤い斑として出現し、数ヶ月の間に急速に増殖して隆起性の赤色腫瘤となります(増殖期)cure-vas.jppmc.ncbi.nlm.nih.gov。増殖期を経て生後9〜12か月以降は徐々に縮小に転じ(退縮期)、多くは幼児期後半から学童期までに自然退縮しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。病理学的には内皮細胞の肥厚した毛細血管が充実性に増殖する所見を示し、乳児血管腫に特徴的なマーカーとして**GLUT1(グルコーストランスポーター1)**の陽性所見がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。GLUT1陽性は胎盤由来の血管内皮に共通する特徴であり、乳児血管腫の病因には胎盤や妊娠に関連した因子が関与している可能性が示唆されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。実際、乳児血管腫の血管内皮は正常皮膚より胎盤の微小血管内皮に遺伝子発現が類似するとの報告があり、胎盤組織の迷入や低酸素ストレスなどが発症トリガーとなる説がありますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。明確な遺伝子変異は特定されていませんが、一部でVEGFR2やTEM8といった分子の経路異常が示唆されており、腫瘍内皮細胞がモノクローナルに増殖することも確認されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。乳児血管腫は通常単発ですが、多発例もあり、肝臓など皮膚外臓器に多発するケース(肝血管腫合併症例)も存在しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。巨大な顔面病変ではPHACE症候群(Posterior fossa奇形、血管腫、動脈異常、心奇形・大動脈縮窄、眼異常、胸骨窟形成不全)を合併することもあるため注意が必要ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
表在型乳児血管腫(いちご状血管腫)の例。鮮紅色の扁平〜やや隆起した腫瘤を呈し、出生後まもなく出現して急速に拡大したcure-vas.jp。このタイプは増殖期を経て幼児期に自然退縮するcure-vas.jppmc.ncbi.nlm.nih.gov。
- 先天性血管腫: 先天性血管腫(congenital hemangioma)は出生時にすでに完成した状態で存在する血管腫瘍で、頻度は乳児血管腫よりもはるかに稀ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。臨床経過に応じて3亜型に分類され、出生後早期に急速退縮するものをRICH(rapidly involuting congenital hemangioma)、退縮せず持続するものをNICH(non-involuting congenital hemangioma)、両者の中間の経過をとるものを**PICH(partially involuting congenital hemangioma)**と呼びますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。病理学的には乳児血管腫と類似しますが、GLUT1陰性である点で明確に区別されますpmc.ncbi.nlm.nih.gov(GLUT1陽性の血管腫は乳児血管腫に限られますpmc.ncbi.nlm.nih.gov)。画像上は乳児血管腫と概ね似ていますが、石灰化を伴うことがあり(RICHの約37%、NICHの17%で石灰化を認めるとの報告)pmc.ncbi.nlm.nih.gov、この所見も乳児血管腫との鑑別に有用です。PICHは近年報告された概念で、出生時には存在し速やかにある程度縮小するものの完全には消退せず一部残存する中間型ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。先天性血管腫も基本的には良性で、多くは合併症を起こしませんが、まれに心不全や高出量心不全の原因となる大きな病変も報告されています。
※その他の血管性腫瘍として、**カポジ肉腫様血管内皮腫(Kaposiform Hemangioendothelioma: KHE)や房状血管腫(TA)**などがあります。KHE/TAは乳幼児期に発生するまれな境界悪性の腫瘍で、カサバッハ・メリット現象(Kasabach-Merritt現象:腫瘍内での血小板消費による重篤な血小板減少・凝固障害)を引き起こすことがあり注意が必要ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。KHEやTAの病因にはリンパ管内皮増殖や特定遺伝子変異(例:TAではGNA14変異との関連報告あり)が示唆されていますが詳細は省きます。
