第3種再生医療機関の認定取得手順と育成カリキュラム策定資料
第3種再生医療等の定義と対象行為
再生医療等安全性確保法では、再生医療等をリスクに応じて第1種・第2種・第3種に分類していますpmda.go.jp。第3種再生医療等とは、リスクが比較的低い再生医療等技術を用いる医療行為を指し、第1種(例:他家由来細胞や遺伝子導入細胞を用いる高リスク技術)および第2種(例:自己の幹細胞を培養して用いる中程度リスク技術)に該当しないもの全てが含まれますmhlw.go.jp。具体的な対象例として、第3種には自己の体細胞を用いる治療(例:がん免疫療法で患者自身のリンパ球を用いる治療や、自家血液から調製するPRP療法等)が該当しますmed.or.jp。第3種はリスクに応じた分類上もっとも低リスクですが、有効性の評価基準ではなく安全性リスクに基づく分類である点に注意が必要ですsaiseiiryo.jpmed.or.jp。
再生医療等提供計画の作成と届出手順
再生医療等提供計画とは、提供しようとする再生医療等の内容や方法、安全管理体制等をまとめた計画書です。第3種を含むいずれの区分の再生医療等でも、実施前にこの提供計画を作成し、所定の手続きを経て厚生労働省へ事前に届け出なければなりませんkouseikyoku.mhlw.go.jp。提供計画は法律で定める**「再生医療等提供基準」を満たす必要がありkouseikyoku.mhlw.go.jp、記載内容には治療名称(用いる細胞加工物の種類と目的を含む)や対象疾患、実施方法、想定されるリスクとその管理策、実施体制などを網羅します。計画書の様式は厚労省所定の様式第1の2(治療用)でありkouseikyoku.mhlw.go.jp、厚労省は記載要領(ガイドライン)を提示しているため作成時は必ず参照しますkouseikyoku.mhlw.go.jpkouseikyoku.mhlw.go.jp。計画には、後述の審査委員会から交付される意見書および提供基準チェックリスト**の写しを添付することが義務付けられていますkouseikyoku.mhlw.go.jp。提出前にこれらが揃っていない場合、届け出は受理されません。
提供計画の作成後、まず認定再生医療等委員会で審査を受け意見書を取得します(詳細は後述)。その上で提供計画をオンラインシステム「e-再生医療」を通じて地方厚生局経由で厚生労働大臣宛に提出しますkouseikyoku.mhlw.go.jpkouseikyoku.mhlw.go.jp。オンライン提出後、システム上のステータスが「受理」と表示されることを確認し、初めて当該再生医療の提供を開始できますkouseikyoku.mhlw.go.jp。第3種の場合、厚労省からの個別の承認通知等はなく、届出が受理されれば提供可能となります(第1種では一定の実施制限期間を設け厚生科学審議会で安全性確認を行うなど追加プロセスがありますが、第3種は事前届出制ですpmda.go.jp)。なお、提供計画提出後に計画内容を変更する場合も変更届が必要であり、内容によっては再度委員会の意見聴取を経て事前に届け出なければなりません(軽微な変更を除く)kouseikyoku.mhlw.go.jpkouseikyoku.mhlw.go.jp。
特定認定再生医療等委員会と認定委員会の審査
提供計画を提出する前提として、厚生労働省に認定された再生医療等委員会による審査・意見書の取得が必須ですrmda.or.jp。再生医療等委員会には2種類あり、リスク区分に応じて使い分けます。特定認定再生医療等委員会は高度な審査能力と第三者性を備えた委員会で、第1種および第2種再生医療等の提供計画について意見審査を行うことができますpmda.go.jppmda.go.jp。一方、認定再生医療等委員会(一般の認定委員会)は主に第3種再生医療等の提供計画のみを審査可能な委員会ですpmda.go.jp。第3種の提供計画の場合、認定再生医療等委員会の意見書を添付することが法律上求められておりpmda.go.jp、特定認定委員会でなくとも審査可能です(もちろん特定認定委員会に第3種の審査を依頼することも可能です)。自施設に認定委員会を設置していない医療機関は、大学病院や学会、民間団体が設置する外部の認定委員会に審査を依頼します。実際、2020年代では特定認定委員会が全国で数十機関、認定委員会(第3種専用)が100機関以上設置されておりmed.or.jp、クリニック単独では委員会を持たず外部委員会を活用するケースが一般的です。審査を依頼する際は各委員会ごとの申請書類(提供計画書案や倫理資料等)を提出し、委員会開催日程に沿って審査を受けます。委員会で提供計画が「適」と判断されれば、委員会意見書(計画に問題がない旨の意見)と議事録の写し、チェックリストなどが交付されsaiseiiryo-support.jpfacebook.com、それらを計画書に添付して厚労省へ届け出ますkouseikyoku.mhlw.go.jp。
