尋常性白斑に対する非外科的治療アプローチ
尋常性白斑(いわゆる白斑)は非外科的治療の組み合わせによって色素再生を図るのが基本であり、外科的な皮膚移植を行わずとも多彩な治療法が存在します。代表的なものに光線療法(ナローバンドUVB全身照射や308nmエキシマレーザー照射など)や生物学的製剤によらない再生医療的アプローチ(多血小板血漿=PRP療法など)、さらには局所療法(ステロイド外用やタクロリムス外用)や全身療法(ミニパルス療法など)が含まれます。本稿では特にレーザー・光線療法およびPRP療法に焦点を当て、各治療法の作用機序、適応・禁忌、プロトコル、エビデンス、安全性、効果判定と予後について、最新の知見に基づき詳細に解説します。
ナローバンドUVB(NB-UVB)光線療法
ナローバンドUVB療法は現在、尋常性白斑治療の第一選択となっている光線療法ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。311nm付近の狭帯域の紫外線Bを照射することで、皮膚免疫系の抑制と残存メラノサイトの刺激による再色素沈着を誘導しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。以下、本療法の作用機序、適応と禁忌、照射プロトコル、エビデンス、安全性について述べます。
原理・作用機序
ナローバンドUVB(波長311±2nm)は、広帯域UVBやPUVA療法に比べて不要な波長を除去することで有害反応を軽減しつつ、白斑部位のメラノサイト機能を活性化し免疫学的にも有利に働くと考えられていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。正確な機序は未解明な点もありますが、照射により皮膚浸潤T細胞のアポトーシスやサイトカイン環境の変化を介した自己免疫反応の抑制、さらに毛包中の休止メラノサイトの刺激による色素細胞の遊走・増殖が起こり、病変への色素再生を促すとされていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。またUVB照射は活性型ビタミンD合成を介してメラノサイト系幹細胞に働きかける可能性も報告されています。このようにNB-UVB療法は白斑の再色素化を強力に誘導する刺激となり、現在もっとも有力な治療手段となっていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
白斑病変内に毛嚢周囲性に褐色の色素斑が出現した例(体幹部)。ナローバンドUVBやエキシマレーザー照射により、このように毛孔周囲から「点状」の再色素沈着が生じることが多い(患者の同意を得て掲載)。
適応と禁忌
適応: ナローバンドUVBは非分節型白斑の広範囲病変に対する第一選択治療ですdermatol.or.jp。進行期の活動性白斑患者では、病勢の安定化(新たな白斑の出現抑制)の目的でも第一選択とされ、全身性コルチコステロイドのパルス療法と併用して早期に進行停止を図ることが推奨されていますdermatol.or.jp。実際、進行期非分節型白斑患者にNB-UVB照射を行うことで1~3か月で病変拡大が停止することが期待でき、ステロイド単独より有効との報告がありますdermatol.or.jp。また安定期の汎発型白斑にももちろん適応であり、顔面や体幹を中心に広い範囲に白斑がある場合は全身型のNB-UVB照射が最適です。小範囲の限局性白斑にも適用できますが、後述のターゲット型光線療法(308nmエキシマ光)も選択肢となりますdermatol.or.jp。小児については原則10歳未満への積極的照射は推奨されませんがdermatol.or.jp、実臨床では7~10歳程度でフォトセラピー装置に協力できる児には慎重に施行されることもありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov(実際、小児白斑にNB-UVBを照射し良好な再色素化が得られた報告もあります)。妊娠中・授乳中でもNB-UVB照射自体は比較的安全とされていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
禁忌・注意: 明確な絶対的禁忌はありませんが、全身性の光線過敏症(色素性乾皮症やループスなど)を有する患者、過去に紫外線による重度熱傷歴がある患者、あるいは悪性黒色腫の既往・家族歴が強い患者では慎重適応となります。また高度の白毛症(患部の毛が白く無色化している状態)では毛包メラノサイトの枯渇を示唆し照射による十分な再色素化が期待しにくい点に留意が必要ですselecthealthofsc.comselecthealthofsc.com。なお活動期白斑に照射する場合、色素脱失部以外にも健常部に照射が当たるためケブナー現象(摩擦や刺激により新たな白斑が生じる現象)を誘発しうるとの指摘もありますが、NB-UVB自体が免疫抑制効果を有するため進行抑制目的での照射はむしろ推奨されますdermatol.or.jp。
治療プロトコル
照射スケジュール: NB-UVB全身照射は通常週2~3回の頻度で施行します(週3回が最も効果的で色素出現が早く、週2回でも許容される)pmc.ncbi.nlm.nih.gov。照射間隔を空けすぎると効果が減弱するため、基本的に隔日または連日のリズムでコンスタントに照射します。治療期間は最低でも連続6か月(18~36回程度)続けて効果判定すべきであり、効果発現までに時間を要する場合もあるため通常1年程度の継続を視野に入れますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。臨床的に有意な再色素沈着が見られるまでには平均して30回前後の照射を要することが多く、6か月時点で効果不十分でも72回(約半年~1年)までは「非常に遅いレスポンダー」の可能性を考え治療継続を検討しますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。逆に48回以上照射しても全く反応がない症例では治療抵抗性と判断し、中止も考慮されますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。治療効果が頭打ちになった場合は、後述する維持照射や他療法への切り替えを検討します。