血管奇形
【血管奇形】は構造的な血管の奇形(異常拡張や異常吻合)による病変で、内皮細胞の過剰増殖はなく先天的に形成されます(ただし症状の顕在化は乳幼児期〜成人まで様々です)。発生メカニズムとしては、胚発生期の血管新生・形成過程における遺伝子変異(体細胞モザイク変異)が特定の血管細胞クローンに生じ、それが局所的な構造異常血管網を形成すると考えられていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。近年の分子遺伝学研究により、多くの血管奇形で原因遺伝子の同定が進みました。例えば高流速病変の多くはRAS/MEK/ERK経路の活性化変異(KRAS, BRAF, MAP2K1など)、低流速病変の多くはPI3K/Akt/mTOR経路の活性化変異(PIK3CA, TEK[Tie2], PTENなど)が関与することが明らかになっていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。以下、主な血管奇形サブタイプごとの病態特徴を述べます。
- 毛細血管奇形(単純性血管腫): 毛細血管奇形は皮膚の毛細血管が拡張した平坦な紅斑病変で、出生時から存在しますcure-vas.jp。真皮浅層〜中層の毛細血管が異常拡張する構造異常であり、腫瘍のような隆起を伴わないのが特徴ですcure-vas.jp。典型例はポートワイン母斑(port-wine stain)と呼ばれる鮮紅色〜暗赤色の平坦な斑で、顔面や四肢に好発し、生涯消退しません(むしろ加齢とともに色調が濃くなり、肥厚や結節形成を生じることがあります)。一方、サーモンパッチ(額部正中の薄紅斑、後頸部のウンナ母斑など)は同じ毛細血管拡張でも乳幼児期に自然消退する軽症型であり、鑑別が必要ですcure-vas.jp。病因として、近年GNAQ遺伝子の体細胞変異(R183Qなど)が毛細血管奇形で見出されましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。GNAQは血管内皮の血流感知に関与するGタンパクであり、その変異により内皮細胞が血流の剪断応力を正しく感知できず血管拡張シグナルが生じる可能性がありますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。さらに変異型GNAQ/GNA11はPI3K/Akt経路を活性化し、静脈奇形やリンパ管奇形と共通するメカニズムで血管拡張を引き起こす可能性も指摘されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。臨床的には、顔面の広範な毛細血管奇形はSturge–Weber症候群(三叉神経領域の母斑+脳軟膜血管奇形によるてんかん発作など)を合併することがあり、その原因も同じGNAQ変異によると考えられますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。毛細血管奇形それ自体は血流は遅く大きな合併症は少ないものの、見た目の問題からQOLに影響し得る病変です。
毛細血管奇形(ポートワイン母斑)の模式図。表皮~真皮にかけて毛細血管がびまん性に拡張しており、平坦な紅斑として皮膚表面に現れるcure-vas.jp。生下時から存在し、時間経過とともに色調や肥厚が増すことがある。
- 静脈奇形(静脈性血管奇形): 静脈奇形は主に静脈系の先天異常で、皮下~筋肉内の異常拡張した静脈腔からなる軟らかい腫瘤として現れますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。皮膚表面は正常~青紫色で、圧迫すると縮小し、体位やValsalva操作で拡張する可撓性のあるしこりが典型的です。静脈奇形は海綿状血管腫とも呼ばれてきましたが、実態は腫瘍ではなく構造奇形であり、組織学的には内皮細胞の増殖なく異常に拡張した静脈腔が散在しますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。多くは孤発性の体細胞変異によりますが、一部家族性(AD遺伝)のものもあり、その場合はTEK遺伝子(Tie2受容体チロシンキナーゼ)の生殖細胞変異が見出されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。しかし生殖細胞変異だけでは全身の静脈が奇形になるはずなのに局所病変に留まる理由が不明でしたが、後に奇形部位の組織でのみ二次的な体細胞変異(second-hit)としてTEK遺伝子の別の変異や下流分子のPIK3CA変異が検出され、局所に限局する理由の一端が解明されましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。