《特定認定委員会利用のポイント》: 第1種・第2種の場合は必ず特定認定委員会での審査が必要ですが、第3種の場合は上記のように通常の認定委員会で足ります。ただし、第3種であっても提供内容が高度でリスク評価に専門性を要する場合や、自前の委員会を持たず信頼性の高い審査を求める場合には、特定認定委員会に審査を依頼する選択肢もあります。特定認定委員会は特に高度な中立性が求められるため、提供機関(申請者)との利害関係者が委員に含まれないこと等が厳格に規定されていますpmda.go.jpajha.or.jp。いずれの場合も、委員会の審査・意見書取得は提供計画届出の前提条件であり、これを経ずに再生医療を実施すると法律違反となるので注意してくださいkouseikyoku.mhlw.go.jp。
提供体制・設備に関する提供基準
再生医療等を提供する医療機関は、法令で定められた**「再生医療等提供基準」**に従い、安全な提供体制と環境を整備する義務がありますkouseikyoku.mhlw.go.jp。提供基準には、人員体制、設備、細胞加工管理、緊急時対応などが含まれます。具体的には以下のような要件があります。
- 構造設備と細胞加工施設: 再生医療に用いる細胞の培養・加工を自院内で行う場合、厚労省令で定められた細胞培養加工施設の構造設備基準(いわゆるCPC基準)を満たさねばなりませんmed.or.jp。クリーンベンチや無菌室、適切な滅菌・検査体制など、安全に細胞を取り扱う設備が必要です。外部の細胞加工施設に委託する場合でも、その施設が厚労省から製造許可または届出を受けた事業者であることを確認しなければなりませんpmda.go.jp。なお、自院で特定細胞加工物等(再生医療用の細胞加工物)を製造する場合は、別途「特定細胞加工物等製造施設」の届出手続も必要になるので注意しますkouseikyoku.mhlw.go.jp。
- 緊急時の対応設備: 提供する再生医療等のリスクに応じて、急変時の救急処置体制を備えることが求められます。第1種・第2種の高リスク治療では、救急医療に必要な設備(救急蘇生装置やICUへの搬送体制など)の確保が必須とされますajha.or.jp。第3種の場合は法律上明示的な必置ではありませんが、提供基準上、適切な応急処置が可能な体制を整えることが望ましいとされています。具体的には酸素投与やアナフィラキシーショック対策の設備、提携救急病院の確保などを事前に講じます。
- 個人情報・倫理への配慮: 提供基準には、細胞提供者や患者のプライバシー保護と倫理的配慮も含まれています。患者から同意(インフォームド・コンセント)を文書で取得し、将来の長期追跡や健康被害時の連絡に備えて適切に個人情報を管理する措置を講じる必要がありますpmda.go.jp。また、提供にあたって利益相反がないよう管理すること、治療内容やリスクについて患者への十分な説明を行うことも求められています。
医師の資格要件と実施責任者の配置
第3種再生医療等を提供するクリニックの担当医師には、その提供しようとする治療分野における十分な知識・経験が求められますajha.or.jp。法令上、提供医療に携わる医師・歯科医師は当該疾患領域について科学的知見と臨床経験を有していることが期待されており、提供計画書にも担当医師の経歴や資格を記載する欄がありますajha.or.jp。さらに、高リスクな第1種・第2種では実施責任者(提供計画を統括する責任医師)の選任が義務付けられており、その責任者は該当分野の専門知識と経験を備えた医師/歯科医師でなければなりませんajha.or.jp。第3種の場合、実施責任者の配置は法律上「必須」ではありませんが推奨事項とされていますajha.or.jp。そのため第3種提供機関でも、可能であれば該当治療の専門医や経験豊富な医師を実施責任者として定め、提供の質と安全管理を統括させることが望ましいです。実施責任者を置いた場合は提供計画の該当欄にその氏名・連絡先を記載しますajha.or.jp。