照射量設定: 初回照射量はフォトタイプに関わらず200 mJ/cm²から開始する固定プロトコルが推奨されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。患者の肌質によってはこれより高く設定することもありますが、光毒性反応を避けるため一律200 mJ/cm²開始が安全ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。2回目以降は前回照射後の皮膚反応を確認し、紅斑が生じなかった場合は10~20%ずつ増量しますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。目標とする反応は無症候性のごく軽い紅斑(24時間以内に消退する「ピンク色」の紅斑)であり、この反応が出現した場合は増量せず同じ線量を維持し、紅斑消退後に再度10~20%増量を再開しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。痛みを伴う強い紅斑や水疱が出た場合は照射休止・減量が必要ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。最大許容線量は部位によって設定され、顔面は1500 mJ/cm²、体幹・四肢は3000 mJ/cm²程度が一応の目安とされていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov(それ以上の高線量はエビデンス不足のため推奨されません)。なお照射装置のランプ交換時や1週以上の中断後は所定の減量措置をとりますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
併用療法: NB-UVB単独でも有効ですが、局所療法との併用で効果増強が期待できます。特にステロイド外用やタクロリムス外用との併用は相乗効果が高く、無作為比較試験でもNB-UVB単独より有意に高い治療成功率が示されていますdermatol.or.jpdermatol.or.jp。実際、タクロリムス軟膏とNB-UVB併用は単独照射に比べ優れた再色素化を示すとのエビデンスがありますdermatol.or.jp。こうした免疫抑制外用剤は照射後に適用するか、照射しない日の夜に使用するのが一般的です。また照射前に光増感作用のある外用剤(コールタールなど)は使用すべきでないとされていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方、全身療法との併用では、上述のように内服ミニパルス療法(週2日間のデキサメタゾン少量内服等)で病勢を抑えつつNB-UVBを照射する戦略がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。さらにエクシマレーザー併用も抵抗部位に有用であり、NB-UVB照射で反応の遅い病変に随伴して308nm局所照射を追加することで治療成績を向上させた報告もありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。その他、フラクショナルCO2レーザー前処置(微小な皮膚損傷を与えた後にNB-UVB照射)やEr:YAGレーザー併用、5-FU外用併用、ステロイド局所注射併用など様々なコンビネーションが試みられており、システマティックレビューでもこうした併用によりNB-UVB単独より色素再生効果が向上しうるとされていますdermatol.or.jp。もっとも併用による有効性エビデンスはばらつきもあり、単独療法との差が有意でなかったとの報告もあるためdermatol.or.jp、症例に応じた判断が必要です。
有効性と最新エビデンス
治療効果: NB-UVB照射に対する平均的な白斑の反応率は、おおむね50~70%の症例で有意な再色素沈着が得られると報告されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。特に顔面・頸部は反応が良好で、四肢末端(手足指先など)は不良であることが一貫した所見ですpmc.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。例えばランダム化比較試験において、NB-UVB療法12か月間で64%の患者が50%以上の色素再生を達成したとの報告があります(同試験でPUVA療法群は36%に留まり、NB-UVBが有意に優れていました)pmc.ncbi.nlm.nih.gov。メタアナリシスでもNB-UVBの方がPUVAより治療成績が良好との結論が示されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方、PUVAと同等との報告もありましたがdermatol.or.jp、近年の大規模解析ではNB-UVB群はPUVA群より≧75%再色素化達成率が約60%高いことが示され、NB-UVBの優位性が支持されていますdermatol.or.jpdermatol.or.jp。また治療継続期間も成績に影響し、12か月継続した場合の方が6か月時点より有効率が高まることが確認されていますdermatol.or.jpdermatol.or.jp。具体的には、12か月NB-UVB治療で患者の36%が75%以上の色素回復を得た一方、6か月時点では19%に留まっていたとのデータがありますdermatol.or.jpdermatol.or.jp。このことから少なくとも1年間の照射継続が最大効果のために推奨されていますdermatol.or.jp。
ガイドラインの推奨: 日本皮膚科学会ガイドライン2025では、NB-UVB照射療法は**推奨度1A(最も有用)**と評価されていますdermatol.or.jp。進行期の非分節型白斑では病勢安定化の第一選択、安定期・分節型白斑でも有効な選択肢と位置付けられていますdermatol.or.jp。欧米のVitiligo Working Groupや国際白斑タスクフォースでも、NB-UVBは白斑治療の主軸であり、可能な限り週3回の頻回照射で早期から治療する戦略が推奨されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。小児や妊婦にも比較的安全に用いられること、色調マッチングが良好であることから、小児白斑や妊娠関連白斑にも適用しうるとの記載がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
安全性・副作用・留意点