すなわちTie2経路の活性化と、それによる異常な血管平滑筋の配置や内皮の老化現象などが静脈の嚢状拡張を導くと考えられていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。静脈奇形は単純型脈管奇形としては最多で、四肢・体幹・顔面のほか粘膜や内臓にも生じ得ます。臨床的には疼痛や腫脹を来たし、大きな病変では凝血傾向やDIC様の凝固障害を伴うこともあります(局所での血流鬱滞により静脈石形成や慢性DIC状態となる)。遺伝子学的には上述のTie2/PI3K経路の変異(PIK3CA変異はCLOVES症候群など過成長症候群の原因としても知られる)が多くの症例で認められますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
- リンパ管奇形(リンパ管腫): リンパ管奇形はリンパ管の先天的異常拡張・嚢胞化により、皮下や深部にリンパ液を含む嚢胞状の病変を形成する疾患です。先天性リンパ管異形成とも呼ばれ、生後早期から小児期に発見されることが多く、頭頸部や腋窩に好発します。大きな嚢胞が少数存在する大嚢胞型(マクロ嚢胞型)と、小嚢胞が多数集簇する小嚢胞型(ミクロ嚢胞型)に大別されますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。リンパ管奇形の分子機序として、多くの例でPIK3CA遺伝子の活性化変異(E542KやH1047Rなど)がリンパ管内皮細胞に認められますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これは静脈奇形と共通するPI3K/Akt/mTOR経路の過剰活性化であり、変異によりVEGF-C/VEGFR3などリンパ新生分子の発現異常や内皮細胞の増殖・遊走亢進が誘導され、異常なリンパ管の拡張・嚢胞形成をもたらすと考えられますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。発生時期によって病変表現型が異なる可能性も指摘され、マウスモデルでは胚発生初期にPIK3CAを活性化すると大嚢胞主体の病変が、後期に活性化すると小嚢胞主体の病変が生じるとの報告がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。臨床的には、マクロ嚢胞型リンパ管奇形はかつて嚢胞性ヒグローマ(cystic hygroma)とも呼ばれた頸部などの大型嚢胞腫瘤で、圧迫症状を来す場合があります。ミクロ嚢胞型は皮膚・粘膜に小水疱状の病変(リンパ管腫症やリンパ管腫状血管腫症として知られる)を呈し、出血や滲出液を反復することがあります。いずれも低流速(実質的には無血流)の病変ですが、感染(蜂窩織炎)や出血による増大を繰り返し、慢性的に患児・患者を悩ませることがあります。遺伝的背景は散発性のPIK3CA変異が多いものの、まれにPTEN変異症候群やその他の遺伝子異常に伴う例もあります。
- 動静脈奇形(動静脈瘻含む): 動静脈奇形(AVM)は細動脈と細静脈が毛細血管床を介さず直接交通する先天的シャント病変で、高速の動脈血が静脈系に流入するため局所の血行動態を大きく乱しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。出生時から存在しますが、小児期は目立たず思春期以降に増悪・拡大してくる例も多く、高流量による拍動性の腫瘤、皮膚の紅潮(温熱感を伴う)、進行すると潰瘍や出血、高心拍出性心不全に至ることもありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。臨床的重症度はSchobinger分類でI(安静紅斑)〜IV(心不全)に段階づけされますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。遺伝子学的には、近年多くの孤発性AVMでRAS-MAPK経路の体細胞変異(KRASのG12V/D変異、BRAF V600E変異、MAP2K1変異など)が発見されましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これらの変異により内皮細胞でMEK/ERKシグナルが亢進し、細胞増殖は伴わないものの血管新生や分化異常が引き起こされ、結果として異常吻合が形成されると考えられますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一部の遺伝性症候群では生殖細胞変異によりAVMを呈するものもあり、有名なものにRASA1遺伝子変異によるCM-AVM症候群(毛細血管奇形と多発AVMの合併)、SMAD4遺伝子変異による遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT;肺や肝AVM合併)などがあります。動静脈瘻(AVF)はAVMから実質的なnidus(錯綜血管塊)を欠いたものを指し、外傷後や医原性に獲得されるものもありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。AVM/AVFは高流速病変で、触診上のスリル(振動)や聴診上のブルー(雑音)を呈する点で他の血管異常と異なります。また流入動脈の拡張と流出静脈の動脈化(静脈血の動脈様高速化)がみられ、これはカラードプラでの静脈の動脈化波形として視覚化できますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。AVMは進行性で自然退縮しないため、治療介入しない限り症状は悪化する傾向があります。