なお、第3種提供機関で実施責任者を置かない場合は、医療機関の管理者(院長等)が代わりに提供全体の責任を負う形になりますhospital.or.jphosp.kurume-u.ac.jp。いずれにせよ、提供に関与する全ての医師・スタッフは定期的に教育研修を受けて最新情報を収集し、提供医療の適正化に努める義務がありますajha.or.jp。例えば厚労省は、再生医療等提供機関の管理者または実施責任者が率先してスタッフ研修機会を確保し、安全手順を周知徹底することを求めていますajha.or.jp。
記録の保存と報告義務
第3種再生医療等提供機関には、実施後のフォローアップや国への報告義務も課されています。提供記録の作成・保存について、再生医療等を実施した医師は実施日時・場所、内容、用いた細胞等に関する記録を作成しなければならず(法律第16条)mhlw.go.jp、医療機関の管理者はその記録を厚労省令で定める期間保存する義務がありますmhlw.go.jp。具体的な保存期間は再生医療の種類によって異なり、自己細胞のみを用いる比較的リスク低い治療では10年間、他人の細胞や遺伝子操作を伴う高リスク治療では30年間保存と規定されていますyuketsu.jstmct.or.jp。この保存期間は通常の診療録の法定保存期間を上回る長期に及ぶ点が特徴であり、仮に診療録上に記載している場合でも別途バックアップを取り規定年数保存する必要がありますyuketsu.jstmct.or.jp。
また、再生医療等提供機関は定期報告として、提供計画ごとに毎年度1回、その再生医療等の提供実績を厚生労働省に報告しなければなりませんkouseikyoku.mhlw.go.jp。この年次報告は、対象期間内に症例がゼロであっても提出が必要でありkouseikyoku.mhlw.go.jp、提供計画が継続している限り毎年行います。定期報告書の様式(別紙様式第4)に実施件数や安全性情報等を記載し、オンラインで提出します。厚労省は定期報告のフォーマットや記載例を公表しており、未提供の場合の書き方なども示されていますkouseikyoku.mhlw.go.jp。
さらに、提供した再生医療等に起因し得る有害事象(疾病等)の発生時報告も厳格に定められています。例えば提供後に患者が感染症や合併症を発症した場合、速やかに認定委員会および厚労省に報告しなければなりませんkouseikyoku.mhlw.go.jp。特に死亡または生命に関わる重大なケースでは、発生後7日以内に「疾病等報告書」(別紙様式第2)を厚労省に提出する必要がありますkouseikyoku.mhlw.go.jp。重篤な入院事案や障害発生等は15日以内、それ以外の比較的軽微な有害事象でも2ヶ月ごとにまとめて報告するよう義務付けられていますkouseikyoku.mhlw.go.jpkouseikyoku.mhlw.go.jp。これら報告はまず認定委員会にも行い、委員会は原因究明や継続可否について検討します。加えて、提供中に重大な不適合(計画や基準からの逸脱)が判明した場合も、発見次第委員会へ報告し指示を仰ぐ必要がありますkouseikyoku.mhlw.go.jp。
万一、提供した再生医療により患者に重大な健康被害が生じたり、安全性に問題があると判断された場合、厚生労働大臣は提供機関に対して改善命令を出したり、必要に応じて提供の一時停止等の措置を命じる権限を持っていますpmda.go.jp。提供機関は常に提供計画どおり適正に治療を実施し、異常時には速やかに対処・報告する法的責務があることを肝に銘じておく必要があります。
提出書類の様式と記載例
厚生労働省は再生医療等提供計画の届出に必要な各種提出書類の様式を定め、公式サイトで公開しています。主な様式は以下の通りです。