急性期副作用: NB-UVB照射の副作用は紅斑反応が代表的です。適切な増量ステップに従えば強い熱傷様反応はまれですが、過量照射時には疼痛を伴う紅斑や水疱形成が生じ得ますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。照射部位の一過性の乾燥や瘙痒も頻繁に見られるため、保湿剤の使用が奨励されますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。顔面以外への全身照射では、男性では外陰部(陰茎・精巣)を遮蔽し、女性では乳輪部に日焼け止めを塗布するなど、生殖器や色素沈着の濃い部位の保護が推奨されますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。また健常皮膚には照射を当てないに越したことはなく、特に部分照射型機器でない全身照射の場合は、露出部の健常皮膚に日焼け止めを塗るなどしてコントラスト増強(正常部の過度の日焼けによる相対的な白斑の目立ち)を防ぐ工夫も重要ですdermatol.or.jp。
長期的リスク: NB-UVB療法はPUVAに比べ発癌リスクが低いと考えられています。世界的なコンセンサスとして、ナローバンドUVBやエキシマレーザー/ライトによる白斑治療で皮膚がんの発生リスクは現時点で低いことが確認されていますdermatol.or.jp。実際、長期追跡研究でも悪性黒色腫の増加は報告されていませんdermatol.or.jp。ただし累積照射回数が200回を超える場合、日光角化症(光老化の一種)の発生率が有意に上昇したとの報告があり、200回程度が一つの節目とされていますdermatol.or.jp。したがって漫然と無制限に照射を続けることは避け、適切な時期に治療中止や他の維持療法への切り替えを検討します。ガイドラインでも累積200回以上の照射は推奨されない旨が記載されていますdermatol.or.jp。発癌リスク管理としては、フォトタイプI~III(色白)の患者には年1回程度の全身皮膚検査を推奨し、フォトタイプIV以上では現時点で悪性腫瘍報告がないことから必須ではないとされていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
その他注意事項: 長期のNB-UVB照射により皮膚の乾燥・苔癬化が起こる場合は、副作用対策としてステロイド外用やケラトリティクスで対応しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。また稀に周囲健常皮膚が過度に日焼けしてしまった場合、正常部の過色素沈着(色素斑)が問題になることがありますdermatol.or.jp。このため、治療終了後には日常の紫外線対策を患者に指導し、新たな白斑出現や既存白斑の拡大を防ぐことも大切です。なお眼への影響については、NB-UVBは眼瞼を通過しにくくpmc.ncbi.nlm.nih.gov、患者は照射中ずっと目を閉じるかゴーグルを着用すれば白内障等のリスクは極めて低いと報告されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。13か月間のNB-UVB療法で視力低下や白内障発生がみられなかったとのデータもありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。とはいえ照射中の眼球保護は厳守し、特にエキシマレーザー照射では強力なUVBビームが出るため施術者・患者ともゴーグル装着が必須です。
308nmエキシマレーザー(ターゲット型光線療法)
エキシマレーザー療法は、308nmの紫外線Bを発生させるエキシマ光源を用いて白斑病変部のみに集中的に照射するターゲット型の光線療法ですdermatol.or.jp。日本ではエキシマ「レーザー」装置だけでなく同様の波長を出すエキシマランプ(ライト)装置も広く流通しており、両者は技術的な差はあれど治療効果は同等とされていますdermatol.or.jp。ここでは総称して「エキシマレーザー療法」と述べますが、実質的には308nmエキシマ光線療法全般を指します。ナローバンドUVBと本質的な作用機序は共通しますが、患部のみに高出力を照射できる点で特徴があります。以下、その特徴と適応、プロトコル、エビデンス、安全性を説明します。
原理・特徴
エキシマレーザー(XeClエキシマレーザー)は308nmの単一波長UVBをハンドヘルド型の照射口から照射します。正常皮膚への曝露を最小限にしながら患部に高エネルギー密度を与えられるため、局所療法として効率的ですdermnetnz.org。具体的な利点として:(1) 正常皮膚を照射せず副作用リスクを低減できる、(2) 病変形状に合わせたテンプレートで照射範囲を限定できる、(3) 患部により高用量のUVBを累積線量を抑えて投与できる、(4) 必要なセッション数が全身照射より少なくて済む場合がある、(5) 耳介や外陰部など全身装置では照射しにくい部位にも適用可能、(6) 機器がコンパクトで小児にも恐怖感を与えにくい、といった点が報告されていますdermnetnz.orgdermnetnz.org。以上により、エキシマレーザー療法は**「限局した白斑」**に対する効果的な選択肢となっています。
作用機序はナローバンドUVBと同様、局所の自己免疫反応抑制とメラノサイト刺激による再色素化誘導です。ただしエキシマの場合は患部に対して非常に強い照射強度を与えられるため、周囲の毛穴から速やかな点状色素斑が出現しやすい傾向があります。実際、顔面の白斑ではエキシマ単独治療で10回前後の照射から色素出現が始まり、20~30回で大半が著明な改善を示したとの報告がありますdermnetnz.org。一方で慢性的な病変(特に手足末端など毛包の少ない部位)はエキシマでも反応が鈍く、最終的な効果は照射頻度より総セッション数に依存するとも言われていますdermatol.or.jp(照射回数を重ねることが重要)。以上から、エキシマレーザーは限局した新しい白斑に対して素早い色素再生を促すのに適し、難治の慢性病変には総力戦で回数を要する治療といえます。
適応と禁忌
適応: エキシマレーザー/ライト療法は白斑病変範囲が全身の5%以下程度の限局型白斑に特に適していますdermatol.or.jp。日本のガイドラインでは「ステロイドやタクロリムス外用に反応しない限局性病変」に対して推奨度1Aでエキシマ照射が推奨されていますdermatol.or.jp。つまり局所療法で効果不十分な小範囲白斑が典型的適応です。また小児の限局白斑にも比較的行いやすく、全身型NB-UVBを用いるには至らない症例でエキシマ単独治療する選択もありますdermnetnz.org。顔面・頸部・手背など日光露光部の限局白斑では、正常皮膚を日焼けさせず患部のみ治療できる利点からエキシマを用いる意義が大きいです。一方、広範囲の汎発型白斑では一点ずつ照射するエキシマでは非現実的なため、NB-UVB全身照射が基本となりますdermatol.or.jp。したがってエキシマ療法は「限られた部位に生じた白斑」「比較的新しい病変」「他の部位は安定している症例」で主に検討されます。