以上のように血管奇形はそれぞれ病態生理の背景となる遺伝子経路が解明されつつあり、これらの知見は近年の分子標的治療の開発にも直結しています(詳細は後述)。
診断方法
診断の流れ: 血管腫・血管奇形の診断では病歴と視診(身体診察)が何より重要ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。まず、病変の出現時期(出生時からあるか、生後に出現したか)、増大や退縮の経過は血管性腫瘍と血管奇形の鑑別に直結しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。乳児血管腫であれば生後数週間で出現・増大し、その後退縮傾向を示しますが、奇形の場合は出生時から存在しゆっくり拡大または一貫して存在しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。次に診察で視触診を行い、病変の色調(鮮紅色、暗赤色、青色調、皮膚色など)、形態(平坦or隆起性、有茎性か)、圧迫による圧縮性の有無、拍動の有無、温度差、聴診上の雑音の有無などを調べます。例えば毛細血管奇形なら平坦な紅斑で圧しても色が消退せず、静脈奇形なら青紫色の軟らかい膨隆で圧迫すると一時的に縮小し、動静脈奇形なら触知できる拍動と雑音、局所温感を伴う、など特徴があります。また乳児血管腫は境界明瞭な赤いイチゴ様の結節で、増殖期には触れると温かく感じることもありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
画像診断: 血管病変では非侵襲的な画像検査が診断・治療方針決定に極めて有用です。第一選択は超音波検査(エコー)+カラードプラで、被曝がなく乳幼児にも安全に施行できますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。超音波では病変の充実性/嚢胞性や内部エコーの有無を評価し、カラードプラで血流の有無・流速パターンを調べます。例えば高流速の動脈波形と動脈化した静脈波形を伴う病変はAVMを示唆し、軟部組織塊を伴い内部に動静脈両方の血流を示す場合は血管腫瘍(乳児血管腫など)を示唆しますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方で血流を欠く嚢胞構造が見られればリンパ管奇形の可能性が高いでしょう。超音波はリアルタイムで圧迫試験なども可能で、圧迫で虚脱するエコーフリースペースは静脈奇形の所見となります。MRI検査は病変の広がり評価に最適で、組織コントラストに優れ病変の構造解析(脂肪や筋との位置関係、骨浸潤の有無など)が可能ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。静脈奇形ではしばしばMRIのT2強調像で高信号の病変内に低信号の石灰化(静脈石)が点在する像が見られます。乳児血管腫では造影MRIで強い濃染とフローボイド(血管腔内の信号欠損)を多数呈することがあり、リンパ管奇形では多房性の嚢胞構造が造影で周囲から浮き上がるように描出されます。CT検査は石灰化の検出や骨病変の評価に有用ですが、被曝の問題から小児では必要最小限に留めます。**血管造影(カテーテル造影)**は主に治療計画を兼ねて行うことが多く、高流速病変(AVMや深部のAVF)では栄養血管のマッピングと塞栓術を行う目的で施行しますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。低流速の奇形では通常カテーテル造影の出番はありませんが、硬化療法の施行時に造影下で硬化剤を注入することがあります。