- 様式第1(研究用)・第1の2(治療用): 提供計画書本体の様式です。第3種で治療として実施する場合は様式第1の2を使用しますkouseikyoku.mhlw.go.jp。オンラインシステム上で入力・作成できますが、紙提出用に様式の雛形(ExcelやPDF形式)も公開されていますkouseikyoku.mhlw.go.jp。記載項目は上記のとおり治療内容・対象患者・実施方法・体制・リスク管理計画など多岐にわたります。厚労省は「再生医療等提供計画等の記載要領について」(事務連絡)を発出し、各欄に何をどの程度詳しく書くべきかガイダンスを示していますkouseikyoku.mhlw.go.jp。例えば**図2「第一種・第二種・第三種技術のリスク分類」**に基づき自らカテゴリー判断した理由を明記すること、専門用語の多い内容はできる限り平易な表現に言い換えて別添資料で補足すること、など細かな指示がありますkouseikyoku.mhlw.go.jpkouseikyoku.mhlw.go.jp。
- 様式第2(提供計画の変更届): 提供計画内容を変更する際の届出書様式です。変更内容が安全性に影響を与える場合は事前に様式第2で届出し、変更後の計画書や委員会意見書を添付しますkouseikyoku.mhlw.go.jpkouseikyoku.mhlw.go.jp。例えば提供方法の変更や担当医の交代などがこれに該当します。
- 様式第3(軽微な変更届): 安全性に影響しない軽微な変更(例:担当者の連絡先変更等)の届出に用います。変更後10日以内に提出すればよいとされていますkouseikyoku.mhlw.go.jp。
- 別紙様式第1・第2(疾病等報告書): 有害事象発生時に委員会・厚労省へ報告する書式ですkouseikyoku.mhlw.go.jp。第1号様式が委員会提出用、第2号様式が厚労省提出用になっています。
- 別紙様式第4(定期報告書): 年次の定期報告に使用する書式ですkouseikyoku.mhlw.go.jp。報告対象期間や提出期限は提供計画受理日を基準に年1回と定められておりkouseikyoku.mhlw.go.jp、提供件数がない場合も「0件」と記載して提出しますkouseikyoku.mhlw.go.jp。厚労省は定期報告書の記載例を公開しており、記載上の注意事項(報告すべき内容や書き方のポイント)を示していますkouseikyoku.mhlw.go.jp。
これら様式は厚労省の「e-再生医療」サイトや地方厚生局の案内ページから入手できますkouseikyoku.mhlw.go.jp。申請者は最新の様式と記載要領を確認し、不備なく書類を整備することが大切です。また、不明点がある場合は各地方厚生局の窓口(再生医療等担当係)に問い合わせることも可能ですkouseikyoku.mhlw.go.jp。
届出事例と申請成功例の参考
第3種再生医療等は比較的ハードルが低く、自由診療の美容・整形領域などで幅広く活用されています。実際、第3種の提供計画件数は他区分に比べ飛び抜けて多く、制度開始から数年で数千件規模に達しましたmed.or.jp。例えば2017年10月時点では、第3種再生医療等提供計画による治療実施件数は3,461件に上り(研究目的56件を除く)med.or.jp、再生医療の大半が第3種として臨床応用されていることがわかります。
具体的な届出成功例として、愛知県名古屋市のヒメクリニックは美容領域で自己血を用いたPRP療法を提供するため、第3種再生医療等提供計画を作成して審査・届出を行いました。その結果、2023年8月1日付で第3種再生医療等提供機関として厚生労働省に認定され、再生医療専門クリニックとして新たなスタートを切っていますdreamnews.jp。ヒメクリニックでは厚労省への提供計画届出番号が交付され(計画番号: PC4230007)ており、審査には日本先進医療医師会の認定再生医療等委員会(認定番号 NB○○○)を利用しましたfacebook.com。このように、実際のクリニックでも適切な手順を踏めば届出は十分可能であり、認定取得後は公式に「第○種再生医療等提供計画 届出済医療機関」として再生医療を提供できます。
出典: 厚生労働省通知・ガイドラインkouseikyoku.mhlw.go.jppmda.go.jp、PMDA解説資料pmda.go.jp、日本医師会資料med.or.jpajha.or.jp、厚労省地方局HPkouseikyoku.mhlw.go.jpkouseikyoku.mhlw.go.jp、ヒメクリニック事例dreamnews.jpなど。各リンク先に詳細な情報が掲載されていますので、適宜参照してください。
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