禁忌・注意: エキシマレーザーも紫外線療法の一種であり、禁忌はNB-UVBとほぼ共通です。すなわち光線過敏症疾患のある患者、重度の光損傷既往、悪性黒色腫の既往などでは使用を避けます。また白斑が活動性で全身に多発している患者にはエキシマだけでは追いつかないため不適当です。広範囲汎発型でエキシマを点々と当てるのは現実的でなく、そうした場合はNB-UVB併用か、まずNB-UVBで全体を安定化させた後に残存病変へエキシマ追加といった計画を立てますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。なお照射スポットが比較的小さいことから、患者が動いて照射位置がずれると正常皮膚への過照射や病変の照射モレが起こりえます。施術時は患者の協力が重要で、小児では保護者の介助や声かけを行い静止できるよう注意します。また口唇や眼瞼周囲など粘膜近くの部位は、特殊な遮蔽をしつつ慎重に行います(必要に応じてコンタクトガードやアイシールドを貼付します)。
治療プロトコル
照射方法: 患部に対しエキシマレーザー(またはエキシマランプ)の照射口を数cm離してセットし、必要に応じて照射範囲テンプレートで正常皮膚をマスキングします。1ショットの照射径は装置にもよりますが数cm角程度で、病変をカバーするまでスポット照射を複数回行います。基本的に週に1~3回の頻度で通院照射しdermnetnz.org、ある程度の回数を集中的に照射するのが効果的です(エビデンス上は週2回と3回で最終効果は変わらないものの、開始が早いのは3回との指摘ありdermatol.or.jp)。一部の報告では週1回でも効果はあるとされますがdermnetnz.org、一般には週2~3回が標準です。
照射量設定: 明確な国際標準プロトコルは確立していませんdermnetnz.orgが、多くの文献で初回100 mJ/cm²から開始し、毎回10~20%ずつ増量する方法が用いられていますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。一部では最小紅斑量(MED)測定を行いその0.5~1MEDから始める方法もありますがpmc.ncbi.nlm.nih.gov、現実には経験則で100mJスタートが安全かつ有効とされていますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。増量幅は患者の反応を見て調整し、軽度紅斑が出たら前回と同じ線量か少し減らし、消退後に再開します。エキシマは局所高照度のため、一度に照射できる最大線量も例えば500~1000 mJ/cm²程度とNB-UVBより低めに設定されることがあります。最大出力は機種により異なりますが、概ね1ショットあたり2000 mJ/cm²程度が上限ですjkms.org。患部の厚み(肘膝など角化部位)によっても反応が違うため、例えば肘膝では保湿剤を塗って角質を柔軟化してから照射すると浸透が高まります。なおエキシマ照射は局所的に強い紅斑を起こしやすく、水疱化~びらんも起こりえますdermnetnz.org。許容範囲を超えるとケブナー現象で周囲に新しい白斑ができるリスクもあるためdermnetnz.org、初期は慎重に少量から入り安全域を見極めます。
治療期間: 全身療法より短期間で効果が現れやすいとされ、6~8回の照射で初期反応が出現することがありますdermnetnz.org。完全な色素再生には病変の大きさによりますが20~30回程度の照射を要することが多いですdermnetnz.org。平均すると7~8週間程度で目標の改善度に達するケースが多いとの報告もありますdermnetnz.org。特に顔面の白斑は反応良く、ある試験では顔面病変の60%がエキシマ単独30~40回の照射で75%以上の色素再生(Grade3-4)に至りましたpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。一方、手足の病変では同条件で25%未満の軽度改善(Grade1-2)に留まった例が多く、部位差が顕著ですpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。治療終了後の経過は患者によりさまざまで、長期間再発なく色素維持できる例もあれば、数ヶ月で再度脱色素が進行する例もありますdermnetnz.org。白斑の原因疾患が持続する以上、再発の可能性は常にあり、特に活動性の強いケースでは再発しやすいです。そのため治療後も定期フォローし、必要に応じて追加照射や他の維持療法を行います。
併用療法: エキシマレーザーも単独でも効果がありますが、局所ステロイドやタクロリムス軟膏との併用が一般的に行われますdermnetnz.org。照射日に外用すると光線を遮断する可能性があるため、併用外用は非照射日に1~2回塗布するか、または照射数時間後に行います。またPRP療法との併用については後述しますが、エキシマ単独より有効との報告が近年複数あり、注目されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。さらにトラネキサム酸の内服やポリポディウム(シダ植物)抽出物などの抗酸化補助療法を組み合わせることもありますが、明確なエビデンスは限定的です。
有効性と最新エビデンス
有効性: 308nmエキシマ光線療法の有効率は、部位依存性が大きいものの概ね半数以上の患者で50%以上の改善が得られると報告されていますmdpi.compubmed.ncbi.nlm.nih.gov。特に顔面の限局白斑では非常に高い効果が期待でき、10回未満で肉眼的に色素スポットが出現し始める例も多いですdermnetnz.org。一方、末端の慢性病変では長期照射が必要で、例えば手足では60回照射しても半数以上改善した症例が少なかったとの報告がありますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。したがって「顔は3ヶ月(20~30回)で著効、手足は6ヶ月以上(>50回)かけても部分改善に留まりやすい」といった傾向といえます。エキシマ照射とNB-UVB全身照射の治療効果の比較については、多施設研究やメタ解析で最終的な有効率に大差はないとする結果が得られていますselecthealthofsc.comselecthealthofsc.com。実際、308nmエキシマランプ vs エキシマレーザー vs NB-UVBの6研究メタ解析では、3者に有意差なくいずれも有効であり、副作用も軽微で同程度だったとされていますselecthealthofsc.com。ただし照射初期の反応出現はエキシマの方が速い傾向があり、局所的に強力なため治療セッション総数はNB-UVBより少なく済む場合もありますdermnetnz.orgdermnetnz.org。一方で照射スポットの関係上、体表面積が広い場合はエキシマでは非現実的となるため、病変範囲によって両者は使い分けます。