病理診断: 皮膚や軟部の血管病変の多くは画像・臨床で診断可能ですが、診断が不確かな場合や悪性を疑う場合には生検・病理組織検査を行いますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。組織学的には、血管腫瘍では増殖した内皮細胞による血管腔が多数みられ細胞密度が高く、血管奇形では内皮は扁平で増殖はなく、正常構造の延長上にある拡張・奇形血管がみられますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。中でも乳児血管腫のGLUT1免疫染色陽性は極めて特徴的で、他の血管腫瘍や奇形では陰性であるため鑑別に有用ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。乳児血管腫と紛らわしい**先天性血管腫(GLUT1陰性)**との鑑別にも、この免疫染色所見が決め手となりますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。また、悪性の血管肉腫などを疑う所見(急速な増大、潰瘍形成や痛み、硬結を伴う腫瘤など)がある場合は、迅速に生検して診断を確定することが大切です。なお、KHEや房状血管腫などの血小板減少を伴う腫瘍は、病理での確定診断が治療指針に直結するため専門施設での生検を検討します。
治療選択肢と適応・限界
治療の原則: 血管腫・血管奇形の治療は、その病変の種類(腫瘍か奇形か)、部位と範囲、患者の年齢、機能的・美容的問題の程度などを考慮して個別に計画します。基本的に血管性腫瘍である乳児血管腫の多くは自然退縮するため、小さく問題の少ない病変では経過観察が選択されますcure-vas.jp。一方で血管奇形は自然には消失しないため、症状があれば何らかの介入が必要です。ただし血管奇形も完全根治が難しい場合が多く、症状コントロールと合併症予防を目的に段階的・集学的治療が取られることが一般的です。以下に主な治療手段を挙げ、その適応と限界を解説します。
- レーザー治療: レーザー療法は主に皮膚に発現する血管系病変に対して適用されます。特に毛細血管奇形(ポートワイン母斑)に対する脈波(パルス)染料レーザー(PDL)治療は現在も標準治療でありpmc.ncbi.nlm.nih.goveurjmedres.biomedcentral.com、生後早期から繰り返し照射することで病変の赤みを薄くすることが期待できます(日本でも乳幼児期のポートワイン母斑に対するPDL治療は保険適用があります)。PDLは585〜595nmの黄色光で拡張毛細血管に選択的に吸収され、熱凝固させます。症例にもよりますが、多くは複数回(10回以上)の照射が必要で、完全に正常皮膚色に戻すことは難しくとも大半の症例で有意な色調軽減が得られますeurjmedres.biomedcentral.com。限界として、病変が濃い紫色に肥厚している成人患者では反応が悪くなり、また照射後数年〜十数年で再赤染(再び赤みが戻る)現象も報告されていますnejm.org。ポートワイン母斑以外では、浅在性の乳児血管腫にもPDL照射が行われることがあります。早期にPDLを当てることで増殖期の発赤を軽減し瘢痕化を予防する効果が期待されcure-vas.jp、特に表面的な部分の強い赤みや潰瘍を伴う部位に対して有効です。ただしPDLはあくまで表層の血管に作用するため、腫瘤そのものを縮小させる効果は乏しく、乳児血管腫全体の治療としては後述の薬物療法が優先されます。その他、Nd:YAGレーザー(1064nm)はより深部まで到達する波長で、静脈奇形や深い紅斑の一部に使われることがありますが、非選択的な熱作用が強く瘢痕リスクが高いため慎重に適用されます。また炭酸ガスレーザーは表在の小嚢胞性リンパ管奇形(皮膚浅層のリンパ管腫症の小水疱)を蒸散するのに用いられることがあります。レーザー治療全般の限界として、広範囲病変では全てをカバーしきれない、再発・再燃の可能性がある、皮膚タイプによっては色素沈着などの合併症が起こり得る、といった点があります。
- 外科的切除: 手術療法は病変を外科的に摘出・切除する治療です。適応は病変が局在しており、摘出による機能障害が少なく、かつ摘出しないと重大な問題がある場合です。例えば、気道を圧迫する巨大な舌・咽頭部の静脈奇形やリンパ管奇形、皮膚潰瘍や出血を繰り返す病変、あるいは美容的・機能的に深刻な変形をきたす部位の病変は手術が検討されます。乳児血管腫の場合、自然退縮後に残存した瘢痕やたるみ(例:鼻尖部の血管腫後の変形)に対して幼児期以降に形成外科的手術で修正することがあります。また静脈奇形でも限局したものは外科的に摘出可能で、筋肉内など痛みの原因となる塊を取ることで症状が改善します。動静脈奇形は手術的根治が極めて難しいことで知られます。AVMは病変辺縁に明確な境界がなく、正常組織内に不規則に広がるため完全切除が困難です。不完全な摘出は残存病変への血流増加を招き再発・悪化する可能性が高いため、AVMの外科治療は術前塞栓術と組み合わせて病変を縮小させたうえで、一塊として摘出できる場合に限り行われますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。いずれの場合も外科治療のリスクとして出血と術後瘢痕があります。血管奇形は血管が豊富なため術中出血量が多くなりやすく、術前のカテーテル塞栓や術中の血管遮断の工夫が必要です。また皮膚切開創は大なり小なり瘢痕を残すため、美容上それ自体が問題となることもあります(後述)。これらを踏まえ、外科治療は単独で行われるよりも他の治療と組み合わせる集学的アプローチの一部として行われることが多いです。
- 硬化療法(塞栓療法): 硬化療法は病変内に硬化剤(血管内皮を障害し血栓・線維化を引き起こす薬剤)を注入して血管内腔を閉塞させる治療です。主に静脈奇形とリンパ管奇形に対して用いられる第一選択的治療手段ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。静脈奇形に用いる代表的硬化剤はエタノール(95%アルコール)で、強力な硬化効果がありますが疼痛や組織壊死、神経障害など副作用も強いため、慎重に少量ずつ病変内に注入します。そのほかポリドカノールや硫酸四乙酢酸ナトリウム(STS)の泡沫硬化剤は比較的安全性が高く、浅在性・中等度の静脈奇形に用いられます。ビーオマイシンは抗がん剤ですが硬化療法にも用いられ、低濃度を病変内に留置注入することで有効性を示す報告が増えています。硬化療法は画像ガイド下(超音波または透視下)に行われ、病変ごとに適切な薬剤選択と用量調節が必要ですpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。リンパ管奇形に対しては、日本では特にピシバニール(OK-432)という細菌由来製剤が古くから用いられてきました。OK-432は嚢胞内に注入すると無菌性炎症を起こしリンパ管内皮の癒着閉塞を誘導します。マクロ嚢胞型リンパ管奇形では有効率が高く、複数回注入で病変が著明に縮小する例も多いです。ミクロ嚢胞型では硬化剤が行き渡りにくく効果不十分ですが、近年はBLE(Bleomycin)療法やドキシサイクリン製剤の局所注入なども試みられています。動静脈奇形に対する硬化療法(塞栓術)は、AVMの流入動脈を塞ぐ経動脈的塞栓術やnidus内にエタノールを注入する経静脈的硬化療法が行われます。AVM治療は血流が多岐にわたり再発もしやすいため、塞栓単独での治癒は難しいですが、症状軽減や外科手術前の縮小目的で重要な役割を果たしますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。硬化療法全般の限界として、1回では不十分で複数回の治療が必要なケースが多いこと、広範囲病変では一度に処理できる範囲が限られること、強い炎症反応から一時的な腫脹・疼痛や潰瘍形成を起こすことがあること、などが挙げられます。また高度に石灰化した静脈奇形では硬化剤の到達が不均一で効果が限定的な場合もあります。
- 薬物療法: 全身的な薬物療法は近年血管腫・血管奇形の治療で大きく進歩した領域です。まず血管性腫瘍に対する画期的治療としてβブロッカー内服療法(プロプラノロール)があります。プロプラノロールは本来循環器疾患の薬ですが、2008年に偶然乳児血管腫に著効することが発見されて以来、急速に標準治療として普及しました。日本でも2016年に小児用製剤(ヘマンジオルシロップ)が承認されcure-vas.jp、現在乳児血管腫の第一選択薬とされていますcure-vas.jp。作用機序は完全には解明されていませんが、血管収縮作用による急速な発赤軽減効果と、VEGFや血管新生因子の発現抑制・アポトーシス誘導による腫瘍縮小効果が示唆されていますcure-vas.jp。生後できるだけ早期(増殖期の初期)に投与を開始すると増殖を強力に抑制でき、自然経過より早期に病変を小さくできるため、将来残る瘢痕・変形を最小限にできる可能性がありますcure-vas.jpcure-vas.jp。典型的には6か月〜1年程度内服を継続し、その間に腫瘍の縮小・退色を図りますcure-vas.jp(途中中断するとリバウンドで再増大することがあるため、慎重に減量終了しますcure-vas.jp)。副作用は低血糖や低血圧、徐脈など循環器系への影響がありますが、小児循環器で長年使われてきた薬剤でもあり、適切なモニタリング下であれば安全に使用できますcure-vas.jp。近年では小さな浅在性血管腫に対し**βブロッカーの外用(チモロール)**も行われます。
他方、難治性の血管腫瘍・血管奇形に対しては分子標的薬の使用が注目されています。中でもSirolimus(シロリムス)はmTOR経路阻害薬として2010年代から多数の臨床報告が蓄積し、各種の血管奇形や血管腫瘍に有効性が示されてきましたcure-vas.jpcure-vas.jp。シロリムスは内皮細胞やその他の細胞増殖・血管新生に関わるシグナルを遮断し、病変の縮小や症状の緩和をもたらしますcure-vas.jp。効果が報告されている疾患は、KHE/TAなどカサバッハ・メリット現象を伴う血管腫瘍での腫瘍縮小・凝固障害改善、静脈奇形やリンパ管奇形、混合奇形、クリッペル・トレノネイ症候群での疼痛・出血・リンパ漏の改善および病変縮小など多岐にわたりますcure-vas.jp。日本では近年シロリムス(ラパリムス錠)の保険適用が拡大され、難治性脈管腫瘍および脈管奇形としてリンパ管腫症・ゴーハム病から静脈奇形・混合奇形・K-T-W症候群まで幅広い疾患が適応症となりましたcure-vas.jpcure-vas.jp。投与は経口で1日1回行い、定期的に血中濃度を測定しながら副作用(口内炎、脂質上昇、易感染など)に留意して継続しますcure-vas.jpcure-vas.jp。シロリムスは劇的に効く症例もあれば無効例もあり、効果予測因子は未だ不明ですcure-vas.jp。今後適応のさらなる拡大や、至適投与法の研究が進められています。