併用療法のエビデンス: エキシマ光線療法は局所免疫抑制剤との併用で成績向上します。例えばタクロリムス軟膏+308nmエキシマのRCTでは、エキシマ単独より優れた色素再生率を示しましたxtracclear.com。またエキシマ+PRP療法の有効性が近年注目されており、メタ分析ではPRP併用群で≧75%の再色素化達成例が有意に増加したとの結果が出ていますpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov(詳しくはPRP療法の節で後述)。さらにNB-UVB全身照射との組合せも研究されており、特にNB-UVBで効果が頭打ちになった部位にエキシマを追加照射することで約67%の患者で再反応が得られた報告がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。このようにエキシマ療法は他治療との相乗効果を発揮しうるツールでもあります。
ガイドラインの推奨: 日本のガイドライン2025ではCQ6で「エキシマレーザー/ライト療法は有効か?」に対し推奨度1Aで「局所外用療法(ステロイド・タクロリムス)に反応しない限局白斑(範囲5%以下)にターゲット型光線療法を推奨する」と明記されていますdermatol.or.jp。解説でも308nmエキシマ光線療法が限局例に有用であること、海外でも広く使用されていることが述べられています。国際的にも、エキシマレーザーは**「限局した白斑にはまず試みる価値のある治療」**と位置付けられ、米国皮膚科学会AADも治療選択肢に挙げていますselecthealthofsc.com。ただし全身NB-UVBとの比較エビデンスが不足している点や、費用対効果の問題も指摘され、患者ごとの話し合い(shared decision-making)が推奨されていますselecthealthofsc.com。
安全性・副作用・留意点
局所反応: エキシマレーザー照射部位には紅斑が生じます。治療の目標は肉眼的に赤みが出る程度(軽度の紅斑)の線量であり、これを超えると水疱やびらんが起こりえますdermnetnz.org。適切に線量調整すれば多くの場合良好に耐容されますが、疼痛を伴う強紅斑や水疱形成は過量のサインであり、以降の線量を減じるか休薬期間を設けます。エキシマ特有の副作用に治療部位の疼痛があります。照射中はわずかな温熱感程度ですが、処置後数時間して日焼けのような痛みを感じることがあります。また一過性の色素沈着過剰(治療部位が一時的に周囲より濃く色づく)も認められることがありますdermnetnz.org。これは炎症後色素沈着の一種で、時間経過で薄れていきます。逆に治療反応としてまだらな過色素斑(色調不均一な黒ずみ)が生じることもありますが、これも徐々に正常化するか、残った場合は化粧品的ケアで対処します。
長期リスク: エキシマレーザー療法自体は歴史が浅く、長期的な発癌リスクは完全には判明していません。しかし全身NB-UVBに比べ全身被爆量が少ないことから、理論上はリスクは低いと考えられますdermnetnz.org。実際、308nmエキシマ光線を局所に照射した場合の長期安全性データでは、皮膚癌や光老化の顕著な増加は今のところ報告されていません。ただし、全身への紫外線曝露はないものの局所では高線量を累積するため、治療回数が増えるにつれ照射部位の皮膚老化(シワ・色素斑など)は起こりえます。したがって累積線量管理の概念はNB-UVB同様に重要で、例えば同一部位へのエキシマ照射は100回程度までを目安にし、それ以上必要な場合は一旦休止して皮膚状態を評価するなどの工夫が考えられます。
その他の注意: 照射時のHSV再活性化に留意が必要です。まれにエキシマ照射後に単純ヘルペスが誘発される例があり、HSV既往のある顔面白斑患者にはプロテクションとしてアシクロビル内服予防も検討しますdermnetnz.org。また前述のように眼の保護は厳重に行い、術者・患者ともUVゴーグルを装着します。エキシマ照射面からの散乱光はNB-UVB全身機より少ないですが、至近距離で見ると眩しさや結膜への刺激がありうるため、目を閉じてもらう配慮もします。機器のメンテナンス上は、照射出力が安定しない古いランプでは過照射の危険があるため定期校正が必要です。またテンプレートで覆いきれない正常皮膚に照射が当たるとそこだけ日焼けしてしまうため、術後は周囲正常皮膚に美白剤やサンスクリーンを塗布しておくなど、術後ケアも症例に応じ行います。
多血小板血漿(PRP)療法
多血小板血漿(platelet-rich plasma; PRP)療法は、自身の血液から濃縮した血小板血漿を抽出し、白斑病変部に注射して色素再生を促す治療法ですdermatol.or.jpdermatol.or.jp。血小板から放出される成長因子やサイトカインの作用により、メラノサイトの増殖分化や局所の炎症制御を期待する再生医療的アプローチです。近年、尋常性白斑に対する新規治療として研究が増えており、外科的メラノサイト移植や従来療法で効果不十分な症例への補助療法として注目されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。以下、PRP療法の原理、手技、エビデンス、有効性、安全性について詳述します。
原理・作用
PRPは患者自身の血液を処理して得られる高濃度血小板血漿です。通常の血漿に比べ3~7倍以上の血小板が含まれ、血小板内のα顆粒から放出される各種成長因子(PDGF, TGF-β, VEGF, EGF, FGF, IGF-1 など)を高豊度に含みますdermatol.or.jppmc.ncbi.nlm.nih.gov。さらに血小板は抗炎症性サイトカイン(IL-1受容体拮抗, 可溶性TNF受容体, IL-10 など)も放出し、炎症環境を調整しますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。白斑病変部にこれらPRPを注入すると、局所でメラノサイトの生存・増殖を促進しつつ自己免疫性炎症を抑えることで、色素再生につながると考えられますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。具体的には、成長因子群がメラノサイト前駆細胞の遊走と分化を刺激し、また抗炎症因子がT細胞などの攻撃からメラノサイトを保護する効果が期待されます。加えて、注射針による微小な真皮損傷自体が創傷治癒過程を誘導し、周囲からのメラノサイト移動・メラニン産生を促す効果もあります。要するにPRP療法は**「成長因子リッチな自己血清」を患部に送り込み、休眠中の色素細胞を呼び覚ましつつ免疫を穏和にする**治療戦略と位置付けられます。
手技・プロトコル
PRP調製: 患者から約10~50 mL程度の静脈血を採取し、抗凝固剤(クエン酸Naなど)を加えた試験管に収集しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これを専用の遠心分離機で二段階の遠心処理(ダブルスピン法)にかけ、血漿中の血小板を濃縮します。具体例として、まず低速遠心(例: 1500rpmで5–10分)で赤血球と上澄み血漿に分離し、次に上澄みの血漿部分を回収して別チューブに移し高速遠心(例: 3000–4000rpmで5–10分)しますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これにより血小板が沈殿しますので上澄みPPP(platelet-poor plasma)を捨て、底部の濃縮血小板部分を再懸濁してPRPとします。必要に応じてCaCl₂等の凝固促進剤を加えて血小板を活性化させ、即座に使用しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。近年はキット化された簡便なPRP調製セットも市販されており、一回のシングルスピンで所定濃度のPRPが得られるシステムもあります。ただし文献間でPRPの定義や作成手順が異なるため(白血球含有の有無やフィブリン含量などの違い)、手技は施設ごとに統一する必要がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
注入法: 調製直後のPRPを細径注射針(30G前後)付きシリンジに吸引し、白斑病変の皮下/真皮浅層に多点にわたり少量ずつ注射しますdermatol.or.jp。通常は病変ごとに1~数mLのPRPを用い、病変全体に行き渡るよう間隔をあけて浅く真皮内に注入します。疼痛軽減のため事前に局所麻酔クリームを塗布したり、冷却しながら打針することもあります。注射部位は軽度の膨疹状膨らみができる程度で、治療直後から軽い発赤や点状の出血斑がみられます。出血は数分で止まりますが、**内出血(青あざ)**が翌日以降出ることもありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。注入後は軽く圧迫止血し、絆創膏などは不要です。なお注射直後から数日は若干の腫れ・発赤がありますが自然軽快します。
施行頻度: PRP注射は単回でも効果が出るとの報告もありますが、多くの場合2~4週ごとに複数回繰り返し施行します。例えば代表的なプロトコルとして、2週おきに計8回(4か月間)のPRP局所注射を行った報告がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。別のRCTでは3週おきに4回注射する方法が採用されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。概ね3~6か月の間に複数回注射して、その後経過観察し効果判定する流れです。PRP単独療法の場合、その期間中に他の治療(NB-UVB等)を避けてPRP効果を評価することが多いですが、実臨床ではNB-UVBやエキシマレーザーと並行してPRP注射を併用することもあります。この場合、照射の直後にPRPを注射すると光線療法との相乗効果がある可能性が示唆されています(照射による炎症環境に成長因子を加えることでメラノサイト遊走が盛んになるとの考え)。標準化されたスケジュールは確立されていませんが、併用の場合は照射日と同日にPRP注射する、もしくは照射翌日にPRPなどのプロトコルが試みられています。
有効性とエビデンス
単独療法の効果: PRP単独の効果に関する報告は限られますが、安定期の局所白斑で有効例があるとされていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。症例報告レベルでは、PRP皮内注射後に数週間で色素斑が出現し始めた例や、小規模試験で患者自身の満足度スコアが改善した例などが報告されています。しかし、対照群を設けた比較試験は少なく、PRP単独療法の確立した有効率を述べるにはデータ不足です。実施された報告では全例安定した白斑が対象であり、進行期白斑にPRP単独で効果があるかは未検証ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。現在までに発表された6件の臨床研究(症例総数253例)をレビューした論文によれば、いずれの試験でもPRP施行群が対照群より有意に高い改善率を示したとされていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。副作用も軽度で深刻な有害事象は報告されていませんpmc.ncbi.nlm.nih.gov。以上より、限定的ながら「PRPは安定期白斑に有望な新規治療である」との結論が提示されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。ただし症例数・観察期間とも十分ではなく、確立治療とするには今後の大規模試験の結果を要します。