さらに血管奇形の分子機序に基づいた新たな治療薬も登場しています。特にPIK3CA変異を持つ難治性過成長症候群(PROS)に対しては、PI3Kα選択的阻害薬アルペリシブ(Alpelisib)が2022年に米国FDAで承認され、世界初の分子標的治療薬として使用可能になりましたnovartis.com。アルペリシブは元々乳がん治療薬ですが低年齢でも使える製剤が整備され、巨大なリンパ管奇形や複合奇形に伴う骨軟部過成長の抑制に有望とされていますnovartis.com。またRAS/MAPK経路変異を持つAVMに対してはMEK阻害薬(トラメチニブ等)が試験的に投与され、一部症例で高流量の改善や病変縮小が報告されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpublications.aap.org。こうしたオーダーメイド医療は現在臨床試験段階ですが、早期からの薬物介入で従来不可能だった症状コントロールが得られる可能性が示されています。
- その他の治療・ケア: 上記以外にも**圧迫療法(弾性ストッキングや着圧バンテージ)**は静脈奇形や血管拡張を伴う症例で痛み・腫脹を軽減する保存的手段ですcure-vas.jp。四肢の血管奇形では患肢の肥大・過長をきたす例があり、必要に応じ整形外科的な手術(骨延長の抑制や肥大組織の切除)も検討されます。難治性の潰瘍形成に対しては創傷ケアや抗生剤で感染制御を行い、安易に外科的切開をしないことが肝要です。
以上の治療手段は単独でなく組み合わせて用いられることが多く、例えば「AVMに対し動脈塞栓→外科的全摘」「大静脈奇形に対しシロリムス内服+硬化療法反復」など症例ごとに工夫されます。治療にあたっては血管腫・奇形の専門チーム(形成外科、皮膚科、小児科、放射線科〔IVR〕、産婦人科等の多職種)で協議し、患者さん・家族と相談のうえ最適なプランを選択することが望まれます。
美容医療分野における応用・留意点
血管腫・血管奇形は見た目に影響する病変が多く、美容的観点からのアプローチも重要です。以下、美容医療として留意すべきポイントをまとめます。
- 瘢痕形成の最小化: 美容上もっとも注意すべきは治療による瘢痕です。病変そのものを取り除けても大きな手術瘢痕が残っては本末転倒になりかねません。したがって、顔面など目立つ部位の病変ではできるだけ非侵襲的手段(レーザー治療や薬物療法)を優先し、手術が必要な場合も切開線を工夫するなど形成外科的配慮が不可欠です。例えば乳児血管腫では、従来「経過観察」が一般的でしたがcure-vas.jp、瘢痕や変形が残る恐れがある場合には早期からプロプラノロール治療を行い、腫瘍を縮小させて瘢痕の発生自体を防ぐ方針が推奨されていますcure-vas.jp。また切除術後の瘢痕に対しても、必要に応じて瘢痕修正術やレーザー照射(瘢痕成熟を促すフラクショナルレーザー等)を検討します。
- 再発・再燃への対策: 血管奇形は不完全な治療だと再発し、場合によっては治療前より肥大・悪化することがありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。特にAVMは部分塞栓や部分切除では残存部位への血流が増して再燃・増悪する傾向があり、治療戦略には将来的な再発リスクを織り込む必要があります。美容面では、一旦薄くなった毛細血管奇形が年月を経て赤みが戻ることも知られておりnejm.org、長期的な経過観察と追加治療の計画が求められます。患者・家族には「完全に一度で治しきるのは難しく、将来追加治療が必要になる可能性」を事前に説明し、長期フォロー体制を整えておくことが大切です。
- 成長・加齢による変化: 小児の血管奇形は患児の成長に伴って相対的に拡大し、思春期のホルモン変化や妊娠による増悪も報告されています。美容上、幼少期には軽度だった顔面の紅斑が成人まで放置されると色調が濃く盛り上がった結節を生じ、治療しても完全には平滑な皮膚に戻せない場合がありますcure-vas.jp。従って、将来的な美容上の不利益を避けるためにも早期からの介入が望ましいケースがあります。実際、ポートワイン母斑に対するPDL治療は乳幼児期から開始した方が効果が高く、成人後の肥厚化を予防できるとされていますcure-vas.jp。一方で、自然退縮が期待できる乳児血管腫では闇雲に介入せず経過を見る判断も重要でありcure-vas.jp、将来残りそうな病変かどうか見極める専門的判断が必要です。