光線療法との併用効果: PRPは単独より他治療との併用で効果が顕著になる傾向があります。特に308nmエキシマレーザーとの併用については、近年RCTやメタ解析の報告が相次いでいます。2022年のメタアナリシス(6研究・計302例)では、エキシマレーザーにPRPを追加した群はレーザー単独群に比べ、治療効果総合成功率が有意に向上し、無効例の割合が減少しましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。具体的には、≧75%再色素化を達成した患者割合が併用群で有意に高く、≧50%、≧25%達成例も同様の傾向でしたpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。一方、副作用発生率は単独群と差がなく、再発率も低かったと報告されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。このように「PRP+エキシマはエキシマ単独に勝る」とのエビデンスが蓄積しつつありますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。実際の臨床試験でも、PRP併用群で色素沈着グレードが平均で優れ、患者満足度も高かったとの結果が示されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。例えばあるRCTでは、手足の安定期白斑に対しエキシマ32回+PRP4回併用群がエキシマ単独群より有意に高い優良再色素化率を示しましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。またNB-UVBとの併用でも、片側比較試験でNB-UVB+PRP群はNB-UVB単独群より明らかに再色素化が良好との結果が報告されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。以上より、PRPは光線療法を増強する補助療法として有望視されています。
外科治療との併用: PRPはメラノサイト移植術など外科的治療にも応用が模索されています。たとえば吸引水疱法による表皮移植後にPRPを患部に添加すると、従来法より色素定着が良いとの報告がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方で培養表皮メラノサイト移植にPRPを加えても効果不変だったとする報告もありdermatol.or.jp、外科治療+PRPの有用性は現時点で結論が出ていません。日本のガイドライン2025でも、「外科療法へのPRP併用は有効性に変化がなかったとの報告もあり、さらなる検証が必要」とされていますdermatol.or.jp。
ガイドラインでの位置づけ: 先進的治療であるPRP療法は、国内外のガイドラインではまだ標準治療として組み込まれていません。日本ガイドライン2025では、コラム的に「多血小板血漿を用いた治療が尋常性白斑に対し検討されている」と紹介されるに留まりdermatol.or.jp、推奨度の言及はありません(エビデンス不十分のため推奨に至っていない状況です)。一方、海外では白斑研究のレビュー論文等でPRPの予備的な有効性が言及され、「今後の治療体系に組み込まれる可能性がある」と期待されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。現時点では試験的治療の域を出ませんが、今後エビデンスが整えばガイドラインにも組み込まれていく可能性があります。
安全性・副作用
局所反応: PRP注射の主な副作用は注射部位の疼痛と小出血ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。注射時に細い針であっても刺入痛があり、研究では約半数の患者が「注射時の痛み」を報告していますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。ただし耐えられない激痛ではなく、表面麻酔やクーリングで十分緩和可能です。また針刺に伴う**皮下出血(あざ)**が15%程度の患者に生じたとの報告がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これも数日~1週間で自然消退します。注射後は一時的に膨疹様の腫れや発赤がありますが、数時間~1日で落ち着き、日常生活に大きな支障はありませんpmc.ncbi.nlm.nih.gov。感染症のリスクは、自家血液を用いるため理論上極めて低く、無菌操作を徹底すれば問題になることはまずありません。実際、報告されたケースで注射部位の感染や膿瘍形成といった有害事象は起きていませんpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
全身的影響: 自家血使用のためアレルギー反応はなく、また全身に有意な成分が回ることもないため理論上の全身副作用はありません。採血量も数十mL程度であり貧血等の心配は不要です。ただし血液疾患(血小板減少症など)や抗凝固療法中の患者ではPRP調製が困難またはリスクを伴うため避けます。また妊娠中の安全性データは乏しいものの、自家成分であることから大きな問題はないと考えられます(実際、他分野で妊娠中にPRPを行った報告もあります)。もっとも妊婦には侵襲的処置を控えるのが基本原則のため、選択肢とはなりにくいでしょう。
長期予後: PRP注射により異常な組織増殖(瘢痕や腫瘍化)が起きる懸念は現在のところありません。むしろ創傷治癒を促進する側面があるため、注射痕も速やかに治癒します。まれに指摘されるのは、活動性白斑患者に注射すると針刺激でケブナー現象を誘発し新たな白斑ができる可能性です。しかし実施報告ではそうした副作用は記載されていません。安定期病変に限定していることもあるでしょうが、活動期に実施する場合はステロイド併用などで進行抑制しつつ行うことが望ましいでしょう。
治療効果の評価と予後管理
効果評価法: 尋常性白斑の治療効果判定には客観的スコアリングが用いられます。代表的な指標がVASI(Vitiligo Area Scoring Index)で、体表を各部位に分け、それぞれの白斑面積率と色素再生度を掛け合わせてスコア化する方法ですdermatol.or.jp。またVAS(視覚的アナログ尺度)による患者満足度評価や、医師判定によるRepigmentation Rate(色素再生率%)の推定も広く用いられますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。欧州ではVETFスコア(Vitiligo European Task Force assessment)も標準的ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。研究報告では「≧75%の再色素沈着」を治療成功(excellent)とし、「50-75%(good)、25-50%(moderate)、<25%(mild)」のように4段階評価することが多いですpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。臨床では治療前後の比較写真を定期的に撮影し、専門医が総合的に判断しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。白斑面積が広い場合、一部に良い反応が出ても全体スコアでは埋もれるため、部位ごとの変化も考慮します。加えて患者報告アウトカム(QoLの改善など)も重要で、治療による心理面・生活面の向上も効果の一部と捉えますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