- 心理社会的配慮: 先天性の血管病変による外見上の変化は、患者本人や家族に心理的ストレスを与えることがあります。特に学童期以降は容貌によるいじめやからかいの原因となることもあり、そうした観点でも適切な時期の治療介入が求められます。美容医療的には、完全に病変をなくせなくてもメイクアップによるカバーやケアメイク指導、患者同士の交流支援など、QOL向上を目的としたサポートも考慮します。医師は患者・家族の思いを丁寧に聞き、治療の利点・限界を正直に説明しつつ、できる限りの改善策を一緒に考える姿勢が大切です。
最新の治療動向・ガイドライン・承認治療
国際分類とガイドライン: 血管腫・血管奇形の分野では、近年ISSVA分類の改訂や各国での診療指針整備が進んでいます。ISSVA分類2018年版では多数の新知見が反映され、病変ごとの原因遺伝子が一覧化されましたpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。2024年には最新の2025年版分類が公開され、日本語訳も作成されていますcure-vas.jpcure-vas.jp。分類の国際統一は診断・治療アルゴリズムの共有に寄与し、日本においても専門家グループによる「難治性血管腫・血管奇形の診療ガイドライン」策定が進められています(特にシロリムスなど新規治療薬の適正使用に関する指針が重要視されています)。一例として乳児血管腫では国内ガイドラインでプロプラノロール内服が第一選択と明記されておりcure-vas.jp、重症例では早期治療が推奨されていますcure-vas.jp。
新規治療薬の台頭: 治療面では先述のようにシロリムスが世界各国で画期的治療として定着しつつあります。日本でも2017〜2022年に実施された臨床試験(SILA試験・SIVA試験)を経て、2024年1月にシロリムス(ラパリムス錠・顆粒)の適応拡大承認が正式に下りましたcure-vas.jpcure-vas.jp。これにより静脈奇形・リンパ管奇形・混合奇形・K-T-W症候群・KHE/TAなど多数の疾患で保険適用内でシロリムス治療が可能となっていますcure-vas.jpcure-vas.jp。海外ではPIK3CA変異に対する**アルペリシブ(Vijoice)**が2022年にFDA承認され(成人小児問わず2歳以上の重症PROS対象)novartis.com、欧州などでも承認申請中です。MEK阻害薬も複数の製剤(トラメチニブ、セルメチニブ等)が研究段階にあり、近年報告されたケースシリーズでは難治性AVMの血流低下や症状軽減に成功していますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これら分子標的治療薬は今後エビデンスの蓄積とともにガイドラインに組み込まれていく可能性があります。
レーザー・デバイス技術: 美容皮膚科領域ではレーザー機器の改良も進んでいます。ポートワイン母斑治療では大スポットサイズ・可変パルス幅PDLやKTPレーザーとの併用などで従来難治とされた厚みのある病変への効果向上が模索されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.govsecure.arkansasbluecross.com。また**光線力学療法(PDT)**を用いた新たな治療も登場しつつあります。中国からはヘモポルフィリンという光増感剤を用いたPDTにより、PDL抵抗性のポートワイン母斑に改善を得た報告がありますeurjmedres.biomedcentral.com。このようなレーザー・PDT併用は今後さらに研究が進めば、従来治療困難だった症例への応用が期待されます。
総括: 血管腫および血管奇形の診療はここ10〜20年で大きな進歩を遂げました。プロプラノロールやシロリムスに代表される新規治療により、患者の予後や生活の質は飛躍的に改善しています。しかし一方で、根治が難しく長期管理を要する疾患であることに変わりはなく、引き続き集学的かつ個別化医療が求められます。日本においても専門診療ネットワークの整備や患者支援団体の活動が進んでおり、最新の知見に基づく的確な診療と、患者への包括的なサポートが重要ですcure-vas.jpcure-vas.jp。本稿が、美容医療を含めた血管腫・血管異常診療の理解と実践に役立つ知見を提供できれば幸いです。
参考文献: 国際血管奇形学会(ISSVA)分類2024/2025、日本難治性血管腫・血管奇形情報サイトcure-vas.jpcure-vas.jp、Int J Mol Sci総説pmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov、他(各所に出典表示)。
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