予後因子: 白斑治療の反応性には様々な予後因子が影響します。最も顕著なのは部位差で、繰り返し述べた通り顔面・頸部は反応良好、四肢末端(指先・爪周囲・足先)は難治ですpmc.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。この差は毛包の密度やメラノサイト残存の有無によります。特に白毛(患部の無色毛)があるとメラノサイトが欠如していることを示唆し、顔でも眉毛が白くなった部位などは反応が悪くなります。一方黒い毛が残存する病変は毛包メラノサイトの存在を意味し、良好な色素再生が期待できますselecthealthofsc.comselecthealthofsc.com。次に病変の陳旧性(罹患期間)が影響し、新しい白斑ほど治療に反応しやすいですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。長年脱色素のままの皮疹は周囲からのメラノサイト供給源が枯渇している可能性があります。また年齢も要因となり、一般に若年者の方が治療反応が良い傾向がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これは新陳代謝や毛包幹細胞の活性が高いことによります。さらに活動性か安定性かも重要です。活動性の場合まず進行停止させる必要があり、安定化できれば治療反応も上がります。場合によってはミニパルス療法等で活動性を抑えてから光線療法を開始しますdermatol.or.jpdermatol.or.jp。
期待される経過: 患者に説明すべきは「治療には時間がかかる」ことです。ナローバンドUVBでも最低3か月、多くは6か月~1年の継続が要りますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。エキシマレーザーは一部で早い反応が見られるとはいえ、完全な色素再生には数十回の照射が必要ですdermnetnz.org。PRPも数回の注射では劇的改善に至らず、併用療法込みで3~6か月様子を見る必要がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。従って短期で効果が乏しくとも粘り強く治療を継続し、少なくとも半年程度は経過を追うよう指導します。ただし効果判定の節目も重要で、例えばNB-UVBなら48回で明らかな改善がなければ中止検討、エキシマも30回ほどで目安を評価、といった区切りを設けますpmc.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。効果が得られた場合、その患者に適した治療間隔で続けますし、効果不十分なら別治療への切替えを考えます。
維持療法と再発: 白斑は寛解と再燃を繰り返すこともあるため、治療で色素再生しても放置すると再脱色する懸念があります。これに対し維持療法の有用性が検討されています。例えば白斑が十分改善した後、月1回程度のNB-UVBまたはエキシマ照射を1年間継続した群は、何もしなかった群に比べ再発率が低下したとの報告がありますselecthealthofsc.comselecthealthofsc.com。実際、12か月間月1回照射した群では再発率30.1%で、無照射の対照群40.5%より有意に低かったとされていますselecthealthofsc.comselecthealthofsc.com。このことから、色素再着後も定期的な照射で色素維持を図れる可能性があります。しかし長期照射によるリスクとの兼ね合いもあり、ガイドラインでは維持療法は最大1~2年程度に留め、それ以上はお勧めしないとされていますselecthealthofsc.com。実際、エキシマやNB-UVBを200回以上も漫然と続けるよりは、一旦終了して経過観察し、再燃時にまた集中治療する方が合理的です。患者へのフォロー体制としては、再発したら早めに受診し治療再開するよう指導し、特にフォトタイプI-IIIの患者は年1回の皮膚チェックも兼ねて受診を促しますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。また再発予防には、日焼け防止(UV対策)やストレス管理、合併症の治療(例:甲状腺機能異常があれば是正)など全身的なケアも重要です。
以上、尋常性白斑の非外科的治療法について、レーザー・光線療法およびPRP療法を中心に解説しました。NB-UVB全身照射は現在の標準治療であり、その確立されたプロトコルと高い有効性から第一選択となります。308nmエキシマレーザーは限局型白斑に有用なターゲット療法で、正常部への影響を減らし早期の色素出現を促せます。PRP療法はエビデンスが蓄積しつつある新たな補助療法で、光線療法との組み合わせにより難治例での改善が期待されています。それぞれに利点と限界があり、患者毎の病変型・活動性に応じて治療戦略を組み立てることが重要ですselecthealthofsc.comdermatol.or.jp。安全性に留意しつつ適切なプロトコルで施行すれば、これら非侵襲的治療でも十分な色素再生が可能であり、外科的移植によらない白斑治療の大きな柱となっています。
参考文献: 本稿で引用したエビデンスは国際誌の最新原著論文・メタアナリシスpubmed.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov、各国の診療ガイドラインdermatol.or.jpdermatol.or.jp、総説pmc.ncbi.nlm.nih.govなどに基づいています。各番号付き引用は該当文献からのエビデンスを示しています。これらの知見は今後さらにアップデートされる可能性がありますが、2025年現在における最新のコンセンサスと研究結果を反映しています。治療選択にあたっては患者の希望や生活背景も踏まえ、個別化医療の視点で最適な非外科的治療プランを立てることが重要と言えるでしょう